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トップ>HAKUMON Chuo【2013年早春号】>【4選手に直撃インタビュー】休息から生まれる集中力 射撃部全日本女子学生選手権 総合団体優勝

Hakumonちゅうおう一覧

4選手に直撃インタビュー

優勝カップなどを持って笑顔の4人、前列左から諏訪、小泉。後列左から清水、進藤4選手

休息から生まれる集中力

射撃部全日本女子学生選手権 総合団体優勝

50m先にある標的を実弾で撃ち抜く(10点は直径1cm)。今やってみたい五輪スポーツNO.1に射撃が選ばれた。肉体と精神とをうまくコントロールする競技は「自分が強くなりますよ」と清水綾乃主務(商学部4年=岐阜・済美高)は言う。自分を強くするには射撃がいいというわけだ。2月2日の祝賀会で5年ぶり9度目の総合団体優勝を成し遂げた清水主務、小泉茉優選手(商2=埼玉・栄北高)、進藤美樹選手(商3=埼玉・栄北高)、諏訪晶子選手(商1=埼玉・国際学院高)のヴィクトリー・カルテットに祝優勝の直撃インタビュー。射撃部は創部80周年を迎え、優勝を機にまた新たな歴史を刻む。聞き手は学生記者の矢嶋万莉子(法学部2)、佐武祥子(法3)。(祝賀会会場=東京・銀座のレストランSUN―MI高松・銀座七丁目店)

面白いね射撃って

■女子成績

▽全日本学生女子選手権(昨年10月、埼玉・長瀞)女子団体総合
(1) 中央大学 2855点
(2) 明治大学 2847点
(3)日本大学 2840点

▽大学通算優勝回数(女子)
(1)中大 9度
(2)明大 6度
(2)日大 6度
(4)関大 2度

▽中大の優勝年(1988年第1回大会以降)
(1) 1988年
(2) 1991年
(3) 1993年
(4) 1994年
(5) 1996年
(6) 2001年
(7) 2003年
(8) 2007年
(9) 2012年

 動画サイト『ユーチューブ』で元バレーボール五輪代表、大林素子さんが進行役を務める「LETS PLAY射撃に挑戦」(コカ・コーラ社)が話題を呼んでいる。今やってみたい五輪スポーツとして2位のサッカーにダブルスコアで射撃が一番手に挙がった。そこで大林さんが中央大学に体験取材。清水主務がゲスト出演した。最初はうまくいかない大林さんだったが、指導を受け、当たるようになると「射撃って面白い」と大喜びだ。

 注目が集まってきたなか、優勝した4選手の話が興味深い。インタビューは2人ずつ。前半は清水、小泉両選手から。 

――射撃を始めたきっかけを教えてください

 清水綾乃さん(以下清水選手)「中学2年生の冬。母に連れられて行った講演会が始まりでした。ライフル射撃日本代表で、『メンタル・マネジメント―勝つことの秘訣―』の日本語訳をした藤井優さんの講演です。たまたま家の近くに練習場があり、気がつくと週3日練習場へ。周囲にうまく乗せられた感じがあります」(笑)

 小泉茉優さん(以下小泉選手)「私は高校に入学して射撃と出会いました。家のルールで3年間運動部に所属すると決められ、母からは『全国大会に連れて行って』と言われまして。同じ学校に姉が通っていて、姉から射撃部が強いよと聞いていて、それなら全国に行けるのではと入部しました」 

――清水さんは2012年春季号で表紙に登場。記事では集中力の持続を目標にしていました。その後は?

清水選手「試合中、意識的に休むようにしました。時には30分ほど。だいぶ変わってきましたね。調子が悪くなってから戻そうとするのはすごく大変なので、いいとき少し休んでその状態をキープすることが大切だと、この1年で思うようになりました。射撃は集中力が大切と言いますが、試合中に『集中しなければ…』と思う時点で、集中できていない証拠です。そのことに気がつかないと危険です」

小泉選手「集中は、しようとしてできるものでもないですね。気がついたら集中していて、気がついたら試合が終わっていた、といった感じで」

清水選手 「集中する世界をどれだけ作れるかだと思います。瞬間的な集中を繰り返して、的を狙っています」

――小泉さん、昨年と比べて

小泉選手 「点数が取れるようになったのが大きいです。勝たなければならないと思って試合に臨みました。清水さんは個人優勝を何度もしてきましたが、団体優勝はまだだったので、この4名で優勝したいと」 

――女子選手は試合既定の4人ぎりぎり。1人でも欠ければ出場できない背水の陣でしたが、プレッシャーはありましたか

学生記者・矢嶋の質問に答える、左から小泉、清水両選手

小泉選手 「このメンバーだから勝てたと思います。人数が少ないから不利だとか考えたこともなかったですね」

清水選手 「むしろ人数が少なかったので、常に一緒に行動することでチームワークが鍛えられました」

――射撃は団体戦も個人技という印象があります。チームワークとは

清水選手 「確かに試合は一人ひとりですが、射撃はメンタルが大切なので、つながりという面でもチームワークは大切でした。点数でつながるというより、勝たせたいという思いでチームが心一つになっていました」

小泉選手 「やっぱり仲間がいる、いないで、だいぶ違います」

清水選手「今年は人数が少なかったので、合宿でもみんな同じ部屋だったり、プライベートでも一緒に食事に行ったり。本当に四六時中一緒でしたね」

小泉選手 「その分、下級生は“見られているな”と思ってましたが」(笑)

清水選手「上もだからね」(笑) 

――清水さんが卒業します

清水選手 「学校に来ないとか、もう会えないからとか、遠くなったとは思いませんね」

小泉選手 「卒業しても先輩・仲間ですし、部にいても敵というときがあります。卒業後も大会で会うでしょうし。でも2年と4年の差は大きいですね」

清水選手 「この1年が楽しかったので、もう1年同じメンバーでやりたいという思いはあります」

小泉選手 「残りますか?」

清水選手 「残らないよ!(笑)でも、私が4年生で他のみんなも今の立場だからこそ楽しかったという気もします。私が3年生だったらまた違った結果になったでしょうね」 

――オリンピックについては

清水選手 「若い世代がそれぞれの場所で活躍していけば、もっと近くなると思います」

小泉選手 「せめてNHKが放送してくれたら」

清水選手 「最近は射撃も知名度が上がってきて、『射撃って何?』と聞かれることが少なくなりました」

小泉選手 「代わりに『蛇口を撃つの?』とか聞かれることもありますが」(笑)

清水選手 「あぁアレね(笑)」(元日特番ウルトラマンDASH!で、清水選手が市販のエアライフルを撃って蛇口を閉める企画に挑戦した)

小泉選手 「競技開始は大学生からでも遅いということは全くないので、興味を持ったらぜひ1度来ていただきたいです」

清水選手 「私たちは大歓迎です!」 

――今後の目標や課題を

清水選手 「課題は足りないところを探していくことですね。課題は簡単には見つかりませんが、だからこそ射撃はやめられません」

小泉選手 「そこが射撃の魅力だと思います。応援してくれている人に報いたいと思います」

今やってみたい五輪スポーツNO.1

 インタビュー後半は進藤美樹さん(以下進藤選手)と諏訪晶子さん(以下諏訪選手)。 

――同じようにお聞きします。射撃を始めたきっかけを

諏訪選手 「高校に入って、部活見学時に姉や母から『射撃部に行って』と言われ、行ってみたのがきっかけです。競技は高校から始めました」

進藤選手 「私も高校の部活から射撃を始めました」 

――ともに埼玉県出身ですね

諏訪選手 「射撃部は全国的に少ないのですが、埼玉県は多い方ですね。高校の射撃部は一つの部で30~50人いますね」

――2人は高校時代から全国大会で個人、団体と活躍してきました。高校と大学で射撃部の違いを

写真中央が諏訪選手、右が進藤・次期主将、左は学生記者・佐武

進藤選手 「高校では週7回みっちり練習していました。大学では月曜から土曜まで4回の練習と日曜の合同練習です。自己管理が大切になってきます」

諏訪選手 「私は1年なので上級生の空気入れや練習の準備、自分の練習のために毎日射撃場に来ています。だいたい夕方の時間に2~3時間、実射練習をしている人が多いようです」

進藤選手 「トレーニングの内容は実射(実弾射撃)、筋トレ、走り込みです。ただ実射は1発いくらとお金がかかるのでエアーライフルも入れながら集中して取り組んでいます」

――射撃時はどんな感じですか

進藤選手 「周りが見えない、的の一点以外は黒く見えます」

諏訪選手「私は的以外が白く見えます!」

進藤選手 「音も感じないし、夏は暑いのもあまり感じません。休憩時に飲み物を口にした時に暑いなと思います。5~6kgのライフルも重いですが」 

――個人練習が主体のようですね

諏訪選手 「私は準備で1日中射撃場にいることが多いので皆さんと会います。先輩が気にかけてくれて、『1年生一人で大変でしょ』と」

進藤選手 「練習後に残らなくてもいいのに、残って話していることも多いです」 

諏訪選手 「帰りに食事に行ったり、夏にはバーべキューをしたこともあります」 

――先輩からの言葉で印象深かったものは

諏訪選手 「私は清水さんから『1年生は体力で大変だろうけど、自分の射撃だけを考えて。上(の学年の人)がチームの射撃を考えるから』と言ってもらって、気持ちが楽になりました」

進藤選手 「私は練習しても点が伸びないときに清水さんから『点が出ないのを誰も責めないし、進藤が頑張っているのはみんなが知っているよ。そんなに自分を追い詰めなくていい』と言ってくれたことです。また、後輩からの『頑張りましょう』の一言で、もっと頑張ろうと思いました」 

――試合前にすることがありますか

進藤選手 「ジャンプです。何回かして重心を落としいつもと同じようにします」

諏訪選手 「私は調子を整えて、進藤さんから聞いたジャンプをしています」 

――試合前の気持ちは

進藤選手 「不安と緊張です。ただ、射撃部は女子が4人しかいないので自分がやらなきゃ、自分しかいないと思っています」

諏訪選手 「不安と緊張もありますけど、早く始めて結果を出したいという気持ちもあります。(女子部員が4人だけだからこそ)自分が活躍できる場だと思い、できると信じています」 

――今後の目標を

進藤選手 「次期主将として全日本女子射撃選手権大会の連覇と一人ひとりが成長できる部にしていきたいです」

諏訪選手 「個人の成績を上げていき部の力になることです。先輩方に気にかけてもらい1年生から全日本優勝できたので、来季は自分もこのチームに貢献してチームを勝たせたいです」

強さを伝授して
日本ライフル射撃協会総務委員長で、慶応大学OBの松丸喜一郎氏が「ぜひ中大の強さを伝授して欲しい」と祝辞で述べた。「中央も慶応も、日の丸のために頑張って欲しい」と激励した。


射撃競技
競技に使用する銃は、火薬を使用するSB(スモールボアライフル)と圧縮空気を利用するAR(エアーライフル)の2種類。銃ごとに距離や弾数、姿勢が異なる。距離はSB50m、AR10m。弾数は女子の場合、50m種目は60発、10m種目は40発。姿勢は3姿勢あり、立った状態で銃を構える立射、片膝をつき銃を構える膝射、うつ伏せの状態で銃を構える伏射となる。それぞれアルファベットの頭文字を取りS、K、Pと呼ばれる。ARは立射のみ。


無言の手本、清水主務
射撃部主将・今井太陽(たろう)さん
(法学部4年=千葉・茂原高)

「この1年間、清水は無言の手本として、ずっとみんなを引っ張ってきてくれた。2年生の小泉と3年の進藤は、どれだけ協力してやっていけるかという大切な部分をよくこなしてくれた。1年の諏訪は、新人としての仕事も大変だっただろうがよく頑張ってくれた。射撃は特別な集中はいらないが、調子を崩さずに試合を運んでいくのが重要な競技。これからもこの調子で頑張ってほしい」


一級品の中央大学射撃場
多摩キャンパス開設と同時に第二体育館内に設置されたエアーライフル射撃場は、2室に計12射座を置き、跳弾防止・遮音のために木材内装射屋に電動ワイヤー式標的交換機を設備した日本ライフル射撃協会公認射撃場である。陸上競技場脇にあるスモールボアライフル射撃場は創立125周年記念事業の一環として建設された。第3種公認規格射撃場として公式戦が行える。電子標識システムの採用により、紙標識で必要だった紙交換の負担を軽減した。