中原邦晶氏
「大学病院による被災地域への医療支援の試み」をテーマにした講演会が4月28日、多摩キャンパス5号館で開かれた。講師は、北里大学医学部の医学博士で脳神経外科専門医、救急専門医の中原邦晶氏で、東日本大震災の被災地域に行って災害医療活動に携わった体験談を交え、現地の状況と今後必要とされるボランティア活動等について約1時間講演した。
中原氏が医療支援で訪れたのは、大震災で甚大な被害を被った岩手県大船渡市。総勢29名の医療支援チームの第1陣として3月18日から3泊4日の日程で、災害医療活動を行った。
メンバーは医師、看護師、薬剤師、事務員らで構成。食料、水、着替えなど必要なものはすべて持参し、車に医療支援物資を積んで被災地入りした。災害対策本部がある大船渡市役所を活動の拠点にした中原氏らは、まず隣接の陸前高田市の避難所で医療支援活動をはじめた。
中原氏は「最初に活動計画を立てることが大事です。それと荷物の運搬が一番大変なので、個人の荷物は少ない方がいい」とアドバイスしたうえで、「診療はカルテがないので、患者さんに一から話を聞いて行い、1時間半で40名を診察しました」と報告。医療班には途中から市職員も加わった。
中原氏は「避難所で赤ちゃんや子供がなじめずに泣いているのがショックでした。ペットも鳴き声が迷惑なので避難所には連れて来れません。本当に気の毒でした」と避難所の様子を語った。
瓦礫が散乱する被災地では、「安全靴を履いていたので楽に行動できた」という。夜はお寺の救護所で、懐中電灯を使って診療。日程の後半からは電気が復旧し、夜間の医療活動が行えるようになった。夜は寝袋にくるまって寝た。
空き時間を使って活動計画の見直しを行ったという中原氏は、「プランを先に立てて行動することが大事です」と重ねて強調。市災害対策本部には、医療班の行動記録を提出、「ノートに引き継ぎ事項を書いて、次の支援につなぐことが重要です」と指摘した。
ボランティアに関心がある多くの学生が出席した講演会
29名の医療支援チームは、第1陣が被災地入りした3月18日から3月28日までの間に第4陣までに分かれて活動。生後1カ月の赤ちゃんから99歳まで、延べ923名の患者を診療した。
「医療チームの半数にストレスによる心的障害がでた」という中原氏は、現地医療基盤の自立と安定化などを課題に挙げた。また被災地でのボランティア活動の心構えとして、①自分のことは自分でする「自立」②被災地自治体、ボランティア団体との連絡、協力を密にする「協調・同調」③身の回りを自ら管理する「安全」④活動記録をつなぐ「継続」の4つのポイントを指摘した。
講演会は、活発な質疑応答も行われ、被災地ボランティアへの関心の高さをうかがわせた。
(編集室)