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トップ>HAKUMON Chuo【2014年秋号】>【ニュース&中大ニュース】世界レスリング8位入賞 中大職員・天野雅之さん

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ニュース&中大ニュース

世界レスリング8位入賞

中大職員、コーチ、選手の一人3役大健闘した天野雅之さん

 レスリングの世界選手権は9月にウズベキスタンの首都タシケントで行われた。世界選手権初出場の中央大学職員・天野雅之選手(26)が8位入賞し、仕事と競技を両立させた。

相手の背中を取り、持ち上げ、後ろに投げるシーン

 男子グレコローマン85kg級。中大職員で中大レスリング部コーチの天野選手の胸に「日の丸」が付いていた。世界選手権のマットに上がるのは初めてだ。

 初戦の2回戦でベネズエラ選手に勝利した。続く3回戦の相手は欧州選手権3位。強豪のダミアン・ヤニコウスキ(ポーランド)に鮮やかなテクニカルフォール勝ち。今大会優勝者となる選手に敗れて8位に終わったが、このクラスの参加は36選手、堂々たる入賞だ。

 試合は9月12日に行われた。2日後の14日に26歳の誕生日を迎える。心に期するものがあった。

 「2試合目のポーランド選手も強くて、“どうかな”と言われていましたが、勝つことができた。緊張するかと思っていましたが、セコンドにいるコーチの声も聞こえて、試合中、冷静に対処できました。少し自分を褒めてあげたいかなと思います」

ローリングで回し、追加点(相手の背中をマットに対して90度以上であれば得点が入る)

 懸念していたことを一つひとつクリアしていった。日本レスリング協会が詳報した大会HP記事は「天野の速攻がさえた」「スタンドでバックへ回り、バック投げ」「組み合ってすぐにそり投げ気味に投げて」と果敢で素早い動きを伝えた。

 褒めてあげたいというコメントは日常生活から生まれたものだ。今大会に出場した日本選手で、アマチュアはただ一人、それが天野選手だ。多くの選手はレスリングを仕事のようにしているプロ契約者。

 天野コーチは朝7時から始まる中大レスリング部の朝練を指導。朝から夕刻まで経済学部職員として業務をこなし、夜はまた、後輩の動きを見守る。その間を縫って自ら天野選手を鍛える。

 「だから仕事に支障が出るんだ」「だから試合で勝てないのか」。そんなことは言われたくないし、言わせない。自らを客観視すると、自らに厳しくなる。職員、コーチ、選手の一人3役。それぞれに全力で取り組む毎日。週末には試合や練習がある。休みは数えるほどだ。

 「全日本チームの合宿でコーチからアドバイスを受けると、日ごろ一人で全て考えてやっている自分にとっては、ありがたい、と実感します」

 「恵まれた競技環境が、いい結果になるとは限りません」「自分に与えられた環境をどれだけ『自分色』にするか。それは自分次第です」

 世界選手権8位入賞は「自信になった」と笑顔を見せた。次なる高いステージを目指して、仕事と競技の両立が続く。

左から筒井氏(協会関係者)、清水選手(グレコローマン75kg代表)、元木氏(全日本コーチ)、本人

 初めて訪れたウズベキスタン。試合後に現地を見て回った。空気は乾燥している。ほこりっぽく感じた。日本人墓地をお参りした際、タクシーで出掛けたが、乗った全てのタクシーが一般車両だった。利用者が手を挙げると一般車両が停車する。料金は交渉次第。 

 ヒツジの肉を食べ、シルクロードを肌で感じた。海外旅行をするとき、「生水に気をつけて」と注意を受ける。飲み物の氷も避けたほうがいいようだが、天野さんはサラダにも気を遣った。「野菜を水洗いするでしょうからね」「シャワーの水、歯磨きで口をゆすぐ水も注意しました」

 大胆なアスリートは、慎重でもある。

天野雅之氏(あまの・まさゆき)
福岡・東福岡高―中大卒。2008年世界ジュニア選手権5位。2011年全日本選手権優勝。2011、2012年全日本選抜選手権優勝。2014年全日本選抜選手権2位。182cm、85kg。
[もっと知りたい]

■中大レスリング部
創部1946年。オリンピック金メダリストを5人輩出した。1952年ヘルシンキ大会、F・バンタム級石井庄八選手▽1956年メルボルン大会、F・フェザー級笹原正三選手、F・ウエルター級池田三男選手▽1964年東京大会、F・フェザー級渡辺長武選手▽1968年メキシコ大会、F・フライ級中田茂男選手。世界選手権を制したのは3人。1954年東京大会、F・フェザー級笹原正三選手▽1962年米国トレド大会、F・フェザー級渡辺長武選手▽1968年インド・ニューデリー大会、F・フライ級中田茂男選手。10月26日のホームカミングデー(多摩キャンパス)で練習を公開する。今後の試合日程は11月に全日本大学選手権、東日本秋季新人戦。12月には天皇杯全日本選手権というビッグイベントが控えている。