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トップ>HAKUMON Chuo【2013年早春号】>【誌上プレゼンテーション】「きょうから始めるエコライフ」マイカップで地球を救おう~中央大学商学部・日高ゼミナール~

Hakumonちゅうおう一覧

誌上プレゼンテーション

「きょうから始めるエコライフ」

マイカップで地球を救おう~中央大学商学部・日高ゼミナール~

中大商学部日高ゼミが日本最大級の環境展示会「エコプロダクツ2012」(主催・産業環境管理協会、東京ビッグサイト、12月13~15日)で堂々たるプレゼンテーションを行った。“学生ならではの発想”で社会に役立つものを考えた。発表したテーマは「マイカップ(タンブラー)で地球を救おう」。大型スーパーマーケットでは1日に紙コップ800~1000個が使用され、その後ゴミ処分されている。日高ゼミはここに目を付けた。以下は誌上プレゼン。身近でできるエコの始まりだ。

みんな持っている?
タンブラー

 中大と駒沢大生約300人にアンケート調査した結果、大学生の約30%がタンブラーを持っていた。購入動機は「デザインです」という声が多かった。デザインはシンプルなものから柄モノまで豊富で幅広い。商品企画の対象を「流行に敏感でデザイン性の高いものに魅力を感じる」と回答する大学生にとって、充実したデザインは重要なポイントだ。

 エコをデザイン重視で考える学生の視点から私たちは「マイカップ運動」を提案した。企画は流通大手のイオンとの協力で行われた。大学では「マイカップ型自動販売機」設置を呼び掛ける。

 大学の学食に設置したいが、従来型では学食にある給茶器用のコップが使われるだろう。コップ洗いを含めた高圧洗浄にはかなりの費用と洗剤が必要だという。そこで給茶器のシステムを組み込んだマイカップ型自動販売機を設置することにより、カップ持参者には給茶器用コップが不要となりコスト削減になる。大学側にもメリットをもたらす。

「エコを楽しもう」とマイカップ運動班。左から茂木、石川、村田、道家、鈴木

モデルは企業にあった

 モデルは通信大手のNTTコムウェア(本社・東京)にあった。利用者である社員に好評で、自販機利用率は導入前より約2割増えて、紙コップ使用量が減ったという。

利用希望は7割

 学生対象のアンケート調査で「キャンパス内にマイカップ型自販機があったら使用しますか」との質問に約70%が「利用したい」と回答した。設置後、エコ効果が表れる可能性は高いと言えそうだ。

 マイカップを持ち歩かない人には、関心を集めるために付加価値を考えた。アンケートで分かったのは「値引き」や「ドリンクサービス券」といった何らかのプラスアルファを求めていることだ。

 「値引き」と「種類豊富なサイズ設定」の2つを提案。割引により缶やペットボトルで買うよりも“お得感”をアピール。同時にゴミを出さない=エコという考え方もアピール。購入するドリンク量を選択できれば、飲み残しは減るはずだ。ここにもエコがある。

 マイカップ型自販機の設置には、衛生面の問題を解決しなければならないが、2004年の規制緩和により許可が下りやすいことが分かった。

紙コップは使用後ゴミ扱い

 イオンではフードコートで使われている紙コップに注目した。聞き取り調査を行ったところ、イオン品川シーサイド店では1日に約800~1000個の紙コップのゴミが出ている。このような状況で、マイカップ運動を実施したら、かなりの紙コップを削減できるのではないか。イオンで行うマイカップ運動とは、自宅などからフードコートにタンブラーや水筒などのマイカップを持っていけば、各種サービスを受けられる。

 イオンモール与野店(埼玉県)で実施されたと知り、当時の活動について調査した。残念ながら、エコ効果はあまり得られず、フードコートに長居する人が増えたという。

 なぜ、与野店では効果が少なかったのか。私たちは議論し、やはり何らかの付加価値をつけることが重要だと結論づけた。ラーメンの味たまご無料、ポテトや飲み物のサイズアップ、WAONカードの2ポイント・プレゼントなど。

 実際には、タンブラーなどの飲み物入れを持参した人は、その場で外れなしの「ガラポン」を回せるプレゼントを考案。「ガラポン」には①紙を使用しない=エコ活動を推進する上での矛盾を防ぐ②イオンの利用者層は家族連れが大変多いことから、子どもの興味をひく。「ガラポン」一つでより多くの人にエコ活動を楽しんでもらいたい。

 イオン側にはコスト削減と集客増期待のメリットをもたらす。マイカップ運動は既に大型コーヒーチェーンで実施されているが、量販店という店舗形態の違った新しい視点から進めることで、新鮮味があり、客層の多さからより関心が高くなると思われる。

 今後、ある1店舗で実験的に展開、社内で試験的に導入することで、経済効果や注目度を把握していきたい。

楽しもう、エコ活動

 大学やイオンという大勢が集まる場所でエコ運動・マイカップ運動を展開すれば、ペットボトルなど飲料容器の排出を大幅に削減できると考えている。エコといえば何かを我慢すると思われがちだが、エコ活動を興味のあることや流行するものに関連付ければ、「エコ活動は、義務ではなく楽しむもの」という考えが生まれてくる。私たちが最も伝えたいことは、エコを楽しむこと―Let' s enjoy ECO!!―

左から日高先生、浦野、井上勇、有本氏(中央)、中川、田中、廣武

プレゼンを終えて
当初忘れていた学生発想

 「イオンへ学生の力を貸してくれないか?」昨年4月上旬、株式会社イオントップバリュの有本幸泰氏からエコプロダクツ出展の話を持ちかけられた。エコプロダクツとは2012年12月13日から15日にかけて東京ビッグサイトで開催された環境祭典のことだ。

 毎年700社以上の企業によって、自社のエネルギー技術や環境経営への取り組みを発表する大規模なイベントである。イオンと日高ゼミとは、これまでにもフェアトレード・チョコレートの発売などで協力関係にあったことから、今回のイベントでも、商学部の学生ならではのエコ活動にビジネス要素を取り入れたアイデアを求められた。

 活動開始当初、マイカップ班は、「エコ」に関わるアイテムは何か、イオンで実施可能な施策は何か、と現実的に考えていた。環境保護意識が高い欧州各国の事例などを参考にしていた。

 たどり着いたのは「エコバッグ専用レジ」の導入だ。実例もあり、エコバッグの普及に勢いをつけられると考えた。しかし、昨年7月にイオン側に提案したところ、「この取り組みは小売店で既に行われている。もっと学生ならではの発想はできないか」と意外にシビアな指摘を受けた。

 企業への提案であることを意識し過ぎて、「学生らしい発想」という点が欠けていた。夏休みのゼミ合宿で、企画全てを白紙に戻した。水泡に帰するのは大きな試練だったが、指摘を受けたことで改めて学生らしいスタンスで取り組むことができた。

 「学生に流行っているものは」「買い物をするとき重視するのは」…、学生であることを意識して、ミーティングを繰り返した。議論を重ねていくなかで、「タンブラーって結構持っていると思わない?」というアイデアが引き金となった。

 エコ活動に対し「義務」や「面倒臭い」といった苦手意識を持つ人が多いが、それでは継続は難しい。消費者が楽しめる要素を盛り込み、意識を変えるための工夫を凝らした。

 信憑性の高い企画内容にするため、約300人の学生を対象にしたアンケート調査や電話による聞き取り調査を実施。マイカップ運動で先行する大阪大学に活動記録書を郵送してもらうなど情報・データを徹底的に洗い出した。

 ゼミの時間だけでは足りず、後期に入ると週に3回サブゼミの時間を設けた。「外部から指摘のしようがない企画にするぞ」と張り詰めた気持ちでいた。サークルの代表者、予備校通いなど多忙な毎日を送るメンバーだが、集まったときは真剣に熱く議論を繰り返した。

 6人(メンバー表参考=下記)で取り組んだこのプロジェクトは、個々の優れたパフォーマンスを最大限に生かすことができたからこその成果物だといえる。仕事量の多さから時に徹夜をし、胃が痛くなることもあるなか、このメンバーでプロジェクトを完遂させたときの達成感は忘れられない。

企業が関心を示してくれたよ
半年間の疲れが吹っ飛んだ

 「マイカップ運動」のほか私たちは3班に分かれて、「マイタッパー運動および屋上庭園運動」「東北の被災地域における復興支援プロジェクト」を提案した。イベントでのプレゼンテーションを目指し発表に至るまでの取り組み方を紹介したい。

マイタッパー運動、 屋上庭園運動班

 マイタッパー運動とは、総菜を買うときに使うプラスチック容器の代わりに自宅からタッパーを持ってくることで、エコ活動の実践・推進を目指す。

 タッパーを弁当箱代わりにして、自分好みの弁当を作る。マイタッパーを消費者が持参すれば値引きされ、購入する総菜の分量を加減できれば無駄を省ける。普及に弾みが付くはずだ。

 一方、屋上庭園とは建物最上階に公園のようなスペースを設け、木や花の力を得てCO2を削減させる仕組み。従来の屋上庭園の効用に加え、コミュニケーションの場として活用できないかと考えた。環境にいいからと言っても1回きりの行動では意味がない。楽しみながらエコ活動を行えば持続可能となり、環境にいい街づくりにも貢献できる。

 都内の屋上庭園マップを作成した。私たちは昨年10月以降、昼休みや放課後に集まりサブゼミをする毎日。夜9時を回ることもあり、時には空腹に耐えた。

 本当に社会的意義があるのか? 提案内容に実現可能性はあるのか?

 もっといいビジネスプランはないのだろうか?

 頭の中はゼミのことでいっぱいになった。一大イベント、エコプロに向けて自分たちの研究テーマをその都度、修正を加えながら仕上げていった。

 私たちのアイデアを消費者に聞くためイオン店舗に赴いた。根本店次長にご協力いただいた。その結果、「マイタッパー運動」は衛生面の解決さえできれば試験的導入は可能との前向きな見解。「屋上庭園化」には店舗屋上が駐車場として使用されているため実現は困難ではないか、と疑問符が付いた。

 他店舗においても、東京の店舗では限られた敷地面積に駐車場を確保しなければならず、屋上を駐車場に使用しているところが多かった。自分たちの調査不足が招いた結果だった。

 インタビュー後に、店頭でアンケート調査を行い、60人から回答を得た。

 アンケートの結果から、私たちの2つの提案に対する消費者の本音を垣間見ることができた。「屋上庭園化」については、好意的な意見が多く、実現すれば利用者は確実にいることが分かったが、根本氏が指摘したように根本的な課題が見えた。

 「マイタッパー運動」には、「持参時にかさばる」「面倒くさい」「洗い物が増える」「衛生面が心配」という意見が寄せられた。これらの問題をどうクリアするか。課題が浮かび上がった。

 かさばらない折りたたみできるタッパー、洗浄機の導入、あるいは、たとえこれらの問題があったとしても持参したくなるような付加価値の提供など、このアンケート調査をもとに生み出された考察は後にプレゼンを作成する上で大いに役立った。

東北の被災地域における
復興支援プロジェクト班

左から石曽根、曽根、川勝

 2011年3月11日東日本大震災で、大きな被害を受けた東北に目を向けて、同地域における持続可能なシステムを提案した。現地調査が欠かせないと思い、昨年10月初旬に岩手県陸前高田市、宮城県気仙沼市を訪れた。

 寄せ集めただけで山積みになった瓦礫。街の中心に、あるはずのない船舶。土台だけとなった家屋…凄まじい現状に言葉を失った。

 イオンが取り組む仮設住宅への出張販売を見聞できた。私たちの想像よりも和気あいあいとしていて、逆に私たちの方が勇気づけられた。

 現地調査を通じ、東北の人々の力強さを感じ、復興に対する強い思いが伝わってきた。

 そこでは活性化集団「粋」代表の鈴木さんにピースジャム(Peace Jam)という団体、商品を紹介してもらった。ジャムは被災地の母親たちが作り、収益の一部を収入にしている。このような商品をソーシャルプロダクトという。このやり方で復興を目指す被災地の商品として、日本中に広めようと考えた。

エコプロ当日

 プレゼンテーションは東京ビッグサイトの会場入口付近、非常に目立つ場所で行った。多くの人たちが詰め掛けてくださり、席が足りず、立っている方がいた。聴衆はほとんどがビジネスマンや年配の方。日ごろ接点がない人たちだ。何度も練習してきたのに、ステージに立つと緊張感でいっぱいになった。

 8カ月という長丁場で取り組んだ活動成果を発表できる場に立ったのである。ともに頑張ってきた仲間の存在は大きかった。他班の応援も非常に心強かった。そのことを思い出すと緊張が解けていき、気がつけば聴衆に訴えかけるように話していた。

 私たちのプレゼンが「甘い考えだ」として、相手にされない不安があった。終了後には多くの企業の方々からお褒めの言葉をいただき、アンケート結果の詳細やさらなる説明も求められた。興味を持っていただいたのだ。関心度は私たちの期待以上だった。

 イオン関係者や一般参加の方々に、私たちの取り組みを認識していただけたことが、大きな達成感につながった。

エコプロを終えて

 「持続可能なエコ活動の推進」を目指して、日々私たちは取り組んでいる。

 エコだから節電してくださいね、と強要すれば独りよがりに終わってしまう。「我慢」ではなく、「楽しみやお得感」などがあってこそ続けられるのではないだろうか。

 どうすれば人々の関心を惹き、実践してもらえるか。半年間、試行錯誤を重ねた。

 大学の枠を超えて、エコプロダクツという大舞台で成果を発表できた達成感は言葉では言い表せない。緊張でひきつっていた顔も、最後はキラキラした表情に変わった。終わって安堵している者もいた。全員の自信にあふれた笑顔からは、これだけで終わらせないという共通の思いがあった。今後は、企画実現に向けて活動を前進させていかなければならない。

 最後に、エコプロダクツに向けて協力して頂いた有本さん、中坊部長、根本店次長、多くのイオン関係者、鈴木さんに心から感謝の言葉を贈ります。

有本幸泰氏
デイモンワールドワイド ブランドコミュニケーションチームマネージャー

目を見張る学生の行動力

 「日高ゼミの皆さんには、トップバリュフェアトレードチョコの発売においても多大なるご協力を頂きました。後輩の皆さんとも活動を始めて感じたのは『社会人』となった時を強く意識していることでした。私も仕事柄、いろいろな大学へ行きますが、特に中央大学生には、学生時代から社会へ向けての視野がしっかりとしており、単なる『学生の活動』ではなく、企業としても頼もしく感じていました。当然、日高先生のご指導もあると思いますが、学生自身が自分たちで考え行動し、その行動力も目を見張るものがありました。今の学生活動に足りないものは『継続』だと感じていましたが、日高ゼミにはしっかりとした『DNA』が残っていることが素晴らしいと感動しています」

マイカップ運動班
名前 学部・学年 出身高校 出身地
鈴木 里奈 商学部 3年 相模大野高等学校 東京
茂木 泰宏 商学部 3年 私立 足立学園高等学校 東京
村田 祐樹 商学部 3年 東京都立 日野台高等学校 東京
道家 葵 商学部 3年 神奈川県立 大和高等学校 神奈川
石川 光 商学部 3年 私立 獨協高等学校 東京
坂川 直美 商学部 3年 私立 中央大学杉並高等学校 埼玉
屋上庭園・マイタッパー班
名前 学部・学年 出身高校 出身地
田中 彩奈恵 商学部 3年 東京都立 千早高等学校 東京
浦野 周平 商学部 3年 私立 武南高等学校 埼玉
井上 勇樹 商学部 3年 埼玉県立 浦和西高等学校 埼玉
中川 真理 商学部 3年 私立 神奈川学園高等学校 神奈川
廣武 那津美 商学部 3年 私立 中央大学付属高等学校 東京
復興支援班
名前 学部・学年 出身高校 出身地
岡田 雄太 商学部 3年 宮城県立 仙台第二高等学校 宮城
曽根 健貴 商学部 3年 私立 徳島文理高等学校 徳島
川勝 康平 商学部 3年 私立 日本大学付属習志野高等学校 千葉
櫻木 崇光 商学部 3年 私立 中央大学杉並高等学校 東京
石曽根 知里 商学部 3年 千葉県立 佐倉高等学校 千葉
井上 優 商学部 3年 私立 中央大学付属高等学校 東京