バレーボールの男子日本代表として次世代を担う4人『NEXT4』に中央大学の石川祐希選手(法学部2年)が選ばれた。中大を関東大学春季リーグ戦で完全優勝に導き、昨年12月には18年ぶりの全日本大学選手権優勝。大活躍のステップは同年暮れから3カ月半留学した世界の強豪プロチーム、イタリアの名門『モデナ』でのプロ経験にあった。パスタの国の生活を学生記者がインタビューした。
聞き手は西村卓真(経3)と内藤伊音(商1)。
――石川選手は愛知県出身。きしめんもおいしいでしょうが、本場のパスタのお味は
「イタリアへは初めて行きました。食事はモデナがチーム契約をしているレストランで。ほとんど毎日ここで食べていました。パスタもピザも日本とはちょっと違って、おいしかった。量がけっこう多い。ピザは一人で1枚です」
――イタリアはファッションの国でもあります
「欲しいサイズがあったのがうれしかったです。自分は体が大きいので、サイズはXXL。遠征時はチームのスウエット&ジャージー。市長への表敬訪問でもチーム・ポロシャツ&ジーンズといった感じで、ネクタイを締めて正装することはなかったです。ファッションのネタがなくてすみません」(苦笑い)
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カップ戦のコッパ・イタリア優勝、メダル獲得に貢献した
石川選手は愛知・星城高時代に前人未到となるインターハイ、国体、春高(選手権大会)の3冠を2年連続で達成した。中大入学後も全日本ジュニアを経て全日本入りし、仁川アジア大会で銀メダルなどで活躍中。
イタリアのプロチーム、世界の代表選手が集まる『モデナ』からは昨年7月に入団を打診された。アマチュア契約、学生の短期留学という条件で同年12月から、ことし3月末まで滞在。
――現地での住まいは
「チームが契約したアパートメントホテルです。1人1室。8畳間のような部屋が2つ、キッチン、バス、トイレ付き。掃除する人が週1回来てくれました。中大寮は4人で1部屋。広くないところから移りましたから、最初は広~い、ヤッタァ!それが徐々に、広すぎる、ヒマだなあと」(また苦笑い)
――そこから体育館へは
「ホテルからチームメートのペトリッチ(セルビア代表)の運転する車に同乗させてもらいました。帰りは同じホテル暮らしの選手に、どこへ行くのかを聞いて、よければ、また同乗して」
――車種は何でしたか
「シトロエン(フランス)です。街の中では日本では見られないような車が走っていました」
――一人のときの交通アクセスは
「公共の循環バスを利用していました。最初は不安でしたが、1回乗ってしまえば。時刻通りに来ないとき、同じように待っている人に聞いて、なんとかうまくやっていました。町の人には声をかけられ、けっこう歓迎してもらいました」
――衣食住環境が分かりました。いよいよバレーの話です。世界最高峰のチームの雰囲気は
「自分は身長191cmでもリベロを除けば下から3番目の低さ。最長身が2m10cm、選手の半分が2m台、残りが1m90cmの後半。チームではユウキと呼ばれていました。若い選手が多いなかでも最年少でした」
――チーム内の公用語は
「イタリア語です。ブラジル、フランス、セルビア、ドイツ、ベルギーから代表選手が来ていて、みんなイタリア語で話します。ぼくに教えてくれるときは英語になります」
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ときには自炊も、この日はパンケーキを焼く
モデナはセリアAで優勝10回超の名門チーム。石川選手が在籍したときのカップ戦『コッパ・イタリア』では11度目の優勝。メンバーにはブラジル代表のセッター、ブルーノ。前述のセルビア代表2人のレフト、ペトリッチとコバチェビッチ。レフトにはフランス代表、ひげを生やしたヌガペットも。リベロにはイタリア代表のロッシーニら“世界の顔“がずらりと並ぶ。若手育成にも定評がある。モデナは自動車F1で知られるフェラーリの町。
――イタリア語学習は
「帰国前には、聞くことはほとんど分かるようになりました。当初はあまり話せずに、自分がセッターに望むプレーも言えません。バレーボールはコミュニケーションが大事です。息が合うか合わないかは成績に影響します。アンジェロ監督は僕に常にコニュニケーションを取ってくれました。練習が終わるとお父さんのようになります。信頼感がありました。中大でも同じようにしてもらっていて、ありがたいです」
――目の当たりにしたプロのバレーは
「日本では味わえない高さとパワー。外国人選手は力強く、体も大きいので、迫力が全然違いました」
――ファンの応援は
「試合会場はコートが1面でNBA(米プロバスケットボール協会)やテニスのウインブルドンのセンターコートのよう。観客席が背中にある感じ。アウェーですと罵声を浴びることがあります。それがよく聞こえます。選手はミスをすると自分に怒って、スラングを口にする。プレー同様、こちらも激しいです。外国人選手のマイナス面も見ました。うまくいかずにいら立つときがあります。いつも強いわけではない。そういう状況をつくれば、自分たちにも勝ち目があります」
――彼らとは世界の舞台でいつかは対戦するわけでしょうから、その観察眼は近い将来きっといきますよね。今後の目標は
「中央大学の一員として春・秋のリーグ戦優勝を目指します。全日本に選抜されましたので、ワールドカップで力を尽くす。そのあと、また留学の話があれば行きたい。向こうでもスタメンを張れるような力をつけなくては。何があるか分からないので、いつも気は張っています」
――プロ選手として、イタリアでプレーする気持ちはありませんか
「大学は僕にとって大切なところです。中大に入ったからモデナの話がきました。思ってもみなかった話、うれしかったです。プロ契約でしたら行っていないですね。力はそんなにないので、バレーの勉強のために行きました。学生を優先する今回の形がベスト。学生のうち、話があればどこへでも行きたいです」
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9月8日にはリオ五輪出場権を懸けたワールドカップが東京などで開催される(23日まで)。石川選手の羽ばたく姿が見られる。
(写真撮影&提供=菊池加奈子/中央大学バレ―ボール部トレーナー)