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「リユース市」全国大学ゼミ初の研究
中大FLP佐々木ゼミ
「もったいないなあ」の気持ちを形に表した。中央大学FLP佐々木ゼミが今春、卒業生が不用品とする家具を再生し、新入生に無料提供する「リユース市」を開催した。
大学ゼミが、行政(今回は八王子市)と連携してリユース市を開催したのは全国初である。
新入生のために掃除もします。
左から五関、勝峰
写真提供=佐々木ゼミ
大学にお願いして、施設の一部を保管場所としました
八王子市職員さんにお世話になりました。トラックの運転、家具の運搬まで。右は佐藤
家具を乗せたリヤカーで坂を登るのはとてもきつかった。左から五関、松川
台車を使って楽~に運ぶ佐藤(手前)、後方は重た~いリヤカー担当の堀
八王子市職員の残念そうなつぶやきをFLP佐々木ゼミ生の先輩は見逃さなかった。2年前、ゼミ合宿で知り合った同市職員から卒業生が春先に処理するごみ収集の実情を聞いて、新たなテーマが生まれた。
「リユース市」開催である。構想を練って1年余り。昨年4月から準備を本格化した。
文献を調べ、この活動で先行する横浜国立大へヒヤリング調査に出掛けた。八王子市との連携ができて、同市役所資源循環部ごみ総合センターの「モデル事業」に認定された。
学内では生協があっせんする複数の共同住居の全300室などに、卒業生が不用品とする家具の無料提供を呼びかけるチラシをポスティングした。粗大ごみを出すとき、モノによっては有料となる時代だ。品物は引き取りに行く。双方がウィンウィンになればいい。
提供された家具の運搬には、八王子市が協力してくれた。トラックに運転手役まで。21もの大学(別表)が所在する同市は、将来的に事業拡大を視野に入れている。
不用品はゼミ生によって、きれいに手入れされた。一つひとつサイズ、重量を明示し、カタログを作成した。再生品と呼び名を変えた家具は61品そろった。棚、机、テーブル、テレビ台、扇風機、収納ケースなど。家電の展示はリサイクル法と安全性の確保から今回は見送った。
家電リサイクル法
一般家庭や事務所から排出された家電製品(エアコン、テレビ=ブラウン管、液晶、プラズマ)、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機、衣料乾燥機)から有用な部分や材料をリサイクルし、廃棄物を減量するとともに、資源の有効利用を推進するための法律/経済産業省HP
息を合わせて! 左から間宮、吉村
今度は見栄を張って1人で運ぶ吉村
新入生にチラシを配る堀
ふふふ~ん、いよいよリユース市開催です! 落合
学内に告知のポスターを張った。新入生を対象にした集まりには許可を得て参加し、PRに務めた。当日はチラシを配り、ゼミHPでも案内した。
見やすいように配置します。左から吉村、間宮
セントラルプラザに並んだ家具、テレビ台、カラーボックス、本棚など全部で61品
展示場は多摩キャンパスの中央図書館とヒルトップの間のスペース「セントラルプラザ」。ロンドン五輪日本代表となった中大選手の壮行会会場にも使われた“旅立ちの場所”である。
リユース市はここで3月25日にオープンし、4月5日まで続けた。屋根はあるものの、横長の場所は両サイドが吹き抜ける。強い風で家具が倒れたことも。雨天では足元に水がたまって開催中止。大学側の協力を得て、施設の一角を倉庫代わりにさせてもらった。期間中、天気予報にやきもきしながら61品中、42品に使用希望者が出た。
無料で、しかも手入れが行き届いている。消費税は8%に上がり、下宿生への仕送りが13年連続減少しているなか、「これいいじゃん」「助かります」と好評だった。住まいが近くならゼミ生が台車で運ぶ献身的なサービスも。配送希望者には配送料だけの負担とした。
笑顔で家具を持ち帰る1年生を見た前澤咲香ゼミ長(経3)は「初めてのことで、ほんとに開催できるのかと不安でしたが、あの笑顔を見るとやってよかったと思います。時間がかかった分、やりがいがあります」と、こちらも笑顔で話した。
活動を通して実社会の現実に直面した。不特定多数から得た不用品を売却し、これを継続的に行うには「古物商」の許可が必要になる。一方、新入生に渡った品物が欠陥であった場合、介在者であっても製造者の責任を問われるPL法に抵触する可能性が生じる。
前澤さんは「全然知らなかった法律を学びました。いろいろ調べることが多くて」と苦笑い。同じゼミの落合広貴さん(法3)は「八王子市の職員さんに教えていただきながら、勉強してきました。卒業生や新入生に迷惑をかけず、双方が幸せになるには、私たちが勉強しなければなりません」と覚悟を語った。
こうして見るとまるで家具屋さんだ
会場受付で、左から渡辺、五関
裏側にまで神経を遣います。左から勝峰、五関、中央は覗き込む新入生
夕暮れの会場、新しい所有者を待つ家具たち
5月19日、中大FLP佐々木ゼミは活動報告をまとめた。環境省職員、八王子市職員らが見守るなか、発表された「リユース市環境負荷測定」が耳目を集めた。
「リユース市」の活動を振り返る落合さん(左)と前澤さん
『リユース市によって328.10㎏の廃棄物を削減しました』
『八王子市の1カ月の粗大ごみのうち0.19%相当を削減しました』
『中大卒業生の協力率は0.78%でした』
こうしてデータで示すと、次回以降のテーマやポイントが浮かび上がってくる。
影響力や普及率など数字は小さくても、その数字を初めて出したことに意義がある。ゼミ生の努力がぎっしりつまったデータである。
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ノーベル平和賞を2004年に受賞したケニア人のワンガワ・マータイさんがアピールした「もったいない」は世界基準になった。もったいないから始まった、佐々木ゼミが推奨するリユース市。ゼミ生の呼びかけは環境にやさしく、財布にやさしく、何より人をやさしくする。
佐々木創先生(前列中央)を囲んで、昨春の合宿スポーツ大会にて
ゼミは春休みも集まって会議をしました。左から佐藤、五関、勝峰、前澤、森田、松川
■佐々木ゼミ
2012年度より、経済学部准教授、佐々木創先生のもとで2年生4人、3年生10人、4年生4人で活動中。
■私大生の仕送り 過去最低の8万円
台東京地区私立大学教職員組合連合(東京私大教連)の調査によると、首都圏を中心とする私立大に平成25年度に入学した下宿生への仕送り月額は13年連続して減少となり、8万9000円となった。集計を始めた昭和61年度以降、過去最低を更新した。下宿生への仕送り額は前年より5000円減り、ピークだった平成6年度の12万4900円から3割近く減った。
■収納ケースは約1500円
都内の量販店では、引き出し形収納ケースが1463円、大型1648円。押入収納ケース3段は3685円だった。
■学生アルバイト代は月5万円未満
求人情報サービス「an」の調査で、1人暮らしの学生のアルバイト代は月5万円未満であることが分かった。頻度は「週に2、3回」が52.5%と半数を占め、収入は「5万円未満」が56%で最多だった。
▽担当教授 経済学部准教授 佐々木創先生 | ||||
▽ゼミ生 | ||||
名前 | 学年 | 担当 | 学部 | 出身校 |
一ノ関 裕彦 | 4 | ゼミ長 | 文 | 埼玉県立浦和北高 |
藤井 かをり | 4 | 渉外 | 総合政策 | 神奈川県立希望ヶ丘高 |
鈴木 一誓 | 4 | HP・SNS | 経済 | 神奈川県立平塚江南高 |
渡邊 佑紀子 | 4 | 渉外 | 法 | 栃木県立宇都宮女子高 |
前澤 咲香 | 3 | ゼミ長 | 経済 | 都立調布北高 |
落合 広貴 | 3 | 広報 | 法 | 中央大学附属高 |
堀 智也 | 3 | マニュアル作成 | 経済 | 岐阜県立長良高 |
間宮 陽平 | 3 | 書記 | 総合政策 | 世田谷学園高 |
佐藤 愛梨 | 3 | 渉外 | 法 | 中央大学附属高 |
森田 将司 | 3 | HP・SNS | 経済 | 千葉県立小金高 |
渡辺 香純 | 3 | 渉外 | 経済 | 中央大学高 |
吉村 優 | 3 | マニュアル作成 | 法 | 中央大学附属高 |
勝峰 麻友 | 3 | 広報 | 文 | 神奈川県立大和高 |
松川 圭佑 | 3 | 会計 | 法 | 中央大学杉並高 |
五関 萌未 | 3 | 広報 | 商 | 中央大学附属高 |
大学名 | 開校 |
工学院 | 昭和38年 |
明星 | 39 |
東京工業高等専門学校 | 40 |
帝京大学短期 | 40 |
帝京 | 41 |
東京造形 | 41 |
東京純心女子 | 42 |
大学名 | 開校 |
杏林 | 45 |
多摩美術 | 46 |
創価 | 46 |
東京薬科 | 51 |
拓殖 | 52 |
中央 | 53 |
日本文化 | 53 |
大学名 | 開校 |
法政 | 59 |
創価女子短期 | 60 |
東京工科 | 61 |
首都大学東京 | 平成3 |
山野美容芸術短期 | 4 |
ヤマザキ学園 | 16 |
デジタルハリウッド | 18 |