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トップ>HAKUMON Chuo【2013年早春号】>【中大アイスホッケー インカレ連覇】選手座談会「連覇は自分との戦い」

Hakumonちゅうおう一覧

中大アイスホッケー インカレ連覇

選手座談会

「連覇は自分との戦い」

中央大学スケート部アイスホッケー部門が2シーズン連続で学生日本一を決める日本学生氷上競技選手権を制した(1月9日決勝、2-1関西大、北海道苫小牧市)。創部初の栄冠のあとはすぐに連覇達成だ。全国から30校が参加したインカレ連覇で2007~2009年の東洋大V3に迫る勢い。中大は07年の3位から3位、2位、4位、2位と上位に付け、この連覇で東洋大、早大、明大に並ぶトップ4と呼ばれる強豪の仲間入りを果たした。五輪や世界選手権を戦う元全日本監督の星野好男氏は「中大はもっともっと強くなります」とさらなる期待を寄せる。「戦いに勝つは易し、勝ちを守るは難し」と言ったのはプロ野球野村克也元監督だ。プロが実感する連覇の難しさ、勝因を中大アイスホッケー選手3人に語ってもらった。

戦力ダウンと言われて

――学生スポーツは毎年選手が入れ替わります。連覇は大変でしたね

 鈴木博敦主将(総合政策4年、DF=北海道釧路市・私立武修館高)

 「連覇出来るとは思っていませんでした。去年の4年生は上手な人ばかりで3人がプロ入りしました。新チームは周囲から『戦力ダウン必至』と言われていて、秋のリーグ戦5位。うちが負けると相手がすごい喜んで。前回のインカレ優勝で他校の打倒目標にされました。このままじゃいけないとインカレに懸ける気持ちが強くなって。氷上と陸上で走り込みを中心とした厳しい練習を毎日してきました。リンク(相模原市銀河アリーナ)の隣りは野球場で、そこに階段があります。階段上りがつらくて」

左から、辻、鈴木、室谷各選手

鈴木主将

練習で泣く

辻選手

 辻寛太選手(法3年、FW=駒大苫小牧高)

 「練習はどんなにつらくても構わない。試合で負けるほうがつらい。負けて悔しい思いをするなら、練習で泣くまでやろうと。V2出来ないチームは本当に強くないと言われていて、最後に笑う気持ちでいました。インカレ決勝では得点出来てチームに貢献出来たかなとホッとしました」


室谷選手

 室谷徹選手(総合政策3年、FW=水戸短大付高)

 「昨シーズンの初優勝では4年生が泣いていました。僕はアシストだけでしたが、先輩を見ていたら感動してしまって、僕らも続こうと。練習はつらいときもありました。でも一人じゃなくて、みんなとやっていますから、つらい練習も出来るんです。『足上がってないぞ』なんて言われますが、チーム全員で取り組み、盛り上げていきました」

寮生活でチーム向上

――アイスホッケーはスピードがあって、ゴールまでのプレーもアッという間です。アイコンタクトが出来ているんですね

鈴木選手「寮生活のおかげですかね。ひと部屋に各学年1人ずつ3~4人が共同生活をしています。合宿も含めて年中ずっと一緒ですから、何を考えているかは分かります。試合前のミーティングも少しの時間で済みます」

辻選手「寮ではホッケーの話はしません。テレビを見たり、くだらない話ばかりしていますが、食事から寝るまで一緒にいるのがいいんでしょうね」

――食事はどなたかが作ってくれるのですか

室谷選手「自炊しています。僕は野菜炒めに肉を入れたり、いろんなモノに焼き肉のタレをかけていますが、キャプテンは料理がうまいです」

鈴木選手「(照れながら)野菜炒めは楽です。時間のあるときは、しょうが焼きもします。スーパーに買い出しへ。そこで聞いたり、親に電話したり、自分でレシピを調べたり。野菜を多く採るようにバランスのことも考えています。ご飯を部屋で炊き、みんなで部屋で食べています。洗濯も自分たちでしています」

辻選手「調理場はコンロが4つ。男が4人入るときつくてダメです。鍋にするときは各部屋から持ち寄って大勢でやります」 

室谷選手「朝起きるのも自己管理です。授業や自主練習に合わせて、みんなそれぞれに動いています」

――仮に手を抜くと

鈴木選手「全部自分に跳ね返ってきます。授業で単位が取れなかったら大変ですから。勉強、練習と生活すべてが自分との戦いです」

さあ3連覇へ

――来シーズンには3連覇の期待がかかります。他大学のマークもさらに厳しくなります。次期キャプテンの辻選手、勝算はいかがですか

辻選手「学年が上がるにつれて、経験やプレーで積み重ねてきたものがあります。みんな確実にレベルアップしていますので、目の前のプレーをしっかりこなす。その積み重ねだと思います」

――辻選手はきついマークに遭っていましたね

辻選手「いや、ありません」

鈴木選手「マーク、きつかったですよ。それをかいくぐってプレーしていました」

室谷選手「インカレ3連覇、秋のリーグ戦も優勝したい」

辻選手「連覇は途絶えさせません。また一から始めて、代々キャプテンがやってきたことを積み重ねていきます」

――中大黄金時代の到来ですね

辻、室谷選手「そうなるよう頑張ります」(鈴木選手は卒業)

★中大から3選手が昨季プロ・アジアリーグ入り

FW 水内直人選手
(駒大苫小牧高―中大―東北フリーブレイズ=八戸市)
FW 重野駿佑選手
(釧路江南高―中大―日本製紙クレインズ=釧路)
FW 鈴木雄大選手
(北海高―中大―栃木日光アイスバックス)


■インカレ成績■インカレ中大成績
優勝中大2回戦9-0 東海大
2位関大準々決勝5―0 関西学院大
3位早大準決勝2-1 明大
4位明大決 勝2-1 関大
中大は日本アイスホッケー界の新しい芽

中大の実力は日本アイスホッケー界の第一人者、星野好男氏(62)=プリンスホテル=をうならせた。
インカレをリンクサイドで観ていた星野氏に中大の印象を聞いた。

 「中央は強くなりました。トップ4と呼ばれる中央、明治、早稲田、東洋はどこも勝ちたいと思っています。そのなかでインカレ連覇は立派です。これからますます強くなるでしょうね。

 プレーは基本に忠実で全員が目標に向かってひたむきに走る。運動量が落ちない。スター選手はいませんが、個人技に頼らない分、チームにまとまりがある。江守監督が目指すホッケーを展開しています。大学スポーツはその日になってみないと分からないところがありますが、中央には安定感がありました。

 昨シーズンのインカレ初優勝まで力がありながら壁を破れないでいました。初優勝で壁を破り自信がつきました。選手は1回勝つと勝つ味を知るんです。決勝の相手は関大。専用リンクをつくり強化にさらに力を入れている。中央、大丈夫かなと思っていたら勝つ味を知った自信あるプレーが随所に出ていました。低迷している日本のアイスホッケー界に新しい芽が出てきました」

星野好男氏(ほしの・よしお)
1950年11月2日生まれ、栃木県出身。日光高(現日光明峰高)―明大―国土計画。五輪出場3回、世界選手権出場14回。日本を代表するFWだった。現役引退後は全日本監督、プロ野球西武ライオンズオーナー兼球社長などを歴任した。
中スポアイスホッケー担当、小山記者の勝因分析
~反則プレー少ない中大~

 中大の特徴の一つして、コーチの提案するゲームプランを選手が徹底して守るスタイルがある。緻密に構成されたシステムを守ることで、毎回安定したゲーム展開ができる。

 相手の出方や戦術によって変更を行う場合も、コーチの指示を選手が素直に受け入れて実践できる。一見当たり前のように思えるが、アイスホッケーのように感情が前面に出るスポーツでは、これが意外と難しい。また、選手とコーチ・監督との間の強い信頼関係も必要だ。

 反則の少なさも他大学と比べて顕著である。アイスホッケーでは、反則するとペナルティーとして数分間その選手が試合に出られなくなる。チームにとって不利な状況になるだけでなく、雰囲気も悪くなってしまう。中大の反則数は相手よりも少ないことが多く、フェアなプレーができるチームであるといえる。

インカレ3連覇に向けて「オー!」

 1、2年生も主力として活躍しているため、今後の伸びしろは十分だ。2年生のGK小野田拓人選手(法)は、昨年行われた全日本選手権で、大学生ながらアジアリーグトップのチームにわずか1失点、63セーブという驚異的な記録を出して話題となった。

 1年生では古橋真来(法)、中島彰吾(総政)がルーマニアで行われた世界U20選手権(20歳以下)でベストプレーヤーに選出され、日本チームの1部昇格に大きく貢献した。

 そんな彼らの活躍をぜひ試合会場で見てほしい。きっと私のように、その魅力から抜け出せなくなるはずだ。

小山麻由子記者(こやま・まゆこ)
1993年1月31日生まれ、東京都出身。都立日野台高を卒業後、現在は中央大学文学部に在籍。中高ともに吹奏楽部に所属していたが、大学からは新しいことをやりたいと思い立ち「中大スポーツ」新聞部に入部。スケート部、卓球部、相撲部、応援部を担当する。ちなみに本人は運動が大嫌いであり、スポーツはやるものではなく見るものだと認識している。