トップ>HAKUMON Chuo【2014年春号】>【表紙の人】平成25年公認会計士試験に2年生4人がスピード合格
4人のうちの紅一点
高木 千愛さん/中央大学商学部会計学科3年
超難関国家試験の公認会計士試験(論文式試験)に中央大学2年生<当時、以下同じ>4人が合格した。4人は中大経理研究所の受講生で、うち19歳の3人が年度最年少合格者だ。合格者の平均年齢26.2歳とされるなか、スピード合格者たちの勉強の日々を聞いた。ねじり鉢巻きで机から離れずのイメージはなく、3人の中にはプロボクサー志望を視野に入れる人もいる。
うち3人が19歳の年度最年少合格者 中央大学経理研究所
——皆さん、合格おめでとうございます。公認会計士の試験は医師、弁護士とともに難しい試験と言われています。苦難の道だったと察しますが、後輩のために、あえて勉強中の楽しかったことからお尋ねします
三輪さん「何でも楽しくやろうとしていました。テキストを読んで分からなかったことが理解できるようになると楽しくなってきます」
高木 武陽(たけ あき)さん
商学部会計学科3年
県立岐阜商高卒
1994年3月9日生まれ
高木武陽さん(以下、高木さん) 「僕も勉強していくうちに知らなかったことが分かるようになるとうれしくなります。その積み重ねでした」
高木千愛さん(以下、千愛さん)「分かるようになると、無駄な時間が少なくなって、充実していきます。うれしいですよね、こういうとき。自分に合った勉強法を見つけることで、また楽しくなってくる」
坂本さん「高校から簿記を勉強していて、大学ではさらに奥深いものを学びました。そのときが楽しかったです」
■公認会計士・監査審査会によると、この中大生4人が合格した平成25年の合格率は8.9%。受験者の9割が残念な結果となった。公認会計士試験は短答式試験(年2回=12月、5月)に合格したのち、論文式試験(年1回=8月)に挑み、5科目全部合格して、公認会計士試験合格となる。
——勉強していて、つらかったことは何ですか
三輪 仁弥(まさや)さん
商学部会計学科3年
県立岐阜商高卒
1994年3月9日生まれ
三輪さん「本試験(8月=論文式試験)の1カ月くらい前に成績が悪くなって、焦りました。勉強しなくちゃ、合格ラインに届かない。それまでずっといい調子できていたのに…」
高木さん「ずっと勉強ばかりしているのに成績が伸びないときがつらかったです。才能がないのかな? 現実逃避したい気持ちになったこともあります」
千愛さん「短答式試験に12月合格して、次の論文式試験を受ける8月まで、時間がありました。私はここでだらけてしまい、興味が別のところへ行ってしまった。テストの点はあまりよくない。後から勉強を始めた学生に抜かれてしまう。勉強している炎の塔(学生研究棟)には“論文式試験まで、あと50日”といったカウントダウンのカレンダーがあります。それが減っていくたびに、急に焦り出して」
——別の興味とは
高木 千愛(ちあき)さん
商学部会計学科3年
県立岐阜商高卒
1993年8月24日生まれ
千愛さん「プロボクサー志望で、毎日のようにボクシングジムへ通っています。長谷川穂積選手が好きですね」
■長谷川穂積選手
元WBC世界バンタム級、フェザー級2階級制覇。バンタム級では10度防衛した。ボクシングは、試合では華やかだが、練習は地味できついメニューを淡々とこなすスポーツ。
坂本さん「朝起きることがつらかったです(苦笑い)。生活は夜型で、大学の門が閉まる23時まで学校にいる。大学近くの部屋に帰って、僕は自炊をしていましたから、それから食事の支度をすると食べるのが24時ごろ。受験期間中は朝7時起床を心がけていましたが、8時15分に登校するのはつらかったです」
——学部授業との両立も悩ましい問題ですね
高木さん「学部生でもあるので、きちんと授業には出ていました」
千愛さん「私は三輪さんの履修を真似しました(微笑)、学部授業に出る日、受験勉強の日とバランスがよかった。ありがとう! 三輪さん」
坂本 光輝(こうき)さん
経済学部経済情報システム学科3年
県立熊本商高卒
1994年2月23日生まれ
坂本さん「学部の授業をおろそかにして、合格しても、胸を張って公認会計士とは言えません」
■大学生活との両立で現役合格
中央大学経理研究所によると、研究所は学内の「炎の塔」(学生研究棟)にあるため、通学時間や交通費が全くかからずに済むので、貴重な学生生活をより効率的に生かすことができる。経理研の講座は第6時限(18時15分)開始。原則としてどこの学部であれ、正規授業との重複はない。授業終了は20時45分。
——受験勉強を支えてくれたのは、どなたですか
三輪さん「中央大学経理研究所の講師の方々や一緒に勉強しているメンバーでした。よきライバル。模擬試験の成績を見せ合って、負けたら次は頑張ろう。仲間がいたから自分も勉強を続けられたと思います」
■中央大学経理研究所によると、公認会計士の専任講師が学習相談はもちろんのこと、将来のことや人生についてなど、さまざまな相談にのる。平成25年全国現役合格者(大学在学)348人中38人が中大経理研究所関係であることが判明。平成25年経理研の現役合格者割合は驚異の52.8%(全国30.3%)。
高木さん「僕も研究所のスタッフや先輩、友人に助けられました。自分より勉強ができる人が勉強している姿を見て、自分はもっとやらなくちゃいけないと刺激を受けました」
千愛さん「私のさぼりに協力してくれた仲間です(ハハハ)。みんな、さぼっている私を気にかけてくれて“やらなアカンよ”と声をかけてくれる。私が何からやったらいいの? と聞くと、この問題からやっていこうって。みんな教えて・教えられるという関係。私は教えられてばかりいたけれど。お菓子のキットカットの裏にメッセージを書いてくれる人もいて、うれしかったな」
男子3人「千愛さんは、できるのにやらない。やる気になったら凄い力、出すよね」
坂本さん「支えてくれたのは、まず親でした。この試験に受からないと大学に入った意味がないと思っていました。親のためにも頑張ろうと。仲間は大事な存在で、理解してくれる、僕を高めてくれる、意見を交換して、同じ思いを共有するのは、とても大事なことだと思っていました」
——合格して変わったことがあると思いますが
三輪さん「経理研では合格者がスタッフとして、受験生の質問に答えます。質問者から回答者に回って、自分がちゃんとしなくちゃと強く思うようになりました。受験生時代は緩んでいたけれど、いまは責任感が増しました。やはり合格者という目で見られますから」
高木さん「受験勉強しかやってこなかったので、ほかの勉強をしたい、外へ遊びにも出てみたい。経理研では僕がこれからスタッフになります。受験生の質問にしっかり答えられるよう合格してからも、勉強を続けなければいけないと思います」
千愛さん「がらりと変わりました。周りの目が変わった。頭がいいように思われる。どうしよう。この年齢で変わるのって凄いよね。教えて教えてと聞いて回っていた私が、後輩から、勉強を教えてください、と言われる」
■公認会計士に合格しても、すぐに独立開業というのは非常に困難で、多くの合格者は大手監査法人に就職し、公認会計士の実務経験を積むのが一般的だ。公認会計士は経済社会のドクターとも言われ、公認会計士法第1条には、その使命がこう記されている。「国民経済の健全な発展に寄与する」
坂本さん「切羽詰まって勉強していた時間がごっそり空白の時間になりました。何で埋めたらいいのだろうと考えるうちに睡眠が入ってくる。受験生から合格者になって、確かに周囲の目が変わるけれど、まだまだ公認会計士の下っ端に位置するだけです。みんなと同じようにこれからも勉強を続けます」