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トップ>Hakumonちゅうおう【2011年冬季号】>【インターナショナル・ウィーク第2回】「イギリス」 講演会、民族楽器演奏など多彩なイベント開催

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【インターナショナル・ウィーク第2回】

「イギリス」

講演会、民族楽器演奏など多彩なイベント開催

 中央大学の国際化を進め、学生の知的好奇心を喚起するとともに、より活気あるキャンパスの実現を目指して、イギリスをテーマにしたインターナショナル・ウィーク(10月17日~21日)が多摩キャンパスで開かれた。インターナショナル・ウィークは今年6月のフランスに続いて2回目。期間中、ディビッド・ウォレン駐日英国大使講演会はじめスコットランド民族楽器演奏や国際シンポジウムなど、多彩なイベントが行われた。

ディビッド・ウォレン駐日英国大使が講演
「国際関係の重要性―日本と日本国民が
国際社会で活躍し繋がるために―」

 ディビッド・ウォレン駐日英国大使の講演会が10月19日、多摩キャンパス8号館8304号教室で開かれた。大使は「国際関係の重要性―日本と日本国民がより国際社会で活躍し繋がるために―」をテーマに講演した。

 大使は、会場の大教室と同時中継された8303号教室とを埋めた教職員や学生に向けて、「国際関係をよりよいものにするために必要な外交政策は、自国の利益を主張することと同時に多国間で共通の価値観を共有することが必要である」と繰り返し強調した。

 大使は冒頭、「36年間外交官として仕事し、私は日本の専門家です」と自己紹介したうえで、「外交は自国の利益を主張するだけでなく共通の価値観を持たなければいけない。どの国も経済、金融、技術、科学などあらゆる面においてその責任を逃れることはできない」と強調した。

 また、地球温暖化や核不拡散、ソブリンリスクなどを挙げ、こうした問題の解決に向けて「外交官の仕事はますます重要になっている」と述べた。

 大使は国際関係の歴史を振り返り、19世紀から20世紀の国民国家によるナショナリズムの台頭が国家間の紛争を引き起こし、その結果、国際協調を図る国際的な枠組みの必要性が認識されるようになり、第一次世界大戦後に国際連盟、第二次世界大戦後に国際連合が設立されたことを説明。またNATO(北大西洋条約機構)、欧州連合(EU)にも触れ、「防衛、経済でも(価値観を共有する)国が国際的な枠組みを作る方がいい、と考えるようになった」と指摘した。

 国際連合については、現在、イギリス、アメリカ、フランス、中国、ロシアの5カ国の安全保障理事会常任理事国に「日本も入ってもらいたい」と述べ、「日本の経済的・社会的な立ち位置をもっと評価して国際機関の枠組みに反映すべきだ」として日本の常任理事国入りを支持する考えを示した。

 大使は、駐日英国大使館が「英国経済を発展させる」という重要な任務を負っているとの認識を示したうえで、英日関係についても、かつての日英同盟(1902~1922)や第二次大戦後のパートナシップの再構築について述べた上で、「国際会議において英米間よりも英日間の方が意見一致することが多い」と指摘し、近年の文化交流の拡大などについてもコメントした。

 その一方で大使は、英日間の相違点についても触れ、とくに経済面について「外国企業は日本に投資しにくい。なぜなら、日本には複雑な規制の網があり、経済を中央政府がコントロールしていて、本当の意味で自由経済でないからだ」と指摘。日本がEPA(経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)に参加し、「外国企業が日本国内外の企業に自由に投資できるようになることを期待している」と述べた。

 また、「日本は先進国のなかで死刑を執行している数少ない国だ」として、イギリスにおける死刑制度廃止の経緯を説明した上で、日本における死刑制度に対する議論の深まりへの期待を表明。さらに国家間の不法な児童連れ去りを防止することを目的にした「ハーグ条約」(国際的な子の奪取の民事面に関する条約)に日本が非加入であることについて、「日本政府が真剣に検討し、条約を批准することを願っている」と述べた。

 大使は、英国外務省が優先課題にする「英国の繁栄と安全保障、英国人の安全通行」のために、「日本との関係を強めていきたい」と述べ、東日本大震災に対する英国民の支援にも触れて、「日英関係はさらに強固にできると確信している」と強調した。

(学生記者 中野由優季=法学部2年)