世界三大ミス・コンテストの一つ、「ミス・ワールド2015」日本代表選考会ファイナリストに中央大学法学部4年の大嶋夏実さん(21)が名乗りを上げた。コンテストは応募総数6820人による大激戦だった。
チアダンス 中大世界一の主力 大嶋夏実さん(法4)
ミス・ワールドコンテストの模様
いずれアヤメかカキツバタ。百花妍を競ったファイナリストは応募者6820人の中から選ばれた32人。ここまでの競争率は213倍にもなる。
大嶋さんの最終結果は、さらに絞られたセミファイナリスト枠(上位11~17位)に入った。グランプリは逃したが、ファイナル進出からグランプリ決定まで約1カ月半に及んだ多様な審査を「とても貴重な経験をしました」と晴れやかな笑顔で振り返る。
ファイナル審査には、陸上自衛隊一日生活体験がある。同審査は『ビューティ・トライアル』と呼ばれ、自衛隊体験のほかスポーツ、タレント、マルチメディア(コンテスト協賛企業の商品PR)、ショールーム(SNS<ソーシャル・ネットワーク・サービス>=アプリを通じて一般投票者との円滑なコミュニケーション)、モデルウオーク、水着ウオーク、英語スピーチ、社会貢献活動(レポート提出)など門外漢には気の遠くなることばかりだ。
ミス・ワールド日本事務局が定めた応募資格には、こう記してある。
「健康で明朗な、知性と品性を伴った満18歳以上、27歳以下の日本国籍を有する未婚女性」「テーマである『目的のある美』が理解できている、ボランティア活動に造詣・興味のある方」「語学力のある方」「世界大会(11月19日~12月20日、中国・海南島)へ出場可能な方」
最近3年間の応募総数とファイナリスト数
年 |
応募 |
ファイナリスト |
2015 |
6820 |
32人 |
2014 |
6755 |
37人 |
2013 |
6520 |
19人 |
迷彩服着ました
自衛隊体験で止血する大嶋さん
「自衛隊の隊内体験生活は一生に一度の経験と思い、興味がありました。私も迷彩服を着ました。驚いたのは隊員に女性が多いこと、ママさんもいました。彼女らとの懇親会で質問しました。『入隊の動機はなんですか』『国のためです』。まっすぐな目でした。女性の強さを私、感じました。男女の差はないようで、感じたこともないとおっしゃっていました」
東京・練馬の駐屯地。ミス・ワールドのファイナル審査・自衛隊編は敬礼から始まった。ヘリコプターの前での記念撮影はよかったが、装甲車近くでの、ほふく前進にはびっくりした。次は突然、心停止を起こして倒れた人を救う医療機器「AED」(自動体外式除細動器)の使い方、人工呼吸、心臓マッサージ、止血など。救急隊・救急車が到着するまで、何ができるかを試される。担架によるけが人搬送にも取り組んだ。
一人ではできない。チームワークが求められる。大嶋さんのチームは自衛隊審査成績でトップ(タイ)を取った。ミス・ワールドコンテストは美しさにとどまらず、体力、気力、協調性も選考テーマとなる。
自衛隊体験日は8月の猛暑日、就職活動の真っ最中。ミス・ワールドの相次ぐ審査に就活が重なり、体が幾つあっても足りない、とはこのことだと実感した。
「ホントに濃い日が来る日も来る日も続いて(フゥッ)。でも、学生時代にしかできないことをやろう! と」
ハードな毎日でも、そこは美を競うのだからプロポーションが崩れてはいけない。肌が荒れてもいけない。
「週に3~4回、就活が終わった夜にスポーツジムへ行き、ストレス発散。それからSNSに取り組みましたね。厳しい意見もありました。どう対応するかも審査されます。何気ない一言がどんでもない問題に発展する場合がありますから」
相当に気を遣った。限界に挑戦する人間力を試されるような数々の審査は、いつしか自分を強く、大きくしていった。
ハワイ生まれ
父親の仕事の関係で、米ハワイ島で生まれた。アメリカ社会で育つうち、自然の流れで日本を意識するようになった。「日本人では外国人に勝てない、そう言われたり、相手にされなかったりするの、すごく悔しくて」
チャレンジ精神から大学4年のこの夏、米国へチアリーダー修業に単身乗り込んだ。
中大法学部独自の「やる気応援奨学金・海外語学研修部門」で選考された。やる気応援奨学金は篤志家に支えられている。
米国ではプロスポーツ各競技のチアリーダーが大勢集まり、パフォーマンスを発表・研究する「キャンプ」が開催される。そこに参加した。日本人は彼女を含めて3人。
その後、NBA(米プロバスケットボール協会)の強豪フェニックス・サンズのダンサーズ・オーデションにも参加した。
「ふん、日本人なんかに、できるの? そんなムードでしたけど、精いっぱい踊って、表現して」
実力が認められてサンズのセミファイナリトに選出された。ロッカールームにはレギュラー並みの個人スペースが用意された。「世界に発信したい」と、子供のころから抱いていた気持ちが形になった。
ここで学んだパフォーマンスは中大に注入される。所属するチアダンスチームの中大ソングリーディング部(愛称ガーネットガールズ=G・G)は全国学生選手権(インカレ)POM部門3連覇、本場米国での世界大学選手権同部門(ことし1月・フロリダ)を制覇した実力チーム。
大嶋さんは主力メンバーとして、長身をいかしたダイナミックなダンスで異彩を放つ。G・Gは人気があり、白門祭(多摩キャンパス)の舞台、中央ステージ周辺には開催4日間で計4000人を超えるファンが集まる。
中大ソングリーディング部(G・G)のステージ、中大白門祭の一大イベントだ
ミス・ワールド日本代表選考には中大G・Gで培ったチアリーダー精神で臨んだ。ライバルは芸能プロダクションに所属し、あすの売れっ子タレントやトップモデルを目指すスター候補生。しのぎを削る競争社会で、「人を楽しませる」「背中を優しく押す」、無垢な大嶋さんの存在はファイナルストの「オアシス」になったという。
「後輩たちに勧めたい。学生時代にできることは何でもトライ。G・Gのステージで元気をもらったと喜んでくれた人たちがいました。私の挑戦が、あと一歩踏み切れないどなたかの背中を押すことになればいいなと思います」
米国チアにも挑戦
大嶋さんには、初対面の人にも「なっちゃん」と言わせてしまう独特な雰囲気がある。柔和な表情と優しい性格で知られるが、部活動では妥協せず、厳しい一面も見せる。
ミス・ワールドの応募資格にあった「健康で明朗な、知性と品性を伴った~」要素の持ち主だ。
中大4年生・大嶋夏実さん。学生最後の夏は、名前のように実りあるものになった。
好奇心はいつだって 新しい道を教えてくれる(ウォールト・ディズニー)
世界一決戦は中国で ミス・ワールド
ミス・ユニバース、ミス・インターナショナルと並んで世界三大ミス・コンテストと称される。なかでもミス・ワールドは1951年、英ロンドンで第1回大会が始まり、毎年開催される歴史と格式のあるコンテスト。
ことしの日本代表(グランプリ)は9月14日に決まり、中国・海南島での第65回世界大会へ臨む。開催は11月20日~12月19日。
■審査内容アラカルト
ファイナリストはファイナル審査の各分野で大会協賛企業の協力により、貴重な経験を積み、得難い生活情報を得た。
スポーツ審査の項目はもりだくさん。専門トレーナの指導で∇スタンド片足立ち∇ショットアップ∇ニープッシュアップ∇サイドクイック∇握力∇反復ダッシュ...。
「美と健康についてのセミナー」では歯科クリニックから口元の美。美容コンサルタントにはバストケア、ボディケア、ヨガなどを。インターネットサービス会社からは最新電子機器の取り扱いを学んだ。