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トップ>HAKUMON Chuo【2012年秋号】>【ニュース&中大ニュース】合気道と茶道に通じたドイツ駐日大使・シュタンツェル氏が来校 ~批判する力をつけようと講演会~

HAKUMON Chuo一覧

【ニュース&中大ニュース】

合気道と茶道に通じた
ドイツ駐日大使・シュタンツェル氏が来校
~批判する力をつけようと講演会~

ドイツを見つめ、日本を見つめ直す「中央大学インターナショナル・ウィーク(ドイツ)」のクライマックスは駐日ドイツ大使、フォルカー・シュタンツェル氏(64)を招いての「特別企画・講演会」。京都大に留学するなど親日家で知られる同大使は講演後、茶の湯を楽しみ、合気道部では稽古を披露した。講演も日本語で話すなど親しみやすい人柄が、多くの人を魅了した(7月10日、中大多摩キャンパス8号館8304号教室など)。

GKの気持ちで

 フランクフルト大学に通う20歳のころ日本学、中国学、政治学を専攻。日独関係、ドイツとアジア関係にも精通。1972年に京大に留学中、日本に親しみ、合気道などを習ったというシュタンツェル大使の講演のテーマは「私たちは150年の日独関係から何を学べるか」。

 日本人がもつドイツのイメージを学生ら聴衆に聞きながら講演を始めた。

 「ビール、ベンツ(車)、ベートーベン(音楽家)、サッカー」

 一方でドイツ人がもつ日本人のイメージを「すし、漫画、アニメ、福島原発事故」と紹介した。

 大使によると、日本とドイツはお互い相手への関心が高く、価値観も似ている。性格も互いに勤勉で、戦略を同じように考えられる。共通点が多いことから親交は深まったと、150年にも及ぶ歴史観を説いた。

 大型スクリーンにサッカーの代表チームGKのオリバー・カーン、川島永嗣両選手の真剣な表情をアップにして、「大切なのは判断力です。GKはボールがどこに来るか考えている。皆さんも考える力を養おう」と呼びかけた。分かりやすい説明に学生たちにうなずくしぐさが多かった。

お手本は森鴎外

 ドイツ国内では東日本大震災後、国内エネルギーの供給を脱原発、代替エネルギーへの転換政策を打ち出し、国民の5分の4が賛成した。批判する力が大事という大使は「この判断は正しかったのか」と提言、判断力の重要性を訴えた。

 その力を養うには、どうしたらいいか。身を乗り出す学生に「しっかり観察することです」。

 大使は作家の森鴎外を例に挙げた。ドイツに医学を学ぶため留学中、ドイツをつぶさに観察して書いた小説『舞姫』には当時のドイツと日本人留学生の暮らしぶりが如実に表れていると絶賛した。

 「授業で先生の言ったことを自分で判断してみましょう。判断力は習ったことや模倣で身に付くものではありません。自分で判断することです。これは日常生活、大学生活、就職してからも大切なことです」

 質疑応答では中大生8人の質問に答えた。

 商学部1年女子学生からの質問「私たちがドイツに学ぶべき点は何ですか」には、日本とドイツはよく似ているものの、相違点として日本は島国、ドイツは欧州の中心にあるため国際的意識が強いと分析しながら、国際感覚・視野を高めようと答えた。

 ドイツ語での質問にはうれしそうに聞き入り、学習の成果だと褒めた。また自らブログを紹介。黒板にアドレス(次頁参照)を書いて、「授業が退屈なとき、これを見てください」と笑わせて講演は終わった。

真剣を止めた

合気道のひとこま。右が駐日ドイツ大使

 講演後、中大生から白ユリの花束とベートーベンを歌った混成合唱団のCDのプレゼントがあった。

 シュタンツェル大使は福原紀彦総長・学長らと茶室「虚白庵」へ。茶道部による茶の湯のもてなしを受け、椅子席ながらも茶道の心得をさりげなく披露した。

 その後は第一体育館・合気道部で約30分、胴着に着替えて部員とともに稽古に励んだ。

 京大留学中、習ったという合気道は堂に入っていて、真剣を持つ相手と戦う稽古でも、判断力のよさで相手に付け入るスキを与えない。最後に木刀を贈呈され「きょうの稽古は忘れません。ありがとうございました」と一礼。大使の講演や合気道には、中大生も忘れられない日となった。

1948年クロンベルグ生まれ。1968年からフランクフルト大学で日本学、中国学、政治学を専攻した。1972年から京都大学に留学。1979年に外務省入省、1980年にケルン大学にて哲学博士号取得。その後、イタリア大使館、南イエメン大使館、社会民主党、ドイツ連邦議会会派外交担当、外務省原子力平和利用・不拡散政策担当課長、外務省政策局長(アジア・アフリカ・中南米担当)、中国大使などを経て、2009年12月から現職。休日の東京・柴又散策を計画中。ブログはドイツ大使館HPから「大使日記」。