Chuo Online

  • トップ
  • オピニオン
  • 研究
  • 教育
  • 人‐かお
  • RSS
  • ENGLISH

トップ>HAKUMON Chuo【2014年早春号】>【学生記者コラム|セルフプロデュース さよならを言う前に】何者でもない私が、らしさを手に入れるためのあれこれ

Hakumonちゅうおう一覧

学生記者コラム|セルフプロデュース さよならを言う前に

何者でもない私が、らしさを手に入れるためのあれこれ

文&写真 学生記者 中野由優季(法学部4年)

 ずいぶん前のことになるが、飲み会で「サバサバした女性」という単語が出た。どうやら私はサバサバ系に分類されるらしい。

 だが、何を隠そう、私は比較的ねちっこい性格である。

 特に好きなモノに対しては、いつまでもベタベタねちねちと構っていたくなる。

 その証拠といってはなんだが、私の家族や特に親しい友人は、口が裂けても「中野はサバサバ」とは言わない。我が母上曰く「あなたが猫を飼ったら猫がストレスで禿げちゃう」そうだ。現在のところ、犬とは上手くいっているからよしとしようじゃないか。

 なぜ私はサバサバ系と表現されるのか。3年生から4年生にかけて、個性と他者評価を振り返るよい機会があった。たった数カ月の分析では、どうやら「すぱっと発言する姿勢」がよりサバサバ要素を引き出しているようだ。

横浜の赤レンガ倉庫をバックに

 そりゃ言うさ、意見を求められているのだもの。テストの点より授業の挙手が評価される家庭に生まれ育った私は、誰よりも手を挙げて発言してきた。

 今でも意見を言うときはドキドキするし、にもかかわらず敢えなく却下されたり反対意見を出されたりすると凹む。凹んでウジウジするが、やっぱりまた必死に言葉を投げかける。

 大学生活において、時たま発言できない状況に陥った。知識がないから考えがまとまらないのだ。特に国際法と国際政治史、そして原子力発電に関すること。日本語以外の語学が使い物にならないから情報源が限られ、視野の狭い考え方しかできないのである。

 悔しかったので、1、2年次は学内講演会によく足を運んだ。あれはいい。無料だし、講演者が外国人であっても日本語訳が入る。だから気軽に参加できて、しかも話の内容が理解できる。

 話し手は皆、「日本を出よ」と言っていた。毎度、留学しようと感化され、そして毎度挫折した。留学に関して、私ほど挫折を繰り返している人はいないだろう。法学部の「やる気応援奨学金」に5回挑戦しかけ、5回とも躊躇し挫折した。応募もせずに、だ。

 日本を飛び出す一歩が出てしまえば、異国の地を踏みしめる次の歩みは自然と出てくるということは分かっている。私が本当に怖かったのは、異国の地ではなく、留学のための審査や試験だった。英語への苦手意識。こいつが、ばかみたいに強力に留学への道を塞ぎ、私を日本に留まらせた。こればかりは理屈じゃない。

 2013年早春号の、国連で働く女性のコメントが印象に残っている。

 「リスクをいつ取るか。学生という立場をいかしたほうがいい」

 留学は間違いなく価値観に変化をもたらし、刺激となるであろう。興味があるならぜひ挑戦してほしい。

 留まった私は、(おそらく留学しなかったことを後悔しないために)大学生活でやりたいと思ったことは全部やった。続けられていることもあれば、挫折したこともある。

 私は私なりに、お金を払ってでもやりたいと思ったことを、無償無給で経験した。タダ働きも目的があれば貴重な経験へと変化する。

ドイツ・モーザッハ駅の朝、朝日と雪と電車とがきれいなバランスで撮れたので気に入っています

 何者でもない私が、挑戦する勇気と自信を手に入れるには、ショートヘアが必要だ。

 女のショートはとにかく目立つ。前髪が眉上ならなおよい。まず間違いなく「髪を切った」と気付かれ、運がよけりゃ「似合っている」と褒められる。

 らしさを得るためには、他者との違いがなければならない。しかも、違和感なく。奇抜ではない、異端児でもない、だが、目に止まる存在になる。そういう目的においては、なぜかは分からないが、 ショートカットは抜群の効力を発する。

 それに加え、髪型の大きな変化は気分を変える契機になる。私はもっぱら、新しい事に挑戦する直前にばっさりいく。切ったとアピールしなくても注目されるし、ついでに褒めてもらえるしで、気分よく前に進めるからやめられない。

ドイツのローテンブルクには、中世の街並みが残っています。ここは駅から街に入る最初の門

 2014年1月、さっぱりヘアはドイツに行った。3度目の正直である。過去2度は留学を想定していたが、今回は1週間の旅行。しかもドイツ留学経験者と。

 怖い試験はドイツ入国審査くらい。どきどきしていたが、何も聞かれず判子を押されて、Willkommen in Deutschland ! (ようこそ ドイツへ)

 ドイツ語は挨拶くらいしか聞き取れないし話せない。英語も日常会話でさえ半分くらいしか分からないが、旅行するくらいなら何とかなると分かった。

 何より、英語とドイツ語を話せる相棒の方が、ずっとずっとドジだった。壊れたカメラを2台持ち、雪道で転び、変わった味のサンドイッチを購入し、挙げ句の果てには口に合わないお菓子を食べて銀歯が取れた。私の方がドイツに適応できていたというのは言い過ぎだろうか。

 大学生活で意識していたことは、「面倒なことはやる、嫌なことはやらない」。おかげで、少なくとも小綺麗な部屋で規則正しい健康的な生活を送ることができた。

 社会人はこれでは上手くいかない。嫌なことを、内心嫌々思いながら、はははっと笑ってこなせる人になる必要がある。誰かを真似して“ぶる”のではなく、下手でも“らしさ”を出して努力していきたい。