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トップ>Hakumonちゅうおう【2012年春季号】>【入学おめでとう】知の伝統と個人の独創

Hakumonちゅうおう一覧

入学おめでとう

知の伝統と個人の独創

河西 良治(かさい・りょうじ)/文学部長

河西 良治

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。

 現代の世界はいたるところで混乱や苦難が発生しています。このような時代に大学に入学する皆さんには、きっと、この混迷する世の中を立て直す使命があるのではないかと思います。皆さん一人ひとりの使命にはそれぞれ違った役割分担があると思いますが、大学時代は、専門分野の研究と幅広く深い教養の修得を通してしっかり自分の能力を鍛え上げてほしいと思います。その時の心構えとして参考にしてほしい言葉に、『論語』の「学びて思わざれば則ち罔し(くらし)、思いて学ばざれば則ち殆し(あやうし)」があります。先生や書物から学ぶだけで自分で考えなければ本物の知識は身につかない、また、自分で考えるだけで先生や書物から学ばなければ独断ばかりで危険だ、という意味ですが、先人から学ぶことと自分で考えることの両方のバランスをとって学問をすることが大切であることを指摘した言葉です。いわば、知の伝統と個人の独創の総合を説いたものです。このような誠実な姿勢で、大学4年間、本物の学問を身につけてほしいと願っています。

 皆さんに目指してほしい、もう少し具体的な人物像があります。それは、皆さんも最近耳にすることが多い言葉だと思いますが、いま世界が求めている「グローバル人材」という人物像であります。しかし、具体的な内容を知らない人も多いようです。政府関係の資料でその能力要素をみると、①語学力・コミュニケーション力、②主体性・客観性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感、③異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティ、などがあげられています。このなかには、皆さんが大学時代に身につけることを目指すことのできる能力がいくつもあると思います。これらは、地球世界の一員として生きていく時代の皆さんに必要な基本的な能力であると思います。

 大学時代は、自分と向き合い自分を知るための時間が持てる人生の大切な時期です。また、学問だけでなく、サークル活動なども含めて、多様な人たちや知識、事物に出会える時期でもあります。ぜひ、この時期に、皆さんがそれぞれ専攻する学問を通して研鑽を積むことによって人間や社会を読み解く高度な知恵を身につけて、世界の一員として役に立つ人材になる努力をしてほしいと願っています。素晴らしい大学時代になることを祈っております。私たち教職員も皆さんを応援します。