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トップ>HAKUMON Chuo【2015年早春号】>【卒業の日に−贈る言葉】少しだけ、立ち止まって

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卒業の日に−贈る言葉

少しだけ、立ち止まって

河合 久(かわい・ひさし)/商学部長

河合 久

 ご卒業おめでとうございます。

 東日本大震災で日本中が不安に包まれていた正にその時、皆さんは大学生としての一歩を踏み出しました。それでもこの4年間に、皆さんは中央大学商学部というステージで人生の貴重な時間を過ごしたことに相違ありません。この4年間がなぜ貴重なのでしょうか。ゼミでの専攻分野に特化して学問に励んできた場合でも、難関国家試験の準備に専心してきた場合でも、あるいはスポーツ・文化活動に注力してきた場合でも、皆さんは中大生であるがゆえに高いレベルの努力を求められました。その過程では、皆さんの多くが当初の目的を簡単には果たせない苦悩を味わったことでしょう。しかし、いかなる状況にも共通する事実は日々の営みが貴方自身の選択によるものであって、しかもそれについて考えることができる時間を多く持てたということです。そして、近くには利害とはおよそ無縁の友人がいたことです。その事実こそが大学生の特権であり、皆さんの貴重な財産であり、社会人として持つべき自立心と責任感の確立に繋がるのです。

 日本は今、世界との関わり方を問われています。エネルギー資源をどのように確保すればよいのか。紛争の絶えない世界でどのようなグローバル化を目指すのか。考えるべき事柄は多いように思います。私たちは誰かに守られているという錯覚に甘え、安住に浸り過ぎていたのかもしれません。劇的な環境変化に適応すべく、狭い井の中からの脱却を迫られているのではないでしょうか。この不安定な経済社会は「一度、立ち止まって考え直そう」という私たちへの問いかけでもあると思います。学生生活に区切りを打つ今日、多忙な新生活に奔走する前に、貴方が中央大学で得た具体的な財産とは何か、それらを今後の職業や人生にどのように活かすことができるのか、少しだけ再考してみてください。

 最後に、これからの皆さんの人生が大切な家族と共に幸せに満ちたものであることを心よりお祈りいたします。