トップ>HAKUMON Chuo【2013年春号】>【V選手座談会】「目標 文武両道日本一」~中大準硬式野球部 全日本大学連覇~
~中大準硬式野球部 全日本大学連覇~
勝った、勝った、また勝った。中央大学体育連盟所属で全日本大学選手権を最近5年間に4度制した強豪チームがある。1919年(大正8年)創部、伝統の準硬式野球部だ。中大OBの池田浩二監督(1990年卒業)が胸を張っていう。「正直言いましてマイナー競技ですが、選手は血のにじむような努力を続けてまいりました。文武両道の方針のもと、自覚を持って好きな野球と勉学に打ち込んでいます。社会に出たときに誰からも信頼され、愛される人間になろうとしています」。選手たちも「野球に限らず、日常生活すべてにおいて日本一を目指しています」と呼応する。以下は選手3人が語るキャンパスライフである。
準硬式野球部“優勝を祝う会”。前列左は前硬式野球部監督・高橋善正氏、右は準硬・池田浩二監督(写真提供=中大OB清水康弘氏)
ベンチ前で円陣を組む
野球と勉学に打ち込む日々を語ってくれた左から高野選手、小河原選手、勝又選手
勝又駿主将(捕手、文学部4年=掛川西高)「授業のある日は授業を優先し、朝に全体練習をします。私たちは日野市の南平寮にいて5時45分に玄関前に集合。体操をしてから部所有の車に用具を積み、自分たちはキャンパス内のグラウンドまでランニングで行きます。9時ごろには練習を終えてグラウンドを整備。授業の第一限開始の9時20分には教室にいます。3時から全体練習を行う日もありますが、ここでも授業優先です」
――授業のない日は
勝又主将「朝7時に起床、8時50分に寮の玄関前集合。9時にグラウンドを目指してランニング。13時まで全体練習をします。そのあとに自主練習。体育連盟の500人以上が入寮している南平寮には、トレーニングセンターがあり、そこで各自が鍛えています。夕食、ミーティングなどがあって寝るのは10時半ごろです」
小河原謙哉投手(文3=甲府南高)「自主性と考える力が求められています。夕食後に各自が素振りやシャドーピッチングをし、ベンチプレスで鍛えています。足りないものは自分で補強する。誰が頑張っているか、すぐに分かります。練習していないのも分かってしまいますが…(苦笑)。1~2年生は別のトレーニングジムで体力測定をしています。これを週2日。昨年12月から始まりました」
高野桂外野手(商4=前橋商)「授業があってもなくてもグラブの手入れをします。内野・外野を守るのでグラブは4つ持っています。汚れをしっかり取り、磨き残しのないように。全体練習がなくてもグラブに触れれば野球への思いがいろいろと出てきます」
――イチロー選手もグラブの手入れは人任せにはせず、自分ですることでグラブがピンチを救ってくれると言っています
高野選手「そうです、その通りです。グラブが助けてくれます」
――授業では
勝又主将「きちんと出席してノートを取り、自分たちはここまで単位を1つも落とさずに来ています。先輩たちを見習っています。地方で試合があり、授業に出られないときは友だちがあとでノートを貸してくれます。配布プリントも預かってくれます。ありがたいです」
――それは日ごろ授業にちゃんと出ているからでしょう
勝又主将(恥ずかしそうに)「ハイ、そうですね」
高野選手「大学の勉強にやや抵抗がありましたが、授業に出ていると先生の言っていることが分かります。面白いと思う。教室では友だちができて、寮生とはまた違った話をします。楽しいです」
――高校時代は硬式野球部だったと思います。大学入学後、準硬式に入ったのは
小河原投手「県立の弱いチームでしたので大学では強いチームでプレーしてみたかった。それならと父の友人が日本一の中大準硬式を紹介してくれました」
勝又主将「小学生のころは『将来はプロ野球選手になりたい』なんて言っていましたが、自分自身の将来について考えるようになり、野球をメーンにはできない。中大準硬式なら野球と勉強を両立できると部発行のパンフレットに書いてあったので、ここだなと」
高野選手「高校の教育実習にやってきた卒業生が、中大準硬式なら人間的に成長できると勧めてくれて。池田監督からいま厳しい指導を受けています。お箸の持ち方から礼儀まで。そして物事の本質を見極める手法など。ためになります」
――お世話になった人に礼状を書いていると聞きました
勝又主将「監督さんがいつも言います。『はがき50円でお礼ができる。こんなに素晴らしいものはない』と。お礼状を出しますと、また応援に来てくださったり、声をかけてくださったり。励みになります。中央大学の学員の方で佐々木吉夫さんという方がおられまして、九州の福岡で有名なめんたいこ(福さ屋)の社長さんです。おいしいめんたいこをたくさんいただくので、みんなでお礼状を書きます」(照れ笑い)
柳川重規部長
「社会に出ますと、自分の頑張りはなかなか伝わりにくいものですが、頑張り続けていれば誰かがきっと見ていてくれます。目指す3連覇も一つひとつの努力の積み重ねです」
佐々木吉夫・中大準硬式野球部を応援する会会長
「部の主眼は選手を立派な社会人に育てること。勉強し、努力し、礼儀正しく。日々の努力の積み重ねがやっぱり大事だと思います」
野々下純生・部OB会会長
「あらゆる面で、部はいまが最盛期だと思います」
中大準硬式野球部の選手たちは、高校時代に硬式野球部の出身者であり、甲子園大会出場経験者がほとんどである。プロ野球選手は子どものころからの夢ではあるが、社会人野球に進んでもプレーできるのは30歳くらいまで。大卒後65歳まで働くため、社会に出る前に在学中からきちんと準備をしておきたい。
授業に野球に正面から取り組み、礼儀作法や社会常識を学ぶ。「僕ら学生は当たり前のことを当たり前にやります」とは卒業した鈴木雄也主将(千葉・安房高)の言葉だ。
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オープン戦取材の新聞記者が感心していた。寒さが残る3月のグラウンドで、選手は来客用のパイプ椅子を丁寧に拭き、携帯用カイロを添えたのを目の当たりにしたからだ。準硬式は監督自らが言うようにマイナー競技かもしれないが、中大準硬式野球部は観戦した人を虜にする。ファンはこぞって「準硬は模範学生だ」と称賛する。ことし8月に行われる全日本大学選手権の開催地は東京・八王子市周辺。はつらつとした選手の姿をこの目で見てみよう。
■全国加盟大学 265大学
■競技説明
準硬式の使用球は、表面が軟式と同じゴム製で中身は硬式と同じコルク。
昔は変則的な弾み方をすると言われたが、今では硬式球と変わらない。
■昨年成績
■入部条件(セレクション)
高校時代、都道府県大会(秋、春、夏)ベスト4以上のレギュラー選手。学業成績と人物評価が加わる。「ベスト4以上というのは、ほかに例がないと思います」(池田監督)。
進路
写真提供=準硬式野球部
今の就職難に影響されることがなく、部の方針である礼儀正しく「自主性と考える力」を身につけた準硬式選手(学生)は社会で高く評価されている。今春は三井住友海上火災、富士通、パナソニック、日本中央競馬会、パレスホテル、日東電工CSシステム、住電日立ケーブル、北茨城消防局(消防士)、THR(住宅流通業)、キング(アパレル)などへ就職した。池田監督が合宿中に選手と模擬面接をする。入社希望を明確に、礼儀作法をしっかり、社会人となる心構えなどを毎年教示している。