新入生の皆さん、入学おめでとうございます。そして皆さんがこの日を迎えるまで、皆さんを支え、ともに歩んで来られたすべての方々に心からお祝いを申し上げます。
「グローバル化」が進展し、異なる価値や利益を追求する人びとの交流を促進したり、そこに生じる紛争や対立を未然に防止したり解決する、新しい法の形を考えなければなりません。法学部で学ぶ皆さんが、多様な機会を逃さず、世界を広げ豊かなものにしていくことが求められるのも、このような課題に応えるためです。世界を広げるとは世界を批判的に捉えることを意味します。この作業こそ学問的探究です。学問と聞くと、皆さんの生活や人生と切り離された営みのように感じるかもしれません。しかし、この営みは、皆さんの大学生活そのものと言ってよいでしょう。というのも、自身にとって都合のよい、わかりやすい世界像を描き、そこに自閉するのではなく、あたりまえの世界を疑い、世界の複雑さと向き合い、新たな知見や異なる価値観を抱く人びととの出会いをおそれず、他者と自分自身との関係性を見つめていく営みだからです。
今ある関係性を壊さないために、近道をしたり、楽な道をいくという選択は自由な選択とは言えません。半ば強要され、こうした選択を重ねることは、そのような存在として自身を承認し、皆さん自身を貶めることにもなりかねません。皆さん自身の確かな歩みを大切に、中央大学のキャンパスに刻んでほしいと願っています。