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トップ>HAKUMON Chuo【2014年夏号】>史上初のリーグ9連覇 偉業は基本の積み重ね

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V決定に沸く中大ナイン=写真提供・中大準硬式野球部

史上初のリーグ9連覇

偉業は基本の積み重ね

中大準硬式野球部

準硬式野球の東都大学春季リーグは5月26日、中央大が東海大に5-3で勝って、10勝2敗とし、史上初の9連覇を達成した。通算優勝回数は58回。中大は8月12日開幕の全日本選手権(岡山・倉敷)で2年ぶりの王座奪回を目指す。

 毎年チーム構成が入れ替わる学生スポーツで、史上初の9連覇は「偉業」といっていいだろう。球速152kmを投げる清水彰仁投手が卒業しても、小河原謙哉投手(文4)=甲府南=が最優秀投手賞を獲得する、6勝0敗の大活躍。主将・勝又駿捕手が卒業しても福澤開捕手(商4)=甲府商=がチームの要となった。

 試合当日、選手は日野市の中大南平寮から球場までの往復をランニングする。計16km。途中に池田浩二監督が立っていて、選手の体調や表情などを見ている。歴代の選手が経験してきた往復ランニング。ことし5月の大型連休には3連戦があって、選手は3日間走りっ放しだった。

原田選手のバッティング=写真提供・中大準硬式野球部

 部ではキャッチボール、バットの素振り、シャドーピッチングなど基本に忠実がモットーだ。時間を無駄にしないというのも部の方針である。試合中、イニングの攻守交代の“すきま時間”でも、ファウルエリアで素振りやダッシュを繰り返す。

 「私が言ったわけでもないのに、選手は試合中にやっていますね」と池田監督。「日ごろ、試合に出たいのなら準備をしなさい、とだけ言っています」

 確かに145kmの速球を何の準備もなく打てるわけがない。

 常勝監督は「流れを読め」と言い続ける。例えば、ある中大投手が絶好調、内角速球で勝負したいと考えた。しかしコントロールミスで死球になった。打者を打ち取れる違った方法があるのに、自分本位の野球で、相手にチャンスを与えてしまう。これはよくない。

 別の中大投手が制球を乱し、カウント3-1とボール先行になった。捕手はここで投手が苦手とする球を要求する。高いレベルで野球をするための実戦練習である。ストライクが取れた。次も同じサイン。緊迫した試合の中、こうした実践が必ず生きるときがくる。

 中大はリーグ戦を戦いながら、夏の全日本選手権を見据えている。過去10回の全国制覇。リーグ戦ではやや格が下の相手もいるが、彼らに胸を合わせることなく、勝つ野球、圧勝する野球、常勝のチームづくりに励む。

 往復ランニングなど厳しいばかりではない。ときにはケーキ、エクレアなどのスイーツが試合前に監督からプレゼントされる。リーグ戦優勝決定後には、4年生が焼き肉パーティーに招待されている。

 そのときできることをしっかりする。この積み重ねは中大に限らず、学生生活にも当てはまるかもしれない。池田監督は毎年毎年、基本の大切さをミーティングで展開している。以前話した内容でも、話す相手が違う。根気のいる仕事だ。

 選手の体調を見る往復ランニングは選手起用に関わっていた。代打が出る場面、ベンチの選手が意外な顔をした。選手は実績と作戦パターンで判断する。しかし監督は選手の体調、表情から得た最新情報を持っている。

 リーグ戦史上初の9連覇をみるにつけ、「基本に忠実」「継続は力なり」「不断の努力」と、平凡な言葉にこそ重みがあることを知る。

HERO/4番はイチロータイプの原田選手

 中大の4番バッターには勝負しない―準硬式野球の東都大学リーグでよく聞かれる言葉だ。常勝チーム4番との真っ向勝負を避けるのは「勝つための野球」の一つなのだろう。

 春季開幕戦(対専修大、4月6日=上柚木公園野球場)、中大の栄えある4番に初めて座ったのはイチロー選手(ヤンキース)タイプの原田大輝内野手(商2)=水戸商。右投げ左打ち。背番号15。

 2点を追う九回、先頭打者として4度目の打席が回ってきた。この日は一塁ゴロ、左前安打、空振り三振。前の打席の七回も先頭打者だった。リーグ戦9連覇を目指す中大が開幕戦で窮地に陥った。もし負けると相手の専修大ばかりか、ほかの4校も勇気づけてしまう。

 中大4番打者の真価が問われる場面。ワンストライクからボールを4球続けて選んで四球で出塁。一塁走者では投手をけん制し、ボークに結びつけた。この回2得点で4-4の同点。延長十一回でも先頭打者。8球粘って四球で出塁すると次の打者の打席で盗塁し、福澤選手の右前サヨナラ安打を呼び込んだ。

 ヒットがたとえ出なくても四球に俊足を絡めるとチャンス到来となる。打者で、走者として、相手投手に神経を遣わせる。バットコントロールもよく、ファウルで粘りに粘り、好球を待つ。試合の終盤や土壇場でこうしたプレーができるのが原田選手である。

 「僕は体が大きくないので(身長168cm)、四球を選び、球を叩きつけて野手の間を抜く。出塁率を高めてチームに貢献したい。四球はシーズン10個以上を目標にしてきました。14四球は満足 です」

 打率・410は大湾圭人選手(商4)=沖縄・興南=の・423に次ぐチーム2位。ベストナインに初めて選ばれた。 取材は「初めてです」と緊張気味だったが今季成績にようやく笑顔がこぼれた。目標とするプロ野球選手は、阪神の3番を打つ鳥谷敬内野手。やはり右投げ左打ちだ。

 三塁の守りでも魅せるプレーをする。バント処理では、投球と同時にダッシュして、打者のすぐ近くまで迫る。守備というより攻撃だ。

 「僕がバッターなら嫌な守備ですから」

 グラブは自分の味方。大切に丁寧に扱う。試合が終わると革についた汚れを落とし、オイルをつける。指を柔らかい布で巻き、オイルを少しずつつけて全体に塗るのが通例だが、原田選手は違った。

 「オイルは指につけています。細かなところも手入れができます」

 連覇は小さなことの積み重ね。小さなことを丁寧に確実に続ける。千里の道も一歩からである。