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トップ>Hakumonちゅうおう【2011年春季号】>【連載企画】ボランティアと私―何かを求めて― 高齢者世帯の除雪

Hakumonちゅうおう一覧

【連載企画】ボランティアと私―何かを求めて―

高齢者世帯の除雪

準硬式野球部員

夏季合宿地への恩返しに

新田大さん

 今冬、日本列島が日本海側を中心に記録的な大雪に見舞われたなかで、準硬式野球部(池田浩二監督)の部員27人が2月2、3両日、毎年、夏季強化合宿を行っている秋田県山本郡三種町を訪れ、高齢者世帯を回って除雪ボランティアを行った。

 秋田県の大雪をニュースで知った池田監督が、31年前から夏季合宿でお世話になっている同町に「少しでも恩返しができれば」と考え、三浦正隆町長に申し出て実現したもので、今回は2006年以来、2回目。

 池田監督と部員合わせ28人の一行は、2月1日夜に大型バスで八王子を発ち、翌2日早朝に三種町の中央公民館に到着。朝食と身支度を済ませ、三浦町長らの歓迎の挨拶を受けたあと、5班に分かれて現場に向かった。

 部員27人のうち雪国育ちは秋田市出身の伊藤爵寿さん(商学部4年、秋田市立秋田商業高校出身)ら3人で、他の部員は除雪を行うのは初体験。町の人から手ほどきを受け、一人暮らしのお年寄りや高齢者夫婦世帯を訪ね、除雪をして回った。

高齢化が進む秋田・三種町

 除雪ボランティアを行った副キャプテンの江森正洋さんと(総合政策学部4年、私立浦和学院高校出身)と主務の新田大さん(商学部3年、私立報徳学園高校出身)は、「辺り一面、銀世界。高齢化、過疎化が進んでいる三種町では地域で分担して雪かきをするものの、手つかずの状態でした」と言う。

 家の軒先に積もった雪は、1メートルを超え、場所によっては屋根から落ちた雪で2メートルの高さの壁になっていた。これをスコップやスノーダンプで崩していく。1班に2人配属された町の人から、スコップを使っての除雪作業の指導を受けた部員らは、はじめ戸惑っていたものの、次第にコツを掴み、日頃から鍛えたパワーで除雪していった。

 2日は、青空の好天に恵まれ、「寒いと思って着込んで行ったけど、作業していて熱くなったので脱いだ。半袖で雪かきする部員もいたほどです」と江森さん。

 腰の高さまで積もった雪の量に驚いた江森さんは、「おじいちゃん、おばあちゃんが除雪するのは大変。誰かがやらなきゃいけないから、自分たちが少しでも助けになれば、という気持ちになった。でも普段は使わない筋肉を使ったので筋肉痛になった」と笑う。

2日間で48世帯を除雪

江森正洋さん

 除雪に精を出す部員の原動力となったのは、「おじいちゃん、おばちゃんの温かさ」だった。「雪かきの途中で、『ちょっとこれ食べー』と差し入れを持ってきてくれるんですよ」と江森さんと新田さん。

 「終わりました」と報告に行くと、除雪している間につくってくれたおはぎをもてなされ、他にもみかん、りんご、甘酒など心のこもった差し入れがあった。また「ありがとう」と手を握って涙を流す人もいて、2人は「純粋におじいちゃん、おばあちゃんに喜んでもらえて嬉しかった」と振り返る。

 2日は午後4時に作業を終了。その日は中央公民館に泊まった。3日は午前7時に起床し、9時から現場に移動、昼過ぎまで除雪作業を行った。部員らは2日間で、同町の1人暮らしのお年寄りや高齢者夫婦の48世帯を訪ね、除雪を行った。

感謝される嬉しさを経験

懸命に雪かきする準硬式野球部員ら

 この間、町の人からは、スノーダンプやスコップなどの用具の準備や小学校で昼食に出たカレーライスづくり、それに夜、公民館に布団を用意してくれるなどの世話を受け、江森さんと新田さんは「逆に自分たちが支えられている」こと気づいたという。

 除雪ボランティアを思い返して、江森さんは「人に感謝されることの喜びや嬉しさを感じた。周りの協力あっての今回のボランティアだったと思う」と話してくれた。また新田さんは「大がかりなボランティアは初めてだったので、いい経験になった」と笑顔で振り返った。帰りのバス車内では、さすがに「疲れて、みんなぐったり眠っていた」そうだ。

 今回の準硬式野球部員の除雪ボランティアは、地元の新聞3紙と毎日新聞のコラムにも取り上げられた。中央大学準硬式野球部は全日本大学選手権で8回の最多優勝を誇る強豪で、今回の除雪ボランティアは、春季リーグ戦はじめ次なる挑戦へのパワーになったことだろう。

(学生記者 佐武祥子=法学部2年)