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トップ>Hakumonちゅうおう【2012年早春号】>【総特集 卒業の日に・贈る言葉】英知の結集を

Hakumonちゅうおう一覧

総特集 卒業の日に・贈る言葉

英知の結集を

河西 良治(かさい・りょうじ)/文学部長

河西 良治

 卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。

 いつの時代もいろんな難題を抱えていますが、特に、現在のように、根本から人間社会が揺さぶられて先行きが見えず、見直す、出直すといってもこれといった具体策がない、これほど混迷の深い時代はあまりないかもしれません。大規模な災害や不況を経験している現在において、人生は未知との遭遇に満ち、不測の事態にいつ遭遇するか分からない不安定な世界であることを多くの人が改めて痛感しているのではないかと思います。私たちはもちろんこの時代を乗り切っていかなければなりませんが、日本の社会に伝統的にある事なかれ主義でも、また、硬直化したイデオロギーでも対応ができない。これだという決定打もなく、事が起こるごとに、その都度、柔軟に多角度から事態を読み解くことが要請される時代なのではないでしょうか。大局的に柔軟に事態を捉える訓練を積み重ねながら、その中で明日を創意工夫をもって考える能力が求められるのではないかと思います。

 人類が英知を結集して苦難を乗り越えていくことがこれほど求められている時代は稀有ではないかと思います。それには、同時代を生きて厳しい状況に立ち向かっている仲間達の英知を結集することが必要です。また、長い人類の歴史のなかで、幾多の苦難を乗り切ってきた先人達の経験に裏打ちされた人類の英知も同時に結集することが大切ではないかと思います。卒業していく皆さん一人ひとりには、大学で学んだ、人間や社会を読み解く力、変えていく力をぜひ創造的に活用してほしいと思います。生半可なことでは容易に解決のできない今の時代状況ではありますが、大学で得た知と力を現実という場で絶えず練磨しながら、洞察力のある幅広い教養と自由で柔軟な発想を発揮し、これからの社会や情勢をしっかりと見極めて行動できる人になってほしいと思います。

 人間は、日々創造的に生き、一生をかけて成長を続けていく素晴らしい存在だと思います。最後になりますが、皆さん一人ひとりに与えられた天命が全うされんことをお祈りして、私の贈る言葉といたします。お元気で。