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トップ>HAKUMON Chuo【2013年冬号】>【特集】白門祭 すべては2分6秒のために

Hakumonちゅうおう一覧

【特集】白門祭

すべては2分6秒のために

全日本学生POM部門・V2を目指す日々
中央大学ソングリーディング部

■大会規定 競技エリアは原則として横20m、奥行き15mとする。競技時間は2分2分30秒とする。違反の場合は2点減点。編成人数は5人以上30人以下。審査は採点で行われ、100点満点。

チーム20人がそろって笑顔で、躍動美を表現し、チームとしての均一性、一体感を競うチアダンス。中央大学ソングリーディング部はポンポンを使う「POM」部門で、昨年の全日本チアダンス選手権大学生編成で全国優勝した。競技時間2分6秒のために、V2のために週に4日激しく練習し、厳しく自己を管理する毎日だ。

「IASF THA DANCE WORLDS 2013」(ダンス・ワールド)=米国フロリダ州、昨年4~5月=で6位入賞時の記念撮影=中央大学ソングリーディング部提供

 愛称ガーネット・ガールズ。チアダンスが好きな女子学生の集まりである。ガーネットとはザクロ石。1月の誕生石で、恩師の誕生月にちなんだ。

 ステージに姿を見せた彼女たちは、華やかな衣装にしなやかな肢体を包み、こぼれんばかりの笑顔。ファッションモデルのような美脚、手にはおなじみのポンポン、チームカラーの紫紅色だ。

 観衆が度肝を抜かれるのが「フェッテ」と呼ばれるターンである。

 両手を水平に広げ、右足を軸に、つま先だって1回転。ひざを腰近くまで上げる。これを18回続ける。ポニーテールも回っている。

 フェッテ隊長と呼ばれる岡崎愛実さん(文2=副部長)、日野紗和さん(経2)、熊澤莉紗子さん(法2=副部長)、野村碧さん(商2)、上杉有香さん(法2)、小糸美鈴さん(総政2)らが、きれいなフェッテを披露する。

 後ろに引いた足を、両手で後頭部までぐいと引っ張って押さえる。「スコーピオン」と呼ばれる高難度のダンス。熊澤さんと日野さんが得意とし、その姿はスコ-ピオン(サソリ)のイメージだ。

 開脚でジャンプしたつま先に手を当てるトータッチになると、中村磨生子部長(商2)、羽村紫織さん(総政4)、椎木萌絵さん(法1)が際立つ。ヒップホップの動きのファンクなら大嶋夏実さん(法2)、大槻麻莉子さん(法2)の出番だ。

 エレガントに、時にダイナミックに。指の先、ひざの位置、つま先まで神経をとがらせて跳び、舞う。ラインダンスを交えたガーネット・ガールズの舞台は観客を大いに魅了する。

人気NO.1

 白門祭(10月31日~11月3日、多摩キャンパス)では約4000人の観客を集めた。生協前の階段は縦に横に鈴なりの人、ペデストリアンデッキ(遊歩道)上にもフェンスに身を乗り出す人が大勢いた。

 白門祭中央ステージは4日間の期間中、各団体が入れ替わりで演技・演奏、パフォーマンスを繰り広げた。そのなかでガーネット・ガールズが中大生らの投票による「ステージ・ホール部門」第1位に輝いた。約4000観衆の感動がそのまま投票箱に入ったのだろう。

 昨年11月の全日本優勝のほか、ことし4~5月には約55カ国が参加した世界大会「ザ・ダンス・ワールド」(米フロリダ州)に日本代表として出場し、6位に入賞した。

 3月のUSA(United SpiritAssociation)全国大会(幕張メッセ=千葉市)で準優勝したとき、米国の審査員がダンス・ワールドへの出場を推薦してくれた。彼女らの才能をチアダンスの本場・米国が認めたのである。

 9月にも国際大会「アジアオープン選手権」(東京・国立代々木競技場第二体育館)で準優勝した。米国、ロシア、タイなど8チームが渾身の力を競った末の2位。いまや活動の舞台を世界に求める実力チームである。

 11月30日には、昨年優勝した大会である全日本チアダンス選手権大学生編成POM部門、関東予選大会(幕張メッセ=千葉市)を1位通過した。12月7日の同大会決勝(東京体育館)へ進出。連覇へ王手をかけた。

サロメチール

 練習場からサロメチールの匂いがしてきた。外用鎮痛消炎剤によるケア。ひざを保護するサポーター着用が何人もいる。保健係の吉野由花さん(商2)はエアーサロンパス、湿布薬、テーピングなどを欠かさない。華やかなチアダンスの舞台裏は、スポーツ競技の練習と何ら変わらなかった。

 練習はストレッチで始まる。壁を背に右足を高く挙げると顔にピタリとつく。足と壁が平行線になっている。力士が見せてくれる股割り、胸が床につく動きもさらっとこなす。体はどこまで伸びるのか、開けるのか。準備体操というには不似合いな、体の柔軟さの極限値を求めるかのような体操を30分間続ける。

 今度は足を顔の位置まで高く挙げて前へ進む。足を代えながら8歩、9歩、10歩と進む。バレエを取り入れたシーンでは、つま先立ちで静止。8秒、9秒、10秒…。次はこの状態でひざを曲げる。

 もも上げジャンプ、ターンなど各部門練習の終了まで、開始からみっちり約1時間半。この後、ようやくポンポンを持つ。ポンポンを手にジャンプ。その高さをチームでそろえる。ポンポンを胸の前で強く叩く。その音をチーム全員で合わせる。

 ダンス練習中、上級生からもっとうまくなる、さらに美しく見せるための意見が出る。このとき、岡崎副部長が振り返った。練習場の隅にいた下級生に前へ出て、話を一緒に聞きなさい、と手で示した。

 「私はメンバーのなかで補欠の経験があります。チアダンスは大学入学から始めて、みんなについていけませんでした。そんなとき上級生が声をかけてくれて、全体練習の前に個人レッスンをしてもらいました。メンバーに入ったとき、いろいろな役割があるなか、私は後輩や補欠と呼ばれてしまう下級生をチームの輪に入れよう、輪に入れることが私のやるべきことだと思っています」

 練習に不可欠なダンス・ミュージックはCDプレーヤーで再生する。何度も同じ箇所を練習するとき、何度も音楽を再生する。スイッチはプレーヤーに近い人の担当となる。オンすると「ありがとうございます」と方々から声がかかる。「ありがとうって、いい言葉ですよね」野村さんが笑顔で言った。

 ダンス構成、振付で意見を述べるとき、上級生であっても「力を入れ過ぎないで、いきましょう。次のことを考えてやろうと思います」(大嶋さん)と丁寧な言葉を口にする。

 恩師と仰ぐ村田麻里コーチが言う。「部活、部活していないところがいいですね。みんな一生懸命で仲がいいです」

練習場の確保

 水分補給の休憩時間。自販機へ行き、トイレから戻る彼女らはこぞって小走りだ。誰かに指示されたわけではない。練習時間を少しも無駄にしない自発的な意思が伝わってくる。

 中大多摩キャンパス内のCスクエア板張り練習場、大きな鏡付きの部屋を無料で借りられる日はいいが、利用する団体は抽選で決まる。外れると大学近くにある市民センターなどの公共施設に練習場を求める。

 希望者は利用日の2カ月前に申し込む。電話で予約し、取れたら窓口で利用料を支払うのだが、あてにしていた場所が利用不可だと次を探す。ダメなときはまた次へ。

 担当の部員は4人いて、植野紗稀さん(経2)、國分星香さん(文2)、小糸美鈴さん(総政2)、深瀬希さん(法2)。

 通学定期の利用範囲にある施設を条件とする。たえず先回りして練習場を確保するのは大変だ。当該部員とともに苦労する中村部長の手帳には、スケジュールを書いたり消したりの跡がある。

 通常4時間借りて、3600円。部費月額4000円からの分担支払い。ようやくの思いで掌中にした練習場を無駄にはできない。

 練習時間帯はこうした事情から、まちまちで練習施設の広さも会場によって違ってくる。姿見の大きな鏡があるかないか。競技大会規定のスペースが十分に取れるか。規定の長さ・奥行きを持参のテープで示すときもある。

 午前9時過ぎから始まる練習の日もあれば、午後5時半開始、同9時半終了もある。部費調達のためのアルバイトにしても、勤務ダイヤが不定期となってしまうため、「勤務時間を約束できる」夜間練習後の深夜、ファーストフード店のバイト勤務につく部員もいる。

食べたい…

 「食べたい」「でも深夜時間帯に食べると…」。翌日の練習に支障が出る。「私は、夜は食べないで、朝ちゃんと食べています。練習前の夕方に学食でサラダと豚汁で済ませています」(國分さん)、「食べてもサラダかお豆腐くらい」という部員が多い。なかには若さが前面に出て失敗した例もある。

 「夜の練習後に以前、唐揚げを食べたり、ラーメンを食べたりしていたら太ってきて。標準体重ではあるけれど、チアダンスをするには太り過ぎと言われました。ポテトチップスは我慢しています」

 普段は肉や魚、米などエネルギーになるものはしっかり摂っている。一人暮らしだった部員は「ひじきや切干大根煮、豆類といった総菜を選んでいました」と食生活にも気を配る。抜き打ちで行われる体重検査が気掛かりだ。

 身長―110(あるいは115)が適正体重とされる。「やせ過ぎてもいけません」と村田コーチ。ダイエットをし過ぎた部員は「練習中に目まいがした」苦い経験をもつ。

 「授業、練習、アルバイトと続いて眠い夜もあります。でも、お風呂に入って体を芯から温めないと満足な練習ができませんから」(高須賀杏子さん、総政1)。1年生からこの心構えでいる。

高くなる競技レベル

指導する村田コーチ

 「この5年、10年で競技人口が増えました。ダンスも向上して、いまレベルは相当高いです」村田コーチが言うように厳しい競争社会だ。そこでしのぎを削る中大部員27人。

 チームでは、全体の動きと自らのポジションを確認するためにビデオ撮影して、部員で共有している。自分のダンスをスマホ(高機能携帯電話)で再生する。通学電車内もレッスン場になる。

 授業、レポート、ゼミ、ストレッチ、ダンス習得、反復練習、練習場確保、食事、体調管理、アルバイト…指折りしたら、すぐに全ての指が折れるほど、やることがいっぱいある。「濃い時間を過ごしています」と植野さんが照れながら話した。

 練習に入る前まで自己管理をし、練習中は前回以上の演技をするよう心がける。チームの和を尊び、チームの力を高めていく。

 練習後は食欲と戦う。部活動をしていない女子学生を自由でいいなと羨ましく思うときがある。泣きたい夜もあるが、全員でチアダンスをやり遂げたとき、観衆の感激した顔を見たとき、体の底から突き上げる達成感・充実感がたまらない。

 一人ではなく、チームだからこそ味わえる大きな喜び。一人はみんなのために。みんなは一人のために。ガーネット・ガールズの一員であることを誇りに思う。

入部のきっかけ

 「入学が決まって中大のHPを見ていたら、ソングリーディング部が目にとまって。入学後に入ったファミリーレストランで、部の先輩たちがミーティングをしていました。私から声をかけて“興味あります、練習を見学したいです”これで決まりました」(深瀬さん)
「私は白門祭を高校時代に見に来て、きらきらしている、いいなあ。そう思って初心者でしたが、入りました」(岡崎さん)
高校時代からの経験者が多く、中央大学附属高校にもソングリーディング部がある。同校の指導も村田コーチだ。中大附高は全日本チアダンス選手権関東予選大会(11月30日、幕張メッセ)POM部門・高校生スモール編成を1位通過し、12月7日の全国大会への出場を決めた。同ラージ編成も予選を突破し、全国大会出場へコマを進めた。

中央大学ソングリーディング部
中村磨生子 商学部2年(部長)
岡崎 愛実 文学部2年(副部長)
熊澤 莉紗子 法学部2年(副部長)
羽村 紫織 総合政策学部4年(元部長)
上杉 有香 法学部2年(音響)
植野 紗稀 経済学部2年(体育館)
大嶋 夏実 法学部2年(会計)
大槻 麻莉子 法学部2年(衣装)
小糸 美鈴 総合政策学部2年(Cスク)
國分 星香 文学部2年(体育館)
野村 碧 商学部2年(衣装)
日野 紗和 経済学部2年(ビデオ)
深瀬 希 法学部2年(Cスク)
吉野 由花 商学部2年(保健)
碓井 美雅子 経済学部1年
岡山 葉奈佳 経済学部1年
小林 礼佳 総合政策学部1年
簡 莉那 商学部1年
椎木 萌絵 法学部1年
篠原 里佳子 経済学部1年
新澤 美沙 総合政策学部1年
高須賀 杏子 総合政策学部1年
場勝 あゆみ 商学部1年
細川 夏実 総合政策学部1年
前島 郁美 商学部1年
山崎 彩奈 文学部1年
渡邊 桂子 経済学部1年