トップ>HAKUMON Chuo【2015年夏号】>【ニュース&中大ニュース】被災地支援学生団体 活動写真展 中央大学ボランティアセンター
避難経路の手すりが大きく曲がっている
中央大学ボランティアセンター
コーディネーター 松本真理子
東日本大震災から4年の月日が経ちました。東北沿岸部の被災地について、テレビや新聞のメディアで報じられることも少なくなりました。 しかし被災地は、依然として「復興」という言葉からは程遠く、風化させることなく支援を継続していくことが重要です。
中央大学には、2011年より東北沿岸部で学生が主体的にボランティア活動を続ける「被災地支援学生団体」が5つあり、少しでも復興の力となれるように様々なアプローチで活動に励んでいます。主に長期休暇中に現地で活動しており、岩手や宮城でそれぞれ活動をしてきました。
学生たちが見た被災地の今と日頃の活動の様子を知ってもらい、被災地について考えてもらうために、写真展を開催しました。活動場所や主な対象者は異なっていても、5つの団体の展示を眺めてみて分かることは、まだまだ現地には震災の爪痕が残っていて、人々は安心して暮らすことができておらず、そのような困難な環境の中で現地の方は、中央大学の学生たちが来ることを楽しみにしてくれているということでした。
2015年度も夏、冬、春と活動を行います。ぜひ一人でも多くの中央大学生たちに被災地の現状とそこから学べることについて「自分ごと」として考えてもらえたらと思います。
はまぎくのつぼみ代表 法学部2年 吉田沙織
私たちが活動を行っている岩手県宮古市では、東日本大震災以前にも明治、昭和と津波の被害に遭いましたが、見事に復興を遂げてきました。その中で田老地区では過去の教訓を生かして、ソフト面ハード面ともに防災を意識したまちづくりを進めてきました。
「万里の長城」とも呼ばれる高さ10m、総延長2.5㎞の大きな防潮堤は、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
「隅切り」をした交差点、視野を広げて、早くに避難できる
ハード面においては、避難しやすくするための細かな工夫がなされています。そのうちのひとつが「隅切り」です。道路の交差点において見通しを良くしたり、曲がり角を通りやすくしたりするために敷地の出隅(ですみ)を取り除いてあります。これによって安全に早く避難することができ、視野が広がるためにお互いに声をかけて助け合うこともできます。
また、街を碁盤の目状に整備し、どこにいても高台に向かって真っすぐ避難できるようなつくりになっています。山側には、高台へ上がるための避難経路を数多く設置し、早く避難できるようにしてあります。しかし、この避難経路の手すりが大きく曲がっているのを見てみると、いかに津波の衝撃が大きかったか、津波の高さが対抗できないものであったかが分かると思います。津波は「万里の長城」をも破壊し、乗り越えて襲ってきたのです。この手すりは、まさに東日本大震災の津波の爪跡です。このような爪跡は震災から4年経った今でもいまだに残っています。これが現状です。
メディア等で震災について報じられることも少なくなっている東京の4年間と、今もなお復興と向き合う被災地の4年間では感じる時の流れも違ってくる―。そんなことを私たちに語りかけているように感じます。
現地で学んできた吉田沙織さん
さらに田老地区では、東日本大震災の8年前である平成15年に「津波防災の町宣言」を行い、防災訓練や子どもたちによる津波防災カルタの作成等の防災教育、語り部などソフト面にも力を入れてきました。自然の脅威に対してハード面の強化は、限界があるうえに人々の油断をもたらします。実際に東日本大震災では、防潮堤があるから大丈夫だと過信してしまい、避難しなかった方もいたようです。
被災地から遠く離れた東京で、私たちにできることは何でしょうか。それは、風化をさせないことであると思います。2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定したことで、被災地からは建設関係の業者が次々といなくなり、復興の計画も進まないといいます。このような状況下で、被災地の今を知り震災を忘れないこと、防災に対しての意識を高めること、そんな身近な一歩を踏み出すことが大切なのではないかと考えます。