「英語を使いこなす人は格好いい」―。入学当初、こう想い定めた伊藤さんは大学4年間で英語力を磨き、その「格好よさ」を身につけた。しかも海外留学は一切しないで、大学キャンパス内で抱いた目標を実現させた。
中央大学には指定校推薦で入学した。それもあって「1年生の春、明確な目標がなくて、受験せずに大学に入ったというコンプレックスがすごくあった」という。そこで悩み、考え「大学4年間で何らかの形で結果を残してやろう」と思い至った。
「何らかの形」を英語に定めたのは、英語スピーキングの授業で、上手く英語が話せない悔しさがあったからだった。「あのときの衝撃と負けず嫌い精神で4年間頑張れた自分は、結構単純な人間なんだなぁ」と言って伊藤さんは笑う。
小さい頃からずっと野球に打ち込んできた。大学に入ってからもすぐに軟式野球の強豪「多摩川野球会」に入会。週1回の練習と週末の試合を4年間続けた。
「英語も上手くなりたいけど、野球も頑張りたい。これを両立させるには、語学留学は選択できなかった。別に海外留学だけが手段じゃない。日本にいてできる勉強方法はたくさんあると思った」
そこで伊藤さんは、中央大学で学んでいる留学生に声をかけて、一緒にランチを食べることに挑んだ。会話は半分が英語で、半分が日本語。文字通りgive & takeでお互いの語学力を磨く。この方法は、英会話を上達させる手段としては非常にシンプルではあるが、他人にいきなり話しかけてご飯に誘うには、それなりに勇気と度胸が必要だ。
「最初は、初対面の留学生に声をかけるのは恥ずかしかった」という伊藤さんは、「留学生は日本語を学びに来ているから、こっちが英語を学びたいオーラが全開だとうまくいかない」ことに気付き、まずは日本語で話しかけるようにした。そのうちに「恥をかくことが英会話上達の最大のコツだ」と得心した。
よく一緒にランチを食べるようになったのは10人。そのなかで特に仲良くなったのは英国人の2人。2人ともすでに帰国してしまったが、メールのやりとりは今でもしている。
半年に1回受け続けたTOEICの成績は、入学時の330点から830点までのびた。TOEICを受けたのは「モチベーション維持のためには目に見える結果が必要だった」からで、「試験前に過去問を解いたくらいで、知らず知らずのうちに成績が上がっていた。国内にいてもここまでできる。そう証明できてよかった」と伊藤さんは胸を張る。
4月からは建設重機を販売する大手企業で働く。「世界で勝負したい」と伊藤さんは、大学生活で磨いてきた英語力を武器に世界のグラウンドへ踏み出す。
(中野)