東日本学生相撲選手権大会は6月2日、東京・両国国技館で行われ、中央大学の内山翔太選手(法2、参段=埼玉栄高)が個人戦で準優勝した。決勝では日大4年の工藤豪人選手(四段)に寄り切られたが、自身の個人戦最高成績となり、12月の全日本相撲選手権大会・天皇杯へ弾みをつけた。中大は団体予選を5位で通過し、優秀8大学による団体決勝トーナメントに進んだ。初戦で日大に敗れベスト8に終わった。優勝は日大だった(参加22校)。
内山選手は「くじ運がよかった」と謙遜するが、個人戦参加選手は120人。運だけでは勝ち上がることはできない。181cm、135kgの体がよく動く。大相撲の元千代大海関(現佐ノ山親方)が好きといい、取り口も見習っている。前へ出て突いて押す、速い相撲が身上だ。
1回戦から白星を4つ重ねて入った個人優秀選手8人による決勝トーナメント。2年生は彼を含めて2人、上位段位者、上級生の猛者ばかり。中大からはたった1人の8強入りだ。
土俵下の控え、汗を拭いたバスタオルを四隅をそろえてたたむ。土俵では仕切り前に両手を大きく広げて円を描く。いつものリズムで落ち着いて強豪に向かっていった。
準々決勝で滝田選手(日体大大将、4年参段)を突き落とし。準決勝でも一ノ瀬選手(日体大、4年四段)を突き落とした。
中大相撲部員の精鋭たち。前列左から、吉本、安田、福井。後列左から、内山、寺田、中嶋、矢後(写真撮影=中大学生課・山口弘和氏)
決勝は午後6時42分から。朝9時に始まった大会を締めくくる大一番だ。吊り屋根が神々しく見える、屋根の下の水引幕もまばゆい。東の花道に中大相撲関係者が勢ぞろいした。熱気を帯びている。2階席向正面では本城亜利架団長率いる中大応援リーダーが「う・ち・や・ま」と連呼する。中大応援席が応援の小旗を振り続ける。
勝負は残念ながら劣勢のまま青房下に寄り切られた。館内に君が代が流れる閉会式、首には銀メダルがあった。「まさかここまで来るとは思わなかった。上出来です」
決勝で敗れたことで課題がはっきり見えてきた。指導者の目には「準々決勝から“引き”が目立った」と映った。自らも分かっていて「足がそろう、安定していない。四股、すり足をしっかりやります」と前を向く。「立ち会い、鋭く。動きが止まらないように、速い相撲で」。方向性を再確認した。
相撲部のけいこは朝7時に始まる。1時間ほどマシンを使った筋力トレーニングで部位の増強、体力向上を目指す。ベンチプレスを140kgまで挙げられるようになった(一般成人男子の平均は 40kg)。授業が終わったあとは夜8時ごろまで約3時間、土俵で汗を流す。「つらいことばかりですが、勝つとつらいことを忘れてしまう、うれしさがあります」
白星をつかみ、表彰式のあの快感を再び味わいたい。閉会式で見て分かった金メダルの輝き。今度は自分が手にすると念じながら、きょうも四股を踏み、すり足を繰り返す。
サッカー少年
相撲との出会いは小学校4年で出場した地元のわんぱく相撲。「熱心にやっていたわけではなかったけれど」。素質を見出されて本格的に取り組んだ。「サッカーも好きで中学3年まで続けていました」。ポジションを尋ねるとほくそ笑んで「トップ下、やっていました」
自らを重ね合わせたのか。日本代表の本田圭佑(CSKAモスクワ)、香川真司(マンチェスターU)ら海外で活躍するスター選手、中大OBでは中村憲剛選手(川崎フロンターレ)の顔が浮かぶチームの要である。
中大相撲部メンバー紹介
| | | | cm | kg |
先鋒 | 安田鯨(いなさ) | 商3 | 金足農高 | 177 | 135 |
二陣 | 内山翔太 | 法2 | 埼玉栄高 | 181 | 135 |
中堅 | 中嶋祥悟 | 法3 | 弘前実高 | 185 | 150 |
副将 | 寺田貴博 | 法3 | 東洋大牛久高 | 178 | 130 |
大将 | 吉本雄斗 | 法2 | 埼玉栄高 | 178 | 115 |
(交代選手) |
| 福井慎太郎 | 商2 | 箕島高 | 180 | 108 |
| 矢後太則 | 法1 | 埼玉栄高 | 186 | 165 |
マス席で応援 ちょっとイイ気分
~中大学生課企画「体連応援ツアー」始まる~
学生部事務室学生課では、体育連盟部会応援ツアーの第1弾として「中大相撲部応援ツアー」を企画した。ツアーに参加した学生・留学生約20人が6月2日、東日本学生相撲選手権大会が行われた両国国技館を訪れた。
学生記者 佐武祥子(法学部4年)
国技館は知っていても、行ったことはないという学生がほとんどだ。「普段見ることのない」場所に案内してくれるというのだから関心は高まり、土俵に近いマス席が用意されたとあっては自然に顔がほころぶ。
参加したきっかけは「友達に誘われて」(大西誓さん=総合政策学部2年)「掲示を見て」(田洋さん=留学生)。相撲については「テレビで少し見るくらいで国技館にも行ったことがなかった。この機会にと思って。実際にナマで見るのは初めて」という理工学部・笠間雄一朗さんの言葉が参加者を代表している。
当初は館内を興味深げに見回していたが、次第に相撲の面白さに惹かれていった。「立ち合いまでの緊張感がいい」(大西さん)「プロと違い団体戦もあるので楽しい」(笠間さん)、「レスリングみたい」(田さん)
マス席で、ちょっといい気分
2階席には各校の大応援団が陣取っている。「頑張れ中央!」「頑張れ内山!」「頑張れ!吉本」。本城亜利架団長は、はかま姿だ。元気のいい中大応援団に呼応して、マス席・応援ツアー席からの声援も大きくなる。大学のプライドをかけた学生相撲ならではの雰囲気だ。
小さい体の選手が、大きな体の選手に立ち向かう。取り組む前は客席にも緊張感が走る。小さくとも全力で、全身で前へ向かっていく姿が相撲の特徴だろう。国技として相撲があるゆえんは、ここにあるのかもしれない、と私(学生記者)は思う。
「楽しかった、満足した」(王昭婭さん=留学生)。入口近くにあった名物の「やぐら」や「のぼり」が、帰りにはより身近に感じられたそうだ。
学生課では、今後も体育連盟部会応援ツアーを開催する予定。C-PLUSや学生課前の掲示をチェックして参加したら、スポーツの新たな一面、面白さがきっと見つかる。
参加者の声
左がラムさん、右が王婭さん
- ベトナム・ハノイからやってきた留学生、ラムさん
- 「体が小さい人でも勝てた。大きい人ばかり勝つのではないことを知りました。マワシの色が違っていて楽しい」(中大は白、日大は黒、日体大はグレーだった)
- 中国・成都からの留学生、王婭さん
- 「中国でも相撲のテレビ放送、あります。見たことある。ナマは初めてだった。応援席も面白い。
ダイコン持っているのはどこのチーム?」(東京農大です)
- 応援のCマーク入り小旗
-
学生課の三輪課長、根本副課長、山口さんらが中大のCマーク入り応援小旗をツアー参加者に手渡していた。
その背中に声がかかる。「中大OBです、1本貸してください」。館内では、応援席以外でも中大選手を声援する
人が多かった。