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トップ>Hakumonちゅうおう【2012年春季号】>【入学おめでとう】専門力と発信力

Hakumonちゅうおう一覧

入学おめでとう

専門力と発信力

石井 洋一(いしい・よういち)/理工学部長

石井 洋一

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。理工学部の新しい仲間として、皆さんを心から歓迎いたします。

 理工学部に入学した皆さんの多くは、科学技術に夢を抱いて理工学の世界を目指してきたことと思います。そして、理工学の専門分野の深い知識を学び、技術者・科学者としての道を歩もうとしている人が多いことと思います。では、理工学の専門力さえ身につければ、一人前の技術者・科学者になれるのでしょうか。

 理工学は専門性の高い分野ですから、確かに専門力が重要であることは事実です。しかし、実社会で理工学の技術者、科学者として活躍するには、それだけでは不十分です。発想力やリーダーシップなど、強い「人間力」も不可欠であり、大学生活の中でそれらも養っていかなければなりません。私は、特に皆さんには、自分の考えをまとめ、それを他の人たちに理解させるという意味での「情報発信力」を身に付けることに注意を払っていただきたいと思っています。日本語、外国語を問わず、言葉を大切にし、正しく情報を伝え、聴く人を納得させる力、それは理工学でも、いや理工学だからこそ、必要なのです。

 理工学なのに語学力がいるのか、と感じる人もいるかもしれません。しかし、科学技術の世界は、未知なる真理を明らかにし、あるいは新しい技術を開発することを競う、競争の世界です。明らかにした成果は、世界に向けて発信して、初めて成果として認められます。発信されない成果は、無いのと同じなのです。また、科学技術は大きな影響力を持つがゆえに、科学技術の力を使う者は、その力の影響や限界を社会に対して説明する責任を負っています。自分の成果を発信し、また説明責任を果たすこと無しには、理工学は成り立ちません。

 これからの理工学部での生活の中で、専門力だけに目を向けるのではなく、発信力を身につけることにも努力してください。語学の学習はもちろんですが、良い文章をたくさん読み、また言葉を大切に使う習慣をつけてください。そうすることが、たくましい専門力を身に付けることになるのですから。