Chuo Online

  • トップ
  • オピニオン
  • 研究
  • 教育
  • 人‐かお
  • RSS
  • ENGLISH

トップ>Hakumonちゅうおう【2011年夏季号】>【特集 Campus Now】『東日本大震災と向きあって』

Hakumonちゅうおう一覧

【特集 Campus Now】『東日本大震災と向きあって』

「自分に何かできることはないか」―大震災と真摯に向き合った中大生たち

 「自分に何かできることはないか」―。未曾有の被害をもたらした東日本大震災が発生した3月11日以来、多くの中大生が自らにこう問いかけ、自分にできることから支援活動を展開している。被災新入生へのサポート、避難所での支援ボランティア、ボツワナ大学からのメッセージの橋渡し、チャリティーイベント・募金など、その活動はさまざまだ。問題意識を持つことの重要さに気付かされた学生もいる。大震災に真摯に向き合ったCampus Nowをレポートする。

「被災地新入生に何か協力したい」とメール
ボランティア学生を募集、支援の輪広がる

文学部2年 松本 歩さん (宮城県宮城第一高校出身)

松本 歩

松本歩さん

  「今回の震災で被災した地域からの新入生になにか協力したいです。生活のサポートや心のケア等で新入生を助ける制度とそのボランティアを募ることはできないでしょうか」―。

 東日本大震災が発生してから一週間後の3月18日、広報室に一通のメールが届いた。発信者は、文学部2年の松本歩さん(宮城県宮城第一高校出身)。

 メールには学生ボランティア募集の提案に続いて、「それができないのでしたら宮城、岩手、福島出身の在校生と新入生の交流会という形でもかまいません。実家が被災しながら上京する新入生の方には、何かしらの支援が絶対に必要です」と綴られていた。

 松本さんは、宮城県仙台市の出身。3月11日の大震災発生時に大学にいた松本さんが、仙台の実家にいる家族全員の無事を確認できたのは翌12日だった。しかし、それから数日間は実家と連絡がとれなくなり、心配と不安の日が続いた。

 その後、仙台市内に電気が復旧し始めてから、友人と電話をしているとき、「この大震災の時に大学生になる人は大変だよね」と友人が何気なく言った一言が、松本さんの胸を突き動かした。

 「仙台の実家に帰りたかったのですが、交通手段がなくて帰れず、もどかしい気持ちでした。私にできることは何かを考えたとき、被災地から東京に来る新入生を支援することだと思いました」

 そう考えた松本さんは、メールで大学当局に自分の気持ちを発信したのだった。「被災された新入生を心配している人がいることを知ってほしい。入学という、ただでさえ不安な時期に孤独を感じないでほしい」との思いは強かった。

 松本さんのメールは、広報室から学生課に送られた。その日の夜、学生課から「今回の松本さんの大学内でのサポート、交流会の提案は、非常に良い案と思われますので、学部、学友会とも協力して実施したいと考えています」と返信が届いた。

 松本さんのメールをきっかけに、学生課が中央大学のHPに在学生ボランティアを募った結果、趣旨に賛同した学生27人が名乗りを上げた。4月6日に最初のミーティングが開かれ、その席で松本さんは「何が出来るかわかりませんが、みんなで協力して新入生を支援したいです」との思いを伝えた。

 ミーティングでは、被災地からの新入生、在学生のサポートのほか募金活動、ボランティア派遣、セミナーの実施、災害ボランティア講習会などの企画があがったが、まずは被災した新入生の不安を解消するための相談会を行うことを決めた。

 「何かしたいと思ったときに、助けてくれる人がいることを知りました。学生課の方、ボランティアの学生スタッフのみんなには本当にありがとうと言いたい」と松本さんは自らが投じたメールの広がりに感謝する。

 被災した新入生をサポートするための相談会は、4月13日から15日まで3日間、中央大学多摩キャンパスの学生部会議室で開かれた。午前10時から午後3時まで開設された相談コーナーには、ボランティアの学生スタッフが交替して待機、訪れた新入生の今後の生活や履修、サークルなどの相談に応じた。

 相談コーナーは、学生同士の気軽さから、すぐに打ち解けた和やかな雰囲気で行われ、新入生のなかには時間が空くと何度も足を運ぶ姿もみられた。

 「相談会は、新入生の居場所のひとつになれたので、嬉しく思います」と松本さん。引き続き、毎週木曜日の昼休みに相談会を開くことになった。

 ボランティアの学生スタッフチームは、今後も被災地の学生たちが話し合える新しいコミュニティーの場を提供するなど、サポート企画を打ち出して実施していくことにしている。

(学生記者 荻原睦=法学部3年)