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トップ>HAKUMON Chuo【2013年早春号】>【卒業の日に――贈る言葉】魅力ある人材へ

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卒業の日に――贈る言葉

魅力ある人材へ

河西 良治(かさい・りょうじ)/文学部長

河西 良治

 現代の世界はいたるところで混乱や苦難が発生しています。私たちはもちろんこのような混迷の時代を乗り切っていかなければなりませんが、日本の社会に伝統的にある事なかれ主義でも、また、硬直化したイデオロギーでも対応ができません。これだという既成の解法もなく、事が起こるごとに、その都度、柔軟に多角度から事態を読み取り解決していくことが要請される時代なのではないかと思います。世間によく言う「解なき時代」に私たちは遭遇しています。言いかえれば、行き詰ること、息詰まることが当然な時代だということもできるかもしれません。

 このような時代に大学を卒業する皆さんはこれまでの時代にない苦労も多いかと思いますが、きっと、皆さんにはこの混迷する世の中を立て直す使命があるのではないかと思います。一人ひとりの使命にはもちろんそれぞれ違った役割があると思いますが、大学時代に培った専門分野の研究と幅広く深い教養を活かしてそれぞれの道を力強く歩んでほしいと思います。

 さて、皆さんの身につけた「教養」というのはどんなものでしょうか。ある国語辞典の定義によると、「教養」とは、「学問、幅広い知識、精神の修養などを通して得られる創造的活力や心の豊かさ、物事に対する理解力」とあります。私はこの定義はとてもいい定義だと思います。人間として魅力ある人格、創造的に工夫して生きていく活力、新しい事態を理解する洞察力こそが「教養」です。もし皆さんの「教養」がまだ既成の知識の集積に過ぎないものだったら、これから社会に出て、それを魅力ある人格、創造的活力につながるものに育て上げてほしいと心から願っています。社会に出てからの多種多様な経験を通して、また、人類の知的遺産である古典との更なる出会いを通して、一生学び続け、自分を更に磨きあげていってほしいと念願しています。そのような皆さんを混迷する今の時代は求めていると思います。Good luck!