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トップ>HAKUMON Chuo【2015年早春号】>【表紙の人】第8回野島記念Business Award おもてなしビジネスに栄冠

Hakumonちゅうおう一覧

【表紙の人】

表紙の人
左:Wakana Maki
右:Reina Yoshikawa

第8回野島記念Business Award おもてなしビジネスに栄冠

優勝チーム「Wild Birds」メンバー 真木若菜さん/吉川怜那さん
メンバー4人にインタビュー 赤澤直樹さん、井口雄太さん 聞き手・高瀬杏菜

法学部3年生4人「Wild Birds」

中央大学の学生が独自のビジネスプランを競う野島記念Business Award(別稿参照)第8回大会決勝は昨年12月14日、多摩キャンパスCスクエアで2次予選までを勝ち抜いた6チームが参加して行われた。「接客英語のできる人材をアルバイトとして紹介するサービス」を展開した法学部3年生4人のチーム「Wild Birds」が優勝し、参加40チームの頂点に立った。

表彰式で、左から赤澤さん、井口さん、野島社長、真木さん、吉川さん

 冬本番の寒気を吹き飛ばす熱いプレゼンテーションだった。決勝進出6チームは10分間のプレゼン、15分間の質疑応答で覇権を競った。優勝賞金は30万円だ。

 客席最前列に並んだ決勝審査員5人の質問が厳しい。起業ビジネスの最前線で働く強者ばかりだ。

 栄冠を手にしたのは2020年東京五輪・パラリンピックを視野に入れた「おもてなしビジネス」。接客英語ができる人材(アルバイト)を飲食店に紹介する。「訪日外国人に日本語が分からなくとも日本食を楽しんでいただく」という内容だ。

 法学部3年の男子2人、女子2人によるチーム。事業名は仕事&英語の「Joblish」。英語力を高めるため研修システムも考える一方、外国人観光客の多い東京・浅草で実態調査を行った。当面のこと、近い将来のこと。考え合わせたプレゼンは自信に満ちていた。

 先陣を切った吉川怜那さんが述懐する。「こんにちはとあいさつしたとき、会場中の視線が私に注がれて震えました。『私たちが考えたことを聞いてください』という思いを込めました」。次々に入れ替わる発言者のコメントはこぞって元気がよくて分かりやすい。練習の成果が十分に出たようだ。名だたる審査員からの質問を想定したスペシャル・パワーポイントも用意。全てをソツなくこなした。

 「120%の出来でした」(赤澤直樹さん)と達成感があふれた。

 審査員から「ビジネスモデルとして完成度が高かった。人手不足に悩む企業にはいいサービスになると思う。調査もしっかりしていた」とお褒めの言葉を頂戴した。4人に笑顔が広がった。

 優勝のプレゼンターは、デジタル家電製品販売大手のノジマ(本社横浜市)・野島廣司社長。賞金の30万円、優勝トロフィー、優勝盾を次々に授与した。中大OBで「野島記念」の出資者である。

 優勝チーム代表の井口雄太さんは「学生には本当にありがたい大会です。関係者の皆さまに感謝します。自分たちも成長できました」と感謝の気持ちを込めてあいさつした。野島社長は「自己育成力をもっともっと高めてほしい」と激励した。

レベル高い6チーム

 審査員講評では、参加した中大6チームのレベルの高さが評価された。「優勝を逃したチームも素晴らしかった。あきらめないで、さらに磨くよう取り組んでほしい。優勝チームがビジネスモデルとして成功するとは限らない」。ほかにも「着眼点がいい」「社会人によるプレゼンより上手」「若さが伝わってきた」と称賛の声が相次いだ。

優勝チーム プレゼン要旨

報告/井口雄太(法3)

「Joblish」~接客英語のできる人材をアルバイトとして紹介するサービス~

【背景】

 訪日外国人観光客は年々増え、2014年は1341万3600人で前年より29.4%増えた。今後も増加し、年間3,000万人超と見込まれている。訪日外国人の不満としてまずあがるのが「英語が通じないこと」である。一方、日本に期待することの一つは食事であるが、多くの飲食店は訪日外国人に対して接客の自信を持てないでいるのが現状だ。

【概要】

 Joblishの特徴は、基本的な接客英語のできる人材を雇える点だ。この人材がアルバイトとして働く期間は英語研修費として月額5000円を支払う仕組みである。手順としては、飲食店にはwebサイトより求人情報を出す。応募を待ち、面接をして採用となる(従来の求人サイトの手順と同じイメージ)。

 接客英語のできる人材を教育していくにあたり、独自の教育メソッドを利用する。たった20フレーズの接客英語と動作を覚えるだけで基本的な接客は十分に対応できてしまうというものだ。それを学び、テストで合格した者のみ、バイト先を選ぶことができる。飲食店で働いている間も、月3回のweb英会話や、月1回の相談会を無料で受けることができる。

 このように、インプットとアウトプットのサイクルによって、接客英語が身につく。東京・浅草で事業をスタートし、徐々に観光地へ展開していく。また、飲食店以外の接客業にも広げていくことによって収益化を図っていく。

労苦と使命の中にのみ人生、価値(たから)は生まれる

「先輩に教えていただいた言葉です。プランを考えることや日々作業することを辛いと感じたこともありましたし何度かチームを辞めようと思ったこともありましたが、この言葉とチームの仲間がいたから頑張れました。逃げずにやり遂げたことで、その価値(たから)を創造できたのかな、と思っています」(赤澤直樹)

優勝チーム インタビュー 考え方変わった 就活に影響大

「Wild Birds」の4人に優勝の喜び、優勝までの苦労話などを聞いた。聞き手は学生記者・高瀬杏菜(法学部2年)。

赤澤直樹さん

真木若菜さん

――優勝チームが発表されたとき、会場中に聞こえる大きな声で「よっしゃ!」と言ったのはどなたですか

赤澤直樹さん 「僕です(照れ笑い)。最後の瞬間はいまでも覚えています。発表1秒前に心臓が大きく鼓動してドックンドックンと。優勝と聞いて、『よっしゃ!』と叫んだわけです。感情をあまり出さないタイプだと思っていた僕がイチバン大きな声を上げた。みんなだって泣きだしたよね。真木は座ったままだった」

真木若菜さん 「放心状態だったの。最初はアイデアが浮かばなくて困りました。3歩進んで2歩下がる、4歩下がったときもあります。ある日、メンバーがいつもお水を持っていることから、お水でビジネス展開できないかと、商品化されている『中大ミネラルウオーター』から調べ始めて感触をつかんだと思ったら、先輩に『これどうやって売るの』って言われた。ビジネスは利益を出さなきゃいけないのよね。またゼロから始めることに…、つらかったな」

――テーマが決まったあとはどのようにしていましたか

吉川怜那さん 「毎日午前10時から夜7時ごろまでみんなで集まって。法学部事務室の近くのロビー、経済学部ロビー、Cスクエア、新宿のファストフード店へもよく行きました。試行錯誤するなかで、徐々に適材適所というか…メンバーで役割分担ができてからは順調に進みました」

吉川怜那さん

井口雄太さん

井口雄太さん 「意見をぶつけ合ったね。失敗しても『これでまた大きくなれるね』と、いいように受けとめた」

――野島記念の前と優勝後では、ものの考え方が変わりましたか

赤澤さん 「目標を持って生活することの大切さを知りました。全身全霊を傾けていたもの」

真木さん 「苦手と思っていたことでもチャレンジしてみると必ず得られるものがあると分かりました。この間のすべての経験が自分のプラスになりました」

吉川さん 「就職に対する考え方が変わりました。野島記念に取り組んで自分の興味や関心が増したことに気づきました」

井口さん 「環境が変わりました。審査員の方々ともお付き合いさせていただき、ビジネスや起業を考えるようになりました。もっともっとビジネス知識を身につけたい。大会を通して出会いの素晴らしさを実感しています」

――賞金30万円の使い道は

4人 「お世話になった方々を招いて食事会を開きました、焼き肉ですよ。別の方にはご家族向けのプレゼントをしました。私たちの力だけではできませんでしたから」

大会前、外国人観光客の多い浅草へ調査に出かけた4人。左から、吉川さん、赤澤さん、真木さん、井口さん=写真提供・真木さん

記念講演 出る杭は伸ばせ 人づくりで業績伸ばす脱マニュアルで自由な発想を

株式会社ノジマ 代表執行役社長 野島廣司

 父と母で始めた町の電器屋は、私が入社したとき、従業員は2人でした。借金も抱えていました。それがいまでは携帯事業で国内3位の会社になっています。家電は5位。

 会社の宝は人と信用。人づくりには力を入れてきました。人はカネを生み、信用をもたらします。マニュアルに頼るとものを考えなくなりますので、自分で考えるよう指導しています。マニュアルに従うアルバイトばかりしてきた学生は採用しないと決めています。目指すのは社員のポテンシャルを上げること。

 当社の場合、社長だからといって私が正しいわけではありません。自分でビジネスを考えるから、店舗によって違いが出ています。店長のプランをお客さま(マーケット)に判断していただく。これを市場評価といいます。ニーズにあった品ならば必ず売れます。

 出る杭を打つのではなくて、出る杭を伸ばす。社員の成長がノジマの成長です。10年後、携帯事業で日本一になっています。夢は創業1 0 0 年の45年後、世界一になることです。私は108歳になりますがね。

野島記念Business Award

中央大学OBで株式会社ノジマ・野島廣司社長の寄付金によって運営されている。参加対象は中大生、中大大学院生ら。
発想、分析、基本戦略、実現可能性、プレゼン力などが審査される。主催・中央大学、共催・中央大学商学部ゼミナール連合会、運営・中央大学野島記念B u s i n e s sAward 2014実行委員会。

気持ちのいい人たち

優勝メンバーを指導した(株)おかん・沢木恵太代表取締役CEO(29)=写真=の話

 「彼ら彼女らとは、審査員だった一次予選(昨年11月16日)終了後、私が声をかけてからの付き合いです。取り組む内容にビジネスの可能性があり、大いに関心を持ったからです。聞いていて次第に応援したいと思うようになりました。プレゼンには人間性が出ます。4人のメンバーは気持ちのいい人たちでした。週1回、週2回会うようになって、審査員の立場、実際にビジネス展開をする立場から、いろいろと指摘して、解決法は自分たちで考えて、というやりとりでした。決勝はプレゼンがよかった。審査員の評価も高く、なかには『下手な起業家よりよっぽどうまい』と驚いた人もいました。メンバーの力で勝ち取った優勝です。野島記念は就活の前に社会を知るいい機会です。これからも応援しています」
(2008年、中大商卒)

★「おかん」の事業内容は、同社HPによると、ぷち社食サービス「オフィスおかん」、保存できる無添加惣菜の定期仕送りサービスを展開中。

コンテスト概要

■大会日程(いずれも2014年)

 9・20
本エントリー開始
 9・28
アイデアデザイン講演会
10・10
エントリー締切
10・12
事業計画書の書き方講座
10・19
収支に関する特別講座
10・24
事業計画書提出締切
10・26
書類審査開始
11・ 3
同結果発表
11・16
一次予選
11・30
二次予選
12・ 6
露木ゼミメンタリング
12・14
決勝

■表彰者

●優勝
チーム名「Wild Birds」(法学部3年生4人)
事業名「Joblish」(高い英語能力を持つ人材を紹介するサービス)
●準優勝
チーム名「HW」(経済学部2年生1人)
事業名「ダッチマンズ・ハウス」(一人暮らし物件オークションサイトの運営)
●オーディエンス賞
チーム名「Wild Birds」=ダブル受賞
●同
チーム名「えほむ」(商学部3年生と他大学生との2人)
事業名「Oshareca~美容師さんとお客さんの距離をグッと近づける応援SNS~」(美容師さんとお客さんが一緒に目標を設定し、お客さんが目標達成度を日々記録し、その記録にレスポンスすることで距離を近づける応援SNS)

■決勝進出チーム(50音順)

▽HW(経2・1人)
▽えほむ(経3、商3・2人)
▽SIGNAL(商1・3人)
▽新撰組(経3・6人)
▽Vコネクト(商1・3人)
▽Wild Birds(法3・4人)

■決勝審査員(50音順)

佐藤光紀氏(株式会社セプテーニ・ホールディングス代表取締役社長)
澤田貴司氏(株式会社リヴァンプ代表取締役社長兼CEO)
杉本ゆかり氏(オフィスルーチェ代表、現代医療問題研究所所長)=中大ビジネススクール修了・鈴木敏文賞、優秀論文賞受賞
丸山聡氏(ベンチャーユナイテッド株式会社CVC)
宮田貞夫氏(株式会社ハンプティ代表取締役)