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トップ>HAKUMON Chuo【2013年早春号】>【ニュース&中大ニュース】インターナショナルウィーク 第4回テーマ「国連」 シンポジウム

Hakumonちゅうおう一覧

ニュース&中大ニュース

インターナショナルウィーク

第4回テーマ「国連」

シンポジウム

世界の最前線で働く女性3人

国際労働機関(ILO)駐日事務所
駐日代表
上岡 恵子氏

日本紛争予防センター(JCCP)
事務局長
瀬谷 ルミ子氏

国連大学サステイナビリティと平和研究所(UNU-ISP)
大学院プログラム・プログラム・アシスタント
冨名腰 あん氏

国際連合(本部・ニューヨーク)で働く3人の女性が招かれた。国際労働機関(ILO)駐日事務所駐日代表の上岡恵子氏、日本紛争予防センター(JCCP)事務局長の瀬谷ルミ子氏、国連大学サステイナビリティと平和研究所(UNU-ISP)大学院プログラム・プログラム・アシスタントの冨名腰あん氏という豪華な顔ぶれ。自身のキャリア、国連勤務のきっかけ、国際的な舞台で働くやりがい、苦労話など経験者しか分からない貴重な話がいっぱいあった(昨年12月8日、中大多摩キャンパス)

努力でつかむ働き場

 3人の自己紹介から始まり、都留康子・中大法学部教授がコーディネーターを務めるパネルディスカッション方式へ。3人に共通するのは、自分は国際社会で戦うアドバンテージを生まれながらに持っていたわけではない、という点だった。

 上岡氏は、経済的な事情から大学進学を一時断念。会社勤務のかたわら映画翻訳の専門学校へ。その後米国の大学に入り、卒業後は米国企業に勤めたが、超多忙な勤務を心配したクライアントに国連の知人を紹介された。彼女の経歴がこの縁で出会った国連人事担当の目に止まり、国連に勤めることになった。

 こうした経緯を上岡氏は「予定なしでことが進んだ」と表現した。国連職員募集に応募して、自らを売り込み、採用となる従来制度以外にも国連に勤務する道はある。

 キャリアを積んでいったのが瀬谷氏だ。中大総合政策学部出身で、『世界が尊敬する日本人25人』(ニューズウィーク誌=別表参考)に選ばれた。しかし実家に帰れば、家族は彼女以外パスポートを持っていない。国際社会で働くきっかけは、周囲への劣等感だったという。

 「私には強みがない」。小さいころ、このままではいけないと考えていたそうだ。人と違うことをしなければ…。中学生から学び始める英語に目を付けた。

 人とは違う何かを身に付けた私は強くなれる。需要はあるが、供給が足りない。隙間のような産業を探した。「ここでなら必要としてもらえる」。新しい仕事に就くとき、この考え方が基準となった。

 語学への興味が現在のキャリアに結びついたのは冨名腰氏も同様だ。フィリピン人と日本人のハーフながら、日本で学んだため、周囲が思うほど国際環境に恵まれていたわけではない。中大法学部に入学後、『やる気応援奨学金』(別稿参考)を受けて、インドとオーストリアに留学し、海外へ目を向けた。在学中は、友人の多くが司法試験を目指すなか、自らの将来に不安も感じたが、長期留学を選んだ。3年生までに全単位を取得できる見通しは立たないものの、長期留学は何物にも代えがたい体験ができそうだ。

 「リスクをいつ取るか。学生という立場をいかしたほうがいいですよ」とアドバイスしてくれた。

 国連で働くには何が必要なのか。冨名腰氏が教えてくれた。語学はもちろん。判断力や柔軟性、そして何より整理整頓能力が必要だという。外国人ははっきりモノをいう。例えば書類を渡した、もらっていない、いや渡した…トラブル回避に向けて、必要な物を常に取り出せる環境を整えておく。

 瀬谷氏は、「できないことは引き受けない」「時には突き放す」と語った。支援を求める人は、既に一度打ちのめされている。安請け合いをして、達成できなかったとき、相手は深い絶望を感じてしまう。彼らを自立させるための支援であって、すべてに手を貸すことは彼らのためにならない。悪魔と罵られても、このこと―できないことは引き受けない、時には突き放す―を忘れてはいけない。

 黙っていては昇進できないのが国連勤務という。上岡氏の言葉には重みがある。空席ポストの情報を集め、希望ポストなら自らを積極的に売り込み、地位を勝ち取る。一つの役職に300人の応募は当たり前。「国連は、外から見ているよりずっと厳しい場所です。なぜ自分は国連組織で働いているのか、明確なビジョンを持たなくてはいけません」

 シンポジウム終盤は質疑応答だ。「現地で一番必要とされること」や「現在ニーズはあるが手が足りないのはどこか」など多くの質問が飛び交った。3人が大きく反応したのは、国連職員採用条件に「3年以上の社会実務経験が求められる」という点だ。学生には壁である。大卒後すぐには国連職員になれない。

 「経験はお金を払ってでも積むもの」と述べる瀬谷氏に続き、冨名腰氏も自分ができることは何か、と考える人が必要とされていると説いた。「即戦力を求めている」と答えた上岡氏は、大学の勉強だけではリクアイアメント(必要条件)には応えられない。そう述べ、自身の経験も踏まえて続けた。インターン先で顔を売っておくなど、国連への就職にはさまざまな方法がある。就業の可能性を述べて、質問者を励ました。

 他大学の学生や高校生も参加した今シンポジウムは、終了予定時刻を越えても質問が尽きないほど活気に満ち、大盛況のなか幕を閉じた。大学生では、なかなか直接に話を聞けないような内容ばかり。終了後、希望者による懇親会でも熱は冷めることがなかった。3人の女性は多くの聴衆に囲まれ、矢継ぎ早の質問に耳を傾けながら、貴重な助言を与えてくれた。グローバル化が進み、必要性と重要性がますます高まる国連という舞台に、日本から中大から1人でも多くの人が、飛び込むきっかけとなればよいと思った。

世界が尊敬する日本人25人
「ニューズウイーク日本版」(2011年5月18日号)
1、渡辺謙(俳優)
2、川村明(弁護士)
3、上田和夫(バーテンダー)
4、高橋絵里奈(バレリーナ)
5、間野博行(医学者)
6、石塚秀哉(オーナーソムリエ)
7、濃野平(闘牛士)
8、宮本茂(ゲームクリエーター)
9、磯部清次(空手家)
10、清滝信宏(経済学者)
11、上原ひろみ(ジャズピアニスト)
12、原節子(女優)
13、鈴木修(スズキ会長)
14、クルム伊達公子(テニス選手)
15、神田瀧夢(俳優、司会者)
16、坂口亮(VFXクリエーター)
17、カズオ・イシグロ(作家)
18、田中伸男(IEA事務局長)
19、平敷安常(映像カメラマン)
20、妹島和世・西沢立衛(建築家ユニット「SANAA」)
21、河野富弘(ヘッドピース・アーティスト)
22、森山大道(写真家)
23、瀬谷ルミ子(日本紛争予防センター事務局長)
24、宗像俊則(人工知能研究者)
25、村上隆(アーティスト)
※敬称略


法学部やる気応援奨学金
やる気応援奨学金は、中央大学法学部の奨学金制度。
奨学金は、活動内容によって5つに分類される。

一般部門 あらゆる活動テーマを対象とし、最高950,000円
海外語学研修部門 海外での語学研修を中心とした活動(インターンシップ、フィールドワーク、ボランティア活動等も含む)を行う学生を対象とし、最高285,000円)
長期海外研修部門 長期にわたり海外で勉学等に本格的に取り組みたい学生を対象とし、最高1,425,000円
短期海外研修部門 法学部設置のインターンシップ関係科目を履修し、海外でインターンシップを行う学生を対象とし、最高250,000円
法曹・公務員・研究者部門 司法試験や公務員試験の合格、あるいは大学院や専門職大学院への進学を目指している学生を対象とし、300,000円

※実際に経験した先輩の体験談などは、法学部棟(6号館)2階のリソースセンターにて公開している。
(中央大学HP法学部の奨学金制度)


(学生記者 矢嶋 万莉子=法学部2年)