プロ野球日本シリーズ、楽天―巨人は第7戦までもつれ、球団創設9年目にして初めてリーグ優勝した楽天が11月3日、巨人を倒して、初のプロ野球日本一に輝いた。シリーズの最高殊勲選手賞(MVP)には楽天の美馬学投手(27)が選ばれた。同投手は中央大学出身者。
身長169㎝、球界では小兵といわれる体のどこにデッカイ肝っ玉があるのか、美馬投手は度胸満点のピッチングを続けた。
第3戦と第7戦に、ともに先発して2勝0敗。防御率0.00。計11回2/3を投げて、被安打5、与四死球4、奪三振10。得点圏に走者を置いた場面で、計6打数ノーヒット。巨人打線を完ぺきに抑えた。
第7戦の試合後、MVP受賞が決まり、賞金500万円とトロフィーを手にした。メディアのインタビューに「できすぎです。ファーム(2軍)で結果も残していないのに、上(1軍)に上げてくれて…」と最後は言葉にならない。こみあげてくるものがあったのだろう。思いを胸の奥にしまい、ひと呼吸置いて高らかに言い放った。
「いやあ~最高です」
1年目は2勝1敗。2年目が8勝10敗。飛躍を誓った今季の3年目だが、レギュラーシーズンは6勝5敗で終わった。中大時代に3度手術した右ひじ痛がぶりかえしたのか、終盤には1軍ベンチからも離れ、ポストシーズンの出場も危ぶまれた。
ファンや関係者の耳目は、開幕から24勝、負けなしの大黒柱・田中将大、新人ながら二桁勝利(15勝)をマークした則本昴大両投手に向けられていた。
美馬投手はロッテを迎えたクライマックス・シリーズのファイナル・ステージ第3戦で先発のチャンスをつかむとプロ入り3年目で初完封。日本シリーズのメンバーに加わった。
第3戦の先発は好投を続けた六回途中、打球を右足に当てて降板した。しかしイニング数の割に少ないという84球の投球数が次の登板機会を引きよせた。
初めて選手に拍手した
テレビ画面を見て喜んでいたのが、美馬投手の中大時代の監督、高橋善正氏だ。元プロ野球東映、巨人などの投手。コーチ経験も複数球団で長い経験をもつ。
「随分と長く、野球を見ているけど、選手に拍手したのは初めて。シリーズ前は一度くらい登板できればいいな、経験になるから。そんな思いで見ていた」
中大硬式野球部前監督高橋氏
中大監督と主戦投手として、2008年春からの付き合いだ。
「春のオープン戦のころから、社会人チームが注目していた。がんがん向かっていくし、当時でもう一級品のボールを投げていた」
「練習をよくする。こっちは何も言わなくていい。全体練習のあとも黙々と練習、また練習。その姿を見ていたのが巨人に入った沢村投手。日本ハム入りした鍵谷投手がその後ろにいた」
2008年春季2部リーグ最終戦、悪いことに期待の美馬投手が右ひじを負傷した。ひじを体内で固定していた自らの骨が折れたのだと後日わかり、手術室へ入っていった。チームは2部で優勝したが、大黒柱は1部との入れ替え戦で投げるどころではない。
「ユニホームを脱いだらさっぱりとした性格だから慕われるし、後輩の面倒も見る。入れ替え戦では、“一度も神宮で投げたことがない美馬さんを神宮へ”といった熱い気持ちがチームにあった」
6年ぶりに1部復帰を果たし、チームメートは念願通り、美馬投手に秋のリーグ戦を神宮で迎える舞台をつくった。
大学のラストシーズン、美馬投手は神宮のマウンドに初めて立った。右ひじにはボルトを入れていた。
平成19年度秋季リーグ戦のスコアボード
茨城・藤代高2年春にエースとして甲子園に出場。苦しい時期の中大を支えてきた男の復活劇だった。社会人の東京ガスに2年在籍して、ドラフト2位で楽天に入団、3年目で大きく開花した。
このシリーズでは、中大出身選手が4人出場した。巨人から阿部慎之介捕手、亀井善行外野手、沢村拓一投手。中大ファンには、打った、抑えたと一喜一憂しながらも、楽しい7試合になった。
-
「優秀学生大賞」受賞
中大・安原さん、塩浦さん
安原さんの社会貢献部門受賞は中大初
塩浦慎理さん
安原元樹さん
学術・スポーツなど4分野で優れた業績・成績を残した学生を表彰する「優秀学生顕彰」の選考結果が、10月8日、主催の独立行政法人・日本学生支援機構から発表された。表彰式は12月7日。
中央大学からは大賞受賞者が2人選ばれた。社会貢献部門の安原元樹(やすはら・もとき)さん=総合政策学部3年、宮城・宮城広瀬高=と、スポーツ部門の塩浦慎理(しおうら・しんり)さん=水泳部、法学部4年、神奈川・湘南工科大付高=で、奨励金各50万円を支給された。中大で社会貢献部門の受賞は初めてだった。
受賞理由は、日本学生支援機構によると、安原さんが東日本大震災後の復旧支援。
「2011年3月の東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県気仙沼市大島での震災復旧および復興支援活動。島民から直接ニーズを聞きとり、柔軟に対応していける団体を目指す。学内外から学生を募集し、より多くの学生個人がメディアでは伝えられない現実を感じてもらう。大島島民、そして学生をつなぎ、いつか支援が必要なくなったのちも仲間としてつながり続けられる関係作り」が高く評価された。
スポーツ部門の塩浦さんは「水泳の世界短水路選手権4×100mリレー5位、日本選手権50m自由形1位(日本新記録)、100m自由形1位、世界選手権4×100mメドレーリレー3位、100m自由形10位」が評価の対象となった。
今年度の「優秀学生顕彰」には、全国から98人の応募があり、入賞者49人。うち大賞受賞者は各部門合計16人だった。
中大の大賞受賞者は昨年度、陸上競技部短距離の飯塚翔太さん(法学部3年)がスポーツ部門で、ロンドン五輪4×100mリレー5位などの活躍が評価された。
日本学生支援機構は、日本育英会の事業だった奨学金や留学生の交流などを継承している。