正月恒例の東京箱根間往復大学駅伝競走予選会は10月17日、東京・立川市で行われ、8位で予選を通過した中央大学は2016年箱根駅伝へ歴代最多となる87大会連続90回目の出場を決めた。
予選通過を聞いた町澤選手はうれしさのあまり座り込んだ
午前9時35分、気温15度。会場には霧雨が降っている。スタート地点の陸上自衛隊立川駐屯地に参加49校の精鋭ランナーが並んだ。10位までに入れば、箱根駅伝に出場できる。選手たちはどの顔も引き締まっている。
中大は徳永照(しょう)選手(経4)がチームをぐいぐい引っ張った。「一走入魂」としるした鉢巻き姿の町澤大雅選手(法3)が追う。前回2015年の箱根駅伝1区で快走し、1区の中大記録を塗り替えた。いまや全国区のランナーである。
立川市街地を走り、国営昭和記念公園をゴールとする20キロのコース。
大学名が入った「のぼり」がびっしりコース沿道を占めている。約3万人のファンがそれぞれの選手に力の限りの声援を送るなか、徳永選手は疾走する他大学の外国人留学生に食らいつき、日本人トップの4位でゴールイン。日本人最上位は9月の全日本インカレ1万メートルに並ぶ好記録だ。
町澤選手は15位で続いた。胸に伝統の「」マークを付けたチームメイトは、最後の力を振り絞り、応援の声に元気づけられ、必死の形相でゴール。フィニッシュライン周辺は肩で息をする選手が多かった。大学のため、チームのため、応援してくれた人たちのため、全力で走り切った。
10時間11分32秒
箱根駅伝予選会突破10校
順 位 |
大学名 |
総合タイム |
|
1 |
日 大 |
10・6・0 |
4年連続86回目 |
2 |
帝京大 |
10・7・20 |
9年連続17回目 |
3 |
日体大 |
10・7・37 |
68年連続68回目 |
4 |
順 大 |
10・7・58 |
5年連続57回目 |
5 |
神奈川大 |
10・8・1 |
6年連続47回目 |
6 |
拓 大 |
10・8・36 |
3年連続37回目 |
7 |
法 大 |
10・11・3 |
2年ぶり76回目 |
8 |
中 大 |
10・11・32 |
87大会連続90回目 |
9 |
東京国際大 |
10・11・41 |
初出場 |
10 |
上武大 |
10・12・4 |
8年連続8回目 |
※総合タイムは時間・分・秒
公園内で開かれた成績発表会。1位・日大から7位・法大までがアナウンスされた。中大選手は横一列に並んで掲示板を見つめている。両手の指を折り重ね、祈るようなポーズの選手もいる。
「8位 中央大学」と読み上げられると大歓声が上がった。町澤選手がひざから崩れるように座り込んだ。両手を高く挙げ、顔をくしゃくしゃにして喜んでいる。
10時間11分32秒のタイムには期待と不安がまじっていた。鉢巻きランナーの姿が、チームの心根のように思われた。中大ファン、関係者からも「あ~、よかった」「ほっとしたよ」との声が漏れた。
シード権を失い、予選会に回って3年連続突破。今回も不安視する前評判をはねのけて、箱根の出場権をつかんだ。
関係者らが集まった報告会では、選手が一人ひとり紹介された。徳永選手はレース後も半袖だ。町澤選手は長袖をたくし上げている。
中大出場選手12人
選手名 |
出身校 |
徳永 照(経4) |
倉敷高(岡山) |
渥美 良明(経3) |
島田高(静岡) |
相馬 一生(文3) |
村上桜ヶ丘高(新潟) |
新垣 魁都(理工3) |
那覇高(沖縄) |
市田 拓海(法3) |
九州国際大附高(福岡) |
鈴木 修平(法3) |
花巻北高(岩手) |
松原 啓介(文4) |
八千代松陰高(千葉) |
谷 星輝(理工3) |
国学院久我山高(東京) |
堀尾 謙介(経1) |
須磨学園高(兵庫) |
竹内 大地(法2) |
中京大中京高(愛知) |
町澤 大雅(法3) |
市立柏高(千葉) |
小谷 政宏(経4) |
日本文理大附高(大分) |
サポート |
村越 吉倫(商3) |
白河高(福島) |
予選会個人成績上位15人
順位 |
選手名(大学) |
分・秒 |
1 |
キトニー(日大) |
58・20 |
2 |
デレセ(拓大) |
59・10 |
3 |
スタンレイ(東京国際大) |
59・14 |
4 |
徳永(中大) |
59・17 |
5 |
金森(拓大) |
59・21 |
6 |
山口(創価大) |
59・26 |
7 |
戸田(東農大) |
59・34 |
8 |
塩尻(順大) |
59・38 |
9 |
鈴木(神奈川大) |
59・44 |
10 |
小松(日体大) |
59・44 |
11 |
荻野(日大) |
59・51 |
12 |
足羽(法大) |
59・52 |
13 |
東(上武大) |
59・53 |
14 |
奥野(日体大) |
59・54 |
15 |
町澤(中大) |
59・55 |
3回も「しっかり」
あいさつする副将の小谷選手
浦田監督
副将の小谷政宏選手(経4)が選手を代表して、関係者に感謝の言葉を述べた。「皆さん、朝早くから熱い応援をありがとうございました。目標としていた結果には届きませんでしたが、8位で本戦に進むことができました」「本戦ではどん欲にシード権を狙って、久々にシード権を取りたい。これから一つひとつの練習をしっかりこなし、本戦にしっかり合わせて、しっかり戦えるチームにして、もう一回臨み直したいと思います」
燃えたぎった心で「しっかり」という言葉を3回、口にした。彼自身は過去2回、5区の山上りを経験している。難所のコースでは順位が大きく入れ替わる。心に期すものがあるのだろう、マイクを持つ手に力が入っていた。
徳永選手は夏の合宿後、右足腓骨(ひこつ)を痛めた。練習を再開できたのは10月に入ってから。「こんなに走れるとは思いませんでした」とびっくりしたように振り返った。負傷欠場の主将・藤井寛之選手(経4)も戦列に戻ってくる。
浦田春生監督は「盛大なる応援をしていただき、ありがとうございます。他大学の強豪と競える選手も出てきています。箱根駅伝で上位進出できるよう、これから2カ月間、頑張っていきます」と話した。
あすから、いや、この夜から箱根駅伝に向けた練習が始まる。町澤選手が目を見開いて、チーム目標を代弁した。「総合5位です」。シード権奪取、名門復活へ期待が高まってきた。
中大の箱根駅伝年度別成績 (最近10年間)
年 |
総合 |
往路 |
復路 |
2006 |
8 |
3 |
14 |
2007 |
8 |
14 |
5 |
2008 |
7 |
10 |
8 |
2009 |
10 |
11 |
6 |
2010 |
4 |
4 |
4 |
2011 |
6 |
8 |
6 |
2012 |
8 |
12 |
6 |
2013 |
記録なし |
2014 |
15 |
17 |
11 |
2015 |
19 |
10 |
19 |
第92回箱根駅伝シード校
順位 |
大学名 |
出場回数 |
1 |
青学大 |
8年連続21回目 |
2 |
駒 大 |
50年連続50回目 |
3 |
東洋大 |
14年連続74回目 |
4 |
明 大 |
8年連続58回目 |
5 |
早 大 |
40年連続85回目 |
6 |
東海大 |
3年連続43回目 |
7 |
城西大 |
13年連続13回目 |
8 |
中央学院大 |
14年連続17回目 |
9 |
山梨学院大 |
30年連続30回目 |
10 |
大東大 |
4年連続47回目 |
※順位は91回大会の成績
活躍続ける中大OB
予選会9位に入り、創部5年目にして初の出場権を得た東京国際大。総監督の横溝三郎氏(76)は1964年東京五輪陸上3000メートル障害代表、伝説の中大6連覇のメンバーだ。監督の大志田秀次氏(53)は86年アジア大会(ソウル)陸上1500㍍優勝。中大コーチ時代の96年に母校を32年ぶりの総合優勝に導いた一人。東京国際大の大学本部は埼玉県川越市。駅伝部の拠点は坂戸市。
もっと知りたい へぇ~
■上位10人で競う
すべての選手が一斉にスタート。各校14人の登録選手のなかから12人までが出場し、上位10人の合計タイムで競う。上位10校が本戦の出場権を獲得する。