この度、中央大学の学位記を取得される皆さんに対して、在学中の研鑽と健闘を讃えるとともに、中央大学の卒業を心よりお祝い申し上げます。皆さんは、中央大学でのさまざまな学びと活動により、多くの知識と技能を獲得し、それらを知性へと発展させて、今、その知性を社会で発揮すべく大きく羽ばたこうとしています。
皆さんの人生には、入学、卒業、就職、結婚など、大きな転機がいくつも訪れますが、それらは日付変更線を越えることに喩えられることがあります。一般に、日付変更線を越えて旅するときには、時差が生じて生活リズムに合わせた体調管理が必要となることはもちろん、従来と異なる使用言語、言葉遣い、価値観、生活スタイルへの対応が求められることから、なによりも、しっかりとした自己管理が大切となることはご存じでしょう。そうであれば、大学の卒業、さらには、進学や就職という、本年三月三一日の日付変更線を越える皆さんにとっても、その意義を十分に自覚して戴きたいと思います。これまでは、学修環境が整えられていて、それに合わせていればよいという点も多かったでしょうが、大学生活を経て、自分を鍛えてくれる環境を自分で選ぶ態度を身につけ、これからは、いっそう主体的にライフスタイルを模索し確立していかなければなりません。そこには、大きな時差があるといってもよいと思います。
また、皆さんは、これまで、さまざまな試験を経験してきました。努力して獲得した知識や技能は、試験で評価されるだけだと、そのままで終わってしまいます。体系化・普遍化され、どんな場面で役にたつかがわかった時、それらは知性に変わるのです。さらに、皆さんは、在学中に多くの人々と出会い、自己を確立する過程で知識を知性に変えることで、それが自分だけのものでなく、人のため、公共のためのものだと知ることができたと思います。
皆さんの活躍が期待される日本の社会は、グローバル化や少子高齢化の著しい進展によって社会構造が激しく変化し、世界中で、有限の資源のあり方と地球環境保護を考えて持続可能な社会を構築しなければならないときを迎えています。このような時代であればこそ、皆さんには、中央大学で身につけた知性が一人ひとりだけのものでなく、公共性を有していることをしっかりと自覚し、それをさまざまな社会で発揮して戴きたいと思います。そうしたことこそが、『實地應用ノ素ヲ養フ』ということを建学の精神とする中央本学で学んだ皆さんに期待されていることといえるでしょう。
皆さんが進む航路はさまざまですが、母校中央大学は、皆さんの航海のための母港であり続け、さまざまな機会での帰港も待ちたいと思っています。卒業生の皆さんが、中央大学の卒業生であるという誇りをもって、これからの人生の航路をしっかりと進まれることを祈っています。本当に、卒業おめでとう。この時期に巡り会った人間関係、これから巡り会う人間関係を大切にして、元気にご活躍下さい。皆さんのご健康とご活躍を心から祈念して、お祝いのご挨拶と致します。