新しい人生に向けて期待と不安が交差していることと思います。そこで考えていただきたいのは、皆さんの新たな生活の場となる社会環境はどのようなものかということです。キーワードを挙げれば、「リーマンショック以来の不況」、「少子高齢化社会」、「若年層のワーキングプア」、これらに関連して蔓延する「閉塞感」、こういったところだろうと思います。さらに新興国経済の成長とそれに伴う新興国市場のプレゼンスの増大も重要です。しかし実際に新たな組織に属してみて眼前に直面する可能性が高く、もっとも悩ましいのは、解決策が頭では分かっているのに、慣性として動かない組織や文化によって解決が阻まれているという状況だろうと思います。
この現実に立ち向かうためには、これまで培った知識、能力、創造力など全般的な力だけでなく、偏りのない視点、若さによるエネルギー、そして強い気概が必要です。なぜなら、組織や文化における慣性は、たいてい「そこそこの成果」を蓄積しているため、解決策に対しては、「正統なもの」として当然視する人は少数となり、異端として白眼視する人が多数となるからです。しかし、強い気概を持って臨めば、実際に成果を上げ、その成果の力でだんだんと「正統なもの」として社会的に受け入れられていきます。このプロセスは新たな現実に臨む人々には宿命的につきまとうものです。ぜひ強い気概を持って新たな正統性の獲得をめざして生きていくことを期待しています。