大学に入学された皆さんに次の三つの力を身につけてほしいと私はこれまで何度も言ってきました。

三つの力：

• 集中力：一つのことを長時間にわたって考えることのできる集中力。
• 忍耐力：好機や転機、また飛躍が訪れるまで待つことができる忍耐力。
• 創造力：行き詰ったときに新たな突破口を創意工夫できる創造力。

　今の時代は真剣に生きようとすれば、ほとんどの場合に行き詰ります。行き詰らないと自分に出会えない。行き詰ってこそ自分という人間に出会える。そして、そこから、どうやって新しい自分を創りだしていくかがその人の創意工夫になる。誤解のないように言っているつもりですが、行き詰ることがまずは大切だと思います。精一杯努力していないと行き詰ることはありませんから、精一杯努力して行き詰る。ここが出発点です。そこから、さて、どう進むか。人と相談するのもいい、書物や映画などにヒントや助けを求めるのもいい、そうしたもがきの中から新しい活路を見出し一歩踏みだしていく。そして、また行き詰る。このような行き詰りと活路の見出しの繰り返しのなかに、その人ならではの生きた個性が育っていく。したがって、行き詰って今の自分を知り、創意工夫をして新しい自分に出会う。この繰り返しが皆さんの一人ひとりのかけがえのない人格を創りあげていく。このような苦労を重ねて創り上げた人材こそ今の社会が求めているものだと思います。

　大学に入学されたばかりの皆さんにとって、まずは自分の専攻分野の学問と懸命に格闘することが大切です。先人が残してくれた人類の知的遺産である学問は皆さんを鍛え上げてくれる格好の教材であります。また、学問だけでなく、大学で出会う様々な人たちや日常の経験も皆さんに自分を考える機会を与えてくれる素晴らしい教材であると思います。自分と出会うきっかけに満ちているのが大学時代だと思います。大学は皆さんを応援します。がんばってください。