「ボツワナの人々が日本に対して発してくれた言葉は、誰かが被災地に届けなくてはならないですよね。そんな、つなぎ役になろうと考えました。社会に与える影響の大きさよりも、誰かの心に届いたら嬉しいですね」
ボツワナで、右が山根さん
こう語るのは商学部3年の山根淳平さん(私立成城高校出身)。今春、アフリカ南部の内陸部に位置するボツワナ共和国で過ごした経験をもとに、ボツワナ大学に留学中の早稲田大学の友人と協力して、現地に住む人々が遠く離れた東日本大震災の被災者に向けて書いた励ましの言葉を被災地に届ける活動をしている。
3月11日に発生した東日本大震災を知ったのは、2日後の13日で、隣の国のジンバブエに足を伸ばしていたときだった。オーストラリア人旅行客に未曾有の被害を受けた東日本のことを心配され、大震災を知った。それ以来、「被災地に向けて何かできないか」と考えはじめたが、「何をしたらいいか分からない」ままに、答えを見つけられずにいた。
3月18日に帰国後も考え続けていたが、ボツワナ大学に留学中の早稲田大学の友人と連絡をとりあっているなかで、考えついたのが、ボツワナからの激励メッセージを被災地に届けることだった。
ボツワナからの被災地応援メッセージ.
友人は、手始めに3月21日から31日まで、ボツワナ大学の学生と教職員に授業の移動中などに、お願いして大地震の被災者にメッセージを書いてもらった。了解を得て、メッセージを持って写真を撮らせてもらい、それをfacebook上でつくったページに掲載した。
3月18日に帰国していた山根さんは、英語で書かれたボツワナからのメッセージを日本語に訳すボランティアをSNS上で担当した。他にも10名以上の学生がSNS上から集まった。
「地震をきっかけに、被災地のために何かやろうとしている人がたくさんいることに気付きました。自分もその一人ですね」と語る山根さんは、「自分はボツワナと被災地をつなぐ役割を果たす」ことに決めた。
「どうか、希望をなくさないでください。みなさんに、私たちの愛を」
「祈ることで、私たちはみなさんと一緒にいます」
ボツワナから届いたメッセージには、心温まる言葉が綴られていた。イギリス連邦加盟国のボツワナ共和国はクリスチャンが多く、メッセージにはキリストの言葉を引用したものが目に着く。
「遠いボツワナという国で、日本のことを心配してくれる人がいることが、被災地に届いたらいいですね」。そう願いながら山根さんは、被災地に赴き、写真と励ましの言葉が書かれたボツワナからのメッセージを届ける計画だ。メッセージは少し工夫して、写真集やコラージュにして現地で飾ることにしている。
「言い訳をつくって、何もしないことも可能です。しかし、それでは自分は何も変わらない」と強調する山根さんは、大震災を介して学んだことの一つとして、「人への思いやり」をあげた。
山根さんの周りには、大震災で被災した人はいないが、「他人事だとは思えない」と感じた。東日本大震災に向き合い、何かできないかと模索した山根さんは、ひとつの行動を起こしたことで、いま何かが変わろうとしている自分を感じている。
(学生記者 加藤 静香=文学部2年)