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トップ>HAKUMON Chuo【2013年春号】>【入学おめでとう】専門力と発信力

Hakumonちゅうおう一覧

入学おめでとう

専門力と発信力

石井 洋一(いしい・よういち)/理工学部長

石井 洋一

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。

 理工学部に入学した皆さんの多くは、科学技術に夢を感じて理工学の道を選んだことと思います。そして、まだ漠然とではあるかもしれませんが、科学技術に関わる仕事を目指している人が多いことでしょう。では、将来社会へ出るときに、一人前の技術者・科学者として、あるいは理工学を学んだ者として、必要なのは理工学の専門力だけでよいのでしょうか。いえ、決してそうではありません。

 理工学は専門性の高い分野ですから、専門力が重要であることは事実です。本学としても専門力の育成には大いに力を入れているところです。しかし、実社会で活躍するには、発想力やリーダーシップなど、力強い「人間力」も必要になります。皆さんは、大学生活の中でそれらも養っていかなければなりません。私は、特に皆さんには、自分の考えをまとめ、それを他の人たちに理解させるという意味での「発信力」を身に付けることに注意を払っていただきたいと思っています。日本語、外国語を問わず、言葉を大切にし、正しく情報を伝え、聴く人を納得させる力、それは理工学でも、いや理工学だからこそ、必要なのです。

 理工学なのに語学力がいるのか、と感じる人もいるかもしれません。しかし、科学技術の世界は、未知なる真理を明らかにし、あるいは新しい技術を開発することを競う、競争の世界です。明らかにした成果は、世界に向けて発信して、初めて成果として認められます。発信されない成果は、無いのと同じなのです。また、科学技術は大きな影響力を持つがゆえに、科学技術の力を使う者は、その力の影響や限界を社会に対して説明する責任を負っています。原子力の利用に関する社会的議論については皆さんもご存じと思いますが、どんな科学技術も、このような議論を避けて通ることはできません。自分の成果を発信し、また説明責任を果たすこと無しには、理工学は成り立たないのです。

 これからの理工学部での生活の中で、専門力だけに目を向けるのではなく、発信力を身につけることにも注意を払ってください。語学の学習はもちろんですが、良い文章をたくさん読み、また言葉を大切に使う習慣をつけてください。そうすることが、たくましい専門力を支えることになるのですから。