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トップ>HAKUMON Chuo【2014年早春号】>【チアダンス全日本選手権POM部門】連覇達成ガーネット・ガールズ

Hakumonちゅうおう一覧

チアダンス全日本選手権POM部門

連覇達成ガーネット・ガールズ

強豪大学抑えた女王の堂々たる演技

チアダンスで人気の中央大学ソングリーディング部(ガーネット・ガールズ=G・G)が全日本選手権POM部門・大学生編成で連覇を果たした。強豪大学を次々に退けた演技は、1週間前の関東予選より一段とレベルアップしていた。

 第13回全日本選手権大会、第11回全日本学生選手権大会は昨年12月7日、超満員の東京・千駄ヶ谷の東京体育館で行われた。G・Gは同年11月30日の関東予選(幕張メッセ=千葉)を1位通過し、この日の決勝ではPOM部門最終組で登場した。

 午後2時46分。「私たちも精いっぱい演技して、先輩たちと同じように、“再演技”をしたい。先輩たちが気持ちイイって言っていましたから」中村磨生子部長(商2)がチームの思いを代弁した。

 再演技とは各部門優勝チームによるグランプリ審査。

 G・Gは予選同様、決勝でも2分6秒の持ち時間(競技規定は2分〜2分30秒)をエネルギッシュに躍動した。

 ターンして踊る「フェッテ」、足を後頭部まで引き上げる「スコーピオン」、開脚でジャンプした両足に両手を添える「トータッチ」など研鑽に研鑽を重ねたダンスを次々に披露した。チーム全員でひたむきに回ったフェッテは圧巻だった。

 ターンは華麗で、ジャンプは高い。肉体の伸身の限界まで動くダンスの数々。選手は全員のびやかに動き、とびきりの笑顔でいる。

 演技後半のラインダンスも見事だった。個々ではひざとつま先を伸ばし、全員で左右の方向性を合わせる。楽しそうな気持ちが表情に、高く上げた足に、つま先に表れていた。

 観衆はつい、自らも両手を広げ、彼女たちを真似したくなってくる。

 演技は終了した。G・Gに満足そうな顔が広がった。日ごろの力を十分に発揮したという達成感に喜びを感じている。

解説者が高い評価

 テレビ解説(BSジャパン=テレビ東京系、同年12月14日放送)で、日本チアダンス協会の前田千代理事が中大を褒めていた。

 「とてもパワフルなチームですね。スピード感もあって非常にカッコいいです。体を目一杯大きく使っているのが伝わってきます。見ている人を惹き付けるような振付と構成です。フェッテは足がとても綺麗。ラインダンスは足がとても高いです。顔にくっつきそうですよ」

 G・Gは競技フロアを離れ、2階の選手席へ移動していた。この後、チアダンス部門ほか2部門・18チームの演技を観戦し、声援を送った。

 参加チームは互いに応援することが、チアダンスのマナーである。成績発表は全演技が終わってから。家族らは発表までの時間がじれったい。

 午後5時20分、東京体育館に場内アナウンスが流れた。

 「ただいまより表彰式を行います」

 各校の選手たちは競技フロアに集まり、“体育座り”のまま、両手で床を叩き始めた。表彰式のBGM、ドラムの音に似せて、次々に発表される部門別優勝を盛り上げるのだ。G・Gも全員が手を床に叩きつけた。

 「続きましてPOM部門・大学生編成です」

 同5時24分だった。G・Gの手が止まった。一様に頭を下げて、静かに“その時”を待った。

 「優勝は、中央大学ソングリーディング部です!」

 中村部長が立ち上がり、左手で大きくガッツポーズ。隣の岡崎愛実副部長(文2)、熊澤莉紗子副部長(法2)らと体をぶつけ合って喜ぶ。羽村紫織さん(総政4)の胸に下級生が飛び込んでいく。ほかの部員も互いに顔を見合わせると言葉もなく、強くハグする姿がいくつも見られた。ピョンピョンと跳ねている部員もいる。

 競技時間2分6秒のため、プラスになることはなんでもこなしてきた。つらいとき苦しいときは、人知れず歯を食いしばって乗り切ってきた。チームを信じ、仲間を信じ、ずっと続けてきたことに間違いはなかった、そう胸を張れる瞬間だ。

 まだ泣いている。涙で顔がぐしょぐしょだ。せっかくのステージ化粧が崩れてしまうが、うれし泣きだもの、いまは泣いていたい。

採点でびっくり

 採点が分かった。

中大
87.50点(予選84.83点)
桜美林大
85.50点(予選84.50点)

 中大関係者が驚きの表情でつぶやいた。「結構、離れているね」

 関東予選の結果発表では、強豪大学が僅差に迫ってきた。いずれも選手層が厚く、レベルが高いチームである。

 「私たちより数段、上手です。私たちの勝てない相手です。僅差でしょ、鳥肌が立ちました」部員が事実を口にするだけで、周囲は寡黙になった。決勝進出の喜びよりも、ライバルの力が大きく見えだした。「これから1週間が勝負」。幕張メッセを後にするG・Gたちは、まなじりを決していた。

 1週間後の決勝で、「0.33点差」が「2点差」に広がっていた。肉薄してきた実力校をぐいと突き放す女王G・Gの堂々たる勝ちっぷりだ。

中央大学ソングリーディング部
中村磨生子商学部2年(部長)
岡崎 愛実文学部2年(副部長)
熊澤莉紗子法学部2年(副部長)
羽村 紫織総合政策学部4年(元部長)
上杉 有香法学部2年(音響)
植野 紗稀経済学部2年(体育館)
大嶋 夏実法学部2年(会計)
大槻麻莉子法学部2年(衣装)
小糸 美鈴総合政策学部2年(Cスク)
國分 星香文学部2年(体育館)
野村 碧商学部2年(衣装)
日野 紗和経済学部2年(ビデオ)
深瀬 希法学部2年(Cスク)
吉野 由花商学部2年(保健)
碓井美雅子経済学部1年
岡山葉奈佳経済学部1年
小林 礼佳総合政策学部1年
簡 莉那商学部1年
椎木 萌絵法学部1年
篠原里佳子経済学部1年
新澤 美沙総合政策学部1年
高須賀杏子総合政策学部1年
場勝あゆみ商学部1年
細川 夏実総合政策学部1年
前島 郁美商学部1年
山崎 彩奈文学部1年
渡邊 桂子経済学部1年

 そのライバル校が凝視している。羨望と来季逆転を誓う目だ。各部門優勝チームによる「再演技」。競技フロアの3つのコーナーに、優勝を逃したチームの選手がずらりと座っている。

 G・Gは耀きを増した笑顔で舞い、跳び、回った。いつものように演技したが、審査員席では審査員が審査用のペンを脇へ置いて、手を叩いている。演技を楽しんでいた。

 演技後は、控えフロアに戻った。その隣にやってきたのは、やはり再演技を終えたPOM部門・高校生スモール編成優勝の中央大学附属高校「FAIRIES」(フェアリーズ=妖精)だった。

 日本チアダンス協会の丸田えり子審査委員長が講評を話し始めた。

 「チームでたくさんのことを乗り越えたと思います。チームのみんなを信じて踊る、その素晴らしさを表現してくれました」と出場全選手、関係者を称えた。

 大会はすべてが終わった。東京体育館の外には、月が出ていた。冬の澄んだ空に綺麗な月が映える。ミーティングは月明かりの下で始まった。

 「来年からはコスチュームが変わります。演技力、表現力を一つひとつレベルアップして、コスチュームが変わっただけなんて言われないようにしましょう」村田麻里コーチが祝福にやってきた。応援する声、大きな声による指示で、声に疲れが出ていた。

 「終わった」と思うと「また始まる」。今度は3連覇を目指す戦いだ。連覇は初優勝より難しいといわれる。V3へさらに厳しい道をいま、歩き出した。

お花をたくさん いただきました

G・GV2引退に花を添えた羽村紫織さん

昨年12月7日午後7時半ごろ。東京体育館前の広場で、中央大学ソングリーディング部(ガーネット・ガールズ=G・G)を卒業する羽村紫織さん(総政4)は、花束と花束の間から笑顔をのぞかせていた。

 チアダンスの全日本選手権POM部門大学生編成V2。中大選手として最後の最後まで全うした。たった一人の4年生に、社会人となったG・Gの先輩から、チームの後輩から、祝福と感謝の花束が届けられた。

 「いっぱいお花をいただいて幸せです。みなさんに感謝します。チアダンスを続けていてよかったです」

 満面の笑みだった。その穏やかな表情にどれだけの後輩が助けられたか。

 この日の決勝演技終了後。選手が控える2階席で、後輩の背中をそっとさする羽村さんがいた。その後輩選手は演技前に体調を急に崩しながらも耐えて、頑張って役割を果たした。

引退をする羽村さん(左から3人目)とラストショット!?
左から岡崎さん、熊澤さん。右が中村さん

 4年生の羽村さんは、部員から頼りにされている。

 「私も後輩と一緒にいるのが好きです。私が3年生のころは、“2.5年生”と呼ばれていました。2年生といつも一緒にいたから。いまも1年生がどんなことに興味を持っているのか、何で盛り上がっているか気になります」

 3代目部長として、チームをけん引した。3年生になったら現役引退、チームを卒業する慣例があり、同期生はみんなそのようにした。

 ただ一人「部に戻る」決意をしたのが羽村さんだった。「まだやるのかって家族が驚いていました」。授業に加えて、2年次からは教職課程を取っていた。

 「週5回の部活練習がある週に、いろいろ重なるとつらくて、帰宅するとそのままリビングのソファで寝てしまいたいと思うときもありました」

 家族は娘の奮闘をよく知っていた。部活動の続行は、チアダンスが好きだったのはもちろん、2008年創部のソングリーディング部の歴史を伝えたかった。

 「チームの初代キャプテンは4年生の11月ごろまで部活動を続けました。1年生だった私はそのキャプテンにあこがれていて、チームのためにできることを精いっぱいやる姿を見て、私もいつか見習いたいと思っていました」

 チームに戻る際、自分に約束した。

 「チームは後輩部長らに任せる。口出しはしない」

 自らの立場は、部の一員としてダンスの競技力を向上させる一方、もし部長らの目の届かないことがあったら、そこをさりげなく手伝う。

 「私が入部したころは練習も週に2回。大会前で週5回。今よりゆったりしていました」

新しいコスチューム

 競技レベルが上がって、ダンスの技やキレも、より高いレベルが求められるようになった。羽村さんの立場は、技術的にやや遅れてしまった部員の相談役、聞き役といったところだ。

 「1年生が、このダンスできません、と言ってきます。私はなぜできないの。やってみてと実技を見て、直すところがあれば、一緒にダンスをやり直します。怒ってはダメです。できないのは原因がありますから、そこが分かると前へ進みます」

 下級生にとって、羽村さんはいつも泰然としているように見える。「余裕のないとき、どうしたらいいですか」なんて聞かれることもあった。

 こうして面倒を見てもらった中には、V2の執行部も入っている。日ごろから、後輩によく声をかけ、一緒にいることが当たり前と思う雰囲気づくりを心掛けている。

 中学・高校生に「社会」を教える教員免許状を取得した。「ここで学んだことがあります」肩をすくめて言い出したのは、「教員はユーモアのセンスがあったほうがいい。授業は平板ではなく起伏をつけなさいって。そのまま部活に生かしてきました」

 どうりで、トークがうまいわけだ。聞き上手でもあるから、話しやすい雰囲気をつくってくれる。

 「私、1年生にこう言いました。『自分の時間を好きなように使えるのはいまだけよ。2年生になったら後輩のことを気にかけ、自分の時間をそこに使いなさい』先輩に教えられたことですが」

 羽村さんがチームを去っても、G・Gの伝統は連綿と継承されていく。

米フロリダ目指して一歩前進

 G・Gは2月2日、東京・駒沢体育館で行われた全日本チアリーディング&ダンス選手権「USAリージョナルス東京大会」に出場して、大学編成オープンカテゴリーで予選を通過、「USAナショナルズ全国選手権」(3月27〜30日=幕張メッセ・千葉)に駒を進めた。この大会は「ワールド2014世界選手権」へつながるもので、「ワールド」は4月に米フロリダ州ディズニーワールドで開催される。

 東京大会でのG・G登場は終盤の午後6時前。競技フロアに現れた姿にスタンドの中大ファンはびっくりした。コスチュームががらりと変わっていた。カラーは従来の白から黒へ。ガーネット・ガールズの「G」を胸に大きく赤であしらった。紅紫だったポンポンは真っ白になっている。ダンスは精度が高まっていて、さらにスピードが加わった、一つひとつの動きはパワフルだ。前年「ワールド」では6位に入賞した。

※USAとは、米国に本部を置く普及団体、ユナイテッド・スピリット・アソシエーション・ジャパンのことで主催・運営をする。G・Gが昨年12月に連覇した全日本チアダンス選手権の主催は一般社団法人・日本チアダンス協会。両者は別組織である。