世界32カ国・地域が参加したアマチュアサッカー5人制の世界一を決める「F5WC THE WORL
D FOOTBALL FIVES 2016」は3月5日、タイのバンコクで決勝が行われ、全選手7人のうち中央大学の学生が5人を占める日本は、コロンビアに1―3で敗れたものの、世界第2位に躍進し、サッカー5人制の存在を大いにアピールした。
(協力:「F5WC JAPAN」運営事務局)
決勝の相手、コロンビアは南米の強豪で予選からここまで全勝だ。激しいプレスをかけてくる。
「サッカー人生で一番」
字羽井レイス選手のはつらつプレー
前半終了間際、日本は守備のミスから1失点。後半2分には相手ファウルから数的有利になったものの焦りからなのか、同4分に2点目を奪われた。
0-3とまた引き離されたあとの9分に待望の1点が入った。字羽井=あざうい=レイス選手(経4)が放った左足からのシュートが決まった。その後も再三チャンスは作ったが、相手に阻まれた。
試合後、うれしい知らせがあった。大会を通じてレッドカードがなかった唯一のチームとして「フェアプレー賞」を受賞した。
「サッカー人生一番の経験ができました。ただでさえ世界で戦う機会が少ないのに、まさか準優勝できるとは思ってもみませんでした。優勝できなかったことは悔しいですが、試合を重ねていくにつれて、サッカーがもっと好きになりました」。キャプテン・村本武大選手(32)のコメントはチーム全員の思いだろう。
フェアプレー賞受賞
集中力を高める李選手
彼ら7人は、国内予選「アットホーム FOOTBALL FIVES」で全国から参加した240チームの頂点に立ち、日本代表の座を射止めた。中大生主体のチームは「TamaChan」(たまちゃん)といい、多摩地区ではよく知られた存在だ。
高校サッカーの強豪、前橋育英高から中大入りした李正洙選手(経4)はサッカー部で副将としてプレーした。大学卒業とともにサッカーも卒業するはずだった。
5人制サッカーをやってみないか、と後に「F5WC」日本チーム主将となる村本氏から声を掛けられた。同氏はフットサル歴が長く、東京都フットサル2部リーグの現役選手。
李選手は「5人でプレーできる」ことに惹(ひ)かれた。4月以降は毎日忙しい社会人になる。サッカー本来の選手11人全員が集まるのはなかなか難しい。5人ならプレーできる可能性が広がる。ビジネス社会で生きるために必要な健康管理・増進にもなる。
李選手のようなサッカー好きには、たまらない環境がそこにあった。
国内予選32チームから勝ち上がり、世界一を決める「F5WC」へコマを進めた。「全国大会の出場経験がありますが、世界は初めて」と李選手。「サッカーのピリオドを打つつもりだったのに、世界へつながるフィールドがあるなんて」
競技は、同じ選手数・同じフィールドサイズのフットサルと混同されがちだが、5人制の競技場は一回り大きい。試合球にも違いがあり、サッカーボール(ローバウンドタイプ)を使う。
字羽井レイス選手は「サッカーボールを使用するから、サッカーのテクニックがそのまま使える」と満足顔だ。彼もフットサル2部リーグの選手である。
ほかにも魅力がいっぱいのよう。「グラウンドが小さい分、攻守の切り替えが大事になります。短い時間で楽しめます」と石川拓磨選手(法4)。本格派のGK。筋骨隆々だ。旭川実高時代に出場した全国高校選手権で優秀選手に選ばれた。
アマ代表の誇り胸に
表彰式でトロフィーを贈られる日本チーム
鳥波将斗選手(経4)は鹿島ユース時代に期待の背番号10を付けた。5人制の魅力を「フットサルほど戦術がなくても戦えます」と新たな競技者を呼び込む。
林広之選手(商4)も「誰でも気軽に始められて、人のつながりが広がる」と社会性をアピールした。今大会で3得点。チーム最多5得点の字羽井アハマド選手に続いた。
「サッカーを現役でプレーする人も、昔は本気でプレーしていた人でも夢を追いかける人を応援しています」とはF5WC JAPAN運営事務局・株式会社サニーサイドアップの清水裕太郎氏(中大卒)。
ビジョンには「“侍ブルー”だけではなく、アマチュアの『日本代表』の誇りを背負って、世界と戦う事ができるのも魅力」とある。
夢はますます広がっていく。
▼決勝
コロンビア |
3 |
1-0 |
1 |
日本 【得点者】字羽井レイス=中大 |
2-1 |
▼決勝トーナメント
1回戦 |
2-1南アフリカ【字羽井アハマド、李正洙=中大】 |
準々決勝 |
3-0イングランド【字羽井レイス=中大、字羽井アハマド、鳥波将斗=中大】 |
準決勝 |
0-0アイルランド |
P K |
(4-3)×李、○字羽井アハマド、○鳥波、○林、○字羽井レイス |
▼予選リーグ・グループE(日本、米国、インド、トルコ)
2勝1分け(2位進出) |
日本1-1米国、日本3-2トルコ、日本5-0インド |
日本チーム(中大勢5人は◎印)
背 |
選 手 名 |
所 属 |
◎ |
1 |
石川拓磨 |
法 4 |
|
2 |
村本武大 |
主 将 |
|
3 |
字羽井アハマド |
桐蔭横浜大 |
◎ |
4 |
字羽井レイス |
経 4 |
◎ |
5 |
李正洙 |
経 4 |
◎ |
6 |
林広之 |
商 4 |
◎ |
7 |
鳥波将斗 |
経 4 |
※背は背番号
<もっと知りたい へぇ~>
試合時間は10分ハーフ
出場資格は16歳以上の男子。現役プロ選手は出場できない。メンバー登録は最大7人。
試合時間は10分ハーフ。出場選手はピッチ4人、キーパー1人の5人制。試合中の選手交代は主審の許可なく、いつでも何度でも可能。オフサイドルールは適用しない。
世界大会は2013年スタート
5人制サッカー「F5WC」は2013年にドバイで第1回大会が行われた。参加は32カ国。日本は2015年4月開催の第2回大会に初出場。代表チーム「柴田工務店」は参加44カ国のなか予選リーグでデンマーク、サウジアラビア、ルクセンブルクと戦い1勝2敗に終わった。
各国で急増するチーム数
参加国のそれぞれ国内チーム数は第1回大会で英国約1500、米国約800、ベルギー約500、デンマークとシンガポール各約300、中国約270。第2回大会では米国が約7000と増大、英国も約2000と増えた。サッカーの広がりを示している。
スコールズ氏ら視察に
欧米強豪クラブのスカウトが熱視線を送り、これまでマンチェスターシティー、チェルシーFCや米国MLSがここに人材を求めた。
今大会では元イングランド代表のポール・スコ-ルズ氏や元スペイン代表のミチェル・サルガド氏らが試合を視察。エキシビションマッチに参加して盛り上げた。
酒場? 烏天狗?
日本国内のチーム名がユニークだ。今回、中大勢が国内予選で戦ったフットサルの強豪チームは「ルイーダの酒場」(準決勝)、「烏天狗」(決勝)だった。