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トップ>HAKUMON Chuo【2013年夏号】>【コラム「きのうきょう」】ボンヌ・ジュルネ―よい1日を―

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コラム「きのうきょう」

ボンヌ・ジュルネ―よい1日を―

学生記者 山口莉奈(経済学部3年)

 半年近く前から、急激に外国人のお客様の来店が増えた。何かのイベントかと思っていたのだが、最近になってようやく、この「イベント」の正体がわかった。

 私がアルバイトとして働いているコーヒーショップは、本店がアメリカにあり、日本以外にも広く海外展開をしている。海外旅行に行って、大きな都市の大通りやショッピングモールに行けば、見覚えのあるロゴマークに出会うことだろう。

 海外からのお客様にとって、当店の味は母国のテイスト。国は違っても異国の料理ではなく、自分の国や街にいるときと同じように感じて来店してくださるのだ。店の近くにはリーズナブルなホテルが多く、交通アクセスもよく、外国人のお客様が集まりやすい。

 ニュースで慰安婦問題が取り上げられたときも、国会議員が大挙して出向いた靖国参拝をめぐって、世界から冷たい視線を向けられていたときも、店には変わらずに外国人客が多かった。

 中国人のお客様は家族連れが多く、イギリス人のお客様の多くはカップルだ。そんな日常を目にすると、ニュースで飛び交う言葉や政治家の難しそうな顔は、まるで別世界のことのように感じてしまう。

 春休み、私はフランスへ行った。ホテルと航空券だけが確保された自由なパック、旅行中は自分たちのプランで行動した。7日間行程の最終日に電車が来ないというアクシデントに見舞われた。20㎏を超えるキャリーバッグを担いで走り回っていたら、ある女性がそっと押してくれた。

 フランスのほとんどの駅にはエレベーターもエスカレーターもない。空港へのアクセスはたった1本の電車とバスを乗り継ぐ。周りの人たちは、私と同じように重そうな旅行用かばんを持ち、慣れない長い道を歩いていた。

 その女性は自分のかばんを持ちながらも、私のキャリーバッグを長い階段を上っている間中、ずっと支えてくれた。

 女性がフランスの人なのか分からないが、その出来事は私のフランス旅行の思い出を素敵なものにしてくれた。

 アベノミクス効果で円安になった。国内で見れば景気回復に向けた光であり、輸入業者から見れば苦しい状況だ。旅行者には、日本という国を文化面・生活面で伝える絶好の機会ではないだろうか。

 政治や経済といった堅苦しい頭上のやり取りよりも、もっと身近に感じられること、誰にでもきっと訪れる日常を大事にしたい。

 いつもの味を求めて、どのお客様も笑顔でお見えになる。私たちは全員が英語を流暢に話せるわけではないけれど、来店時を上回る笑顔でお帰りくださるよう心がけている。