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トップ>HAKUMON Chuo【2016年春号】>「チーム防災」救援の先へ ボランティアセンター4人、日野市社協から表彰

Hakumonちゅうおう一覧

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チーム防災のメンバー。防災イベントのチラシを持って、左から佐藤さん、中村さん、小山さん、西沢さん

「チーム防災」救援の先へ

ボランティアセンター4人、日野市社協から表彰

 中央大学ボランティアセンターの学生4人による「チーム防災」が3月12日、日ごろの防災啓発活動を評価されて日野市社会福祉協議会(社会福祉法人)から表彰された。2月6日にはチームリーダーの佐藤広基さん(法4)がNHKのラジオ番組に出演した。

 中大近くの地域から表彰され、マスコミで注目されるチーム防災。1月17日の阪神・淡路大震災、3月11日の東日本大震災。震災・防災・減災が見つめ直されるなか、がぜん、脚光を浴びた。

出演1分前に震度4

 天災は突然の出来事だ。出演予定のNHKラジオ番組『マイあさラジオ』(毎朝午前5~8時)が、まさにそうだった。

 佐藤さんが登場する1分前に関東南部で震度4の地震があり、番組は急きょ、地震情報に切り替わった。中大生による活動報告(7分間)は翌日に回された。「いつ何が起きるか分かりません。改めてそう思いました」

 彼と仲間の中村亮士さん(商4)は、災害救援ボランティア推進委員会(民間団体)による「災害救援ボランティア講座」で、講師から災害時の対処法を学んだ。

 がれきの撤去、救援活動、被災者とのコミュニケーションなどが主だったところ。ボランティアが直面することは十指に余る。

 講座では初めて知ることばかりだったという。災害時の対処の重要性を重く受けとめ、今度は多くの人に広めようとした。

「される側」が「する側」に

HUGカードに避難者の状況をしるす

 格好のゲームがあった。災害時の避難場所となる体育館を想定したもので、救援者・ボランティアは館内でどう動いたらいいか。

 館内床面図にカードを置きながら考える「避難所運営ゲーム」(HUG)を学内で実施した。

 カードには避難してきた人の健康状態や住まい、家族構成などが書かれている。課題の「イベントカード」が登場すると、トイレや喫煙場所の設置について決めるよう指示される。HUGは参加者が、避難所の運営者になったと想定し、避難者の配置や発生するイベントの対応を参加者間で決めていくゲームである。

 高齢者には寒風が入りにくい奥のほうで休んでもらうか。障害者は、障害があるのが視力なのか、聴力なのか。カードから読み取れる情報を慎重に見極め、避難所での最良を対処する。

 トイレ一つとっても思案のしどころだ。4基配備されたとする。男女用に各2基と決めてしまいそうだが、佐藤さんは言う。「男性はわりと早く用をすませます。女性用は長い列ができることが多いと聞いています」。メンバーが話し合い、男性1基、女性3基とした。現実に即した対応と評価された。

 ゲームに参加した小山景子さん(総政4)、西沢栞さん(総政4)が新たにメンバー入りして、チーム防災が結成された。女子2人も前述の災害ボランティア講座を受講していた。

 4人は大学周辺地域の自治会や小中高校などへ出掛け、主催者の補助をする一方、自らが学んだ知識や情報を伝え、災害時の対処法などを実践している。

 その過程で理想とするのは、救援される側が、次は救援する側へ。救助のノウハウを身につけた人が一人でも増えていくのが願い。一人ひとりが避難行動を知っていれば生存率は高まる。

地元で「もどかしさ」

NHKラジオ番組に出演(収録)した佐藤さん。ニュースキャスターの雰囲気だ

 佐藤さんは福島県伊達郡桑折町の出身。内陸に位置し、高校2年で体験した東日本大震災時、巨大津波や東京電力福島第1原発事故による被害は少ないほうだった。

 それでも高校の体育館が避難所となり、通学途中に毎日会う被災者に思いを寄せた。「帰りたくても帰れない、つらいだろうな」

 成人の日。式典に出席した後、町の広報紙からインタビューを受けた。質問は、被災地の今後をどう考えていますか。「現状を正しく知ることだと思います」と答えたが、果たしてこれで良かったのか、もどかしさが残った。

 大学に戻り、津波被害が甚大だった宮城県女川町を訪ねる「ボラセン主催の被災地スタディーツアー」を知った。すぐに参加して女川町で被災したナマの話を聞いた。

 こうしてボランティア活動が徐々に大きなウエートを占めるようになっていき、防災士の資格を取得した。

 阪神・淡路大震災の教訓から誕生した制度で、特定非営利活動法人・日本防災士機構が運営する。有資格者は全国で10万人を超えるという(2016年1月現在)。なかでも2014年、2015年と2年連続、1万人単位で資格取得者が増えている。防災意識の高まりといえるだろう。

 卒業後は公務員、行政マンとして、被災地の復興に寄与したいと考えている。原発事故に伴う避難指示が昨年9月に解除された福島県楢葉町などでは、町民の帰還が進むとはいえ、「今後、町として成り立つのでしょうか」と不安や焦りのようなものが心をよぎる。震災後5年、いまでも約17万4000人超が避難生活を余儀なくされている。

 防災教育コンサルタントの宮崎賢哉さんのキーワードを胸に刻んだ。

「忘災を防災に」

 有事の備えをけっして忘れることのないように。天災はあす、いや、今夜やってくるかもしれない。

「チーム防災」のメンバー
小山景子(総政4)
「地域の防災という身近な活動内容に興味を持ち、チーム防災に参加しました。地域の方々と防災について意見を交わすなかで、新たな発見や学びが多くありました。防災に対する住民一人ひとりの意識を向上させていくことが重要であると改めて感じています」
西沢栞(総政4)
「学内HUGに参加した際、楽しみながら防災への興味や理解を深めることができ、その体験を広めてみたいと考えてチーム防災の一員となりました。活動のなかで地域の方々と接する機会が多くあり、私自身も地域防災について改めて学ぶことが多いと感じています」
中村亮士(商4)
「災害時を想定しながら事前に備えることの重要性を学びました。年齢や体調が異なる人々が集まる避難所を運営することの大変さや、車のジャッキを使って人を助ける方法を、活動を通して初めて知りました。ここで学んだことを、非常時には生かしたいと思います」
[もっと知りたい]

防災士
 日本防災士機構によると、災害からの被害を最小限にとどめる、地域防災力の担い手が防災士。災害時の避難所の運営、被災地支援ボランティア活動などにも取り組む。地域と自治体と連携した防災意識の啓発活動に、防災士の活躍が期待されている。

チュー王子が答える
 中大ボランティアセンターは2015年10月にA4判の広報紙「CVCだより」を創刊した。夏休みの活動報告(夏ボラ)やボランティア現場からの詳細な報告を掲載。
 ことし1月発行の2号(春休み号)では、チーム防災が紹介された。活動に関する疑問・質問にはボランティア応援マスコットキャラクターのチュー王子が答えている。