Chuo Online

  • トップ
  • オピニオン
  • 研究
  • 教育
  • 人‐かお
  • RSS
  • ENGLISH

トップ>Hakumonちゅうおう【2011年春季号】>【表紙の人】『もしドラ』で脚光の女子マネージャー座談会

Hakumonちゅうおう一覧

【表紙の人】

『もしドラ』で脚光の女子マネージャー座談会

“中大の名に恥じない”を使命に
真摯な姿勢と熱い思いを語る

 『もしドラ』で女子マネージャーが脚光をあびている。そのマネジメント如何が、個々の選手やチームのモチベーションに大きな影響を与える。選手、チームを支える“縁の下の力持ち”である女子マネージャーは、どんな使命感をもって役割に取り組んでいるのだろうか。5人の女子マネージャーに、真摯な姿勢と熱い思いを語り合ってもらった。

出席者
水泳部 井上麻実さん(総合政策学部4年、中大杉並高校出身)
陸上競技部(短距離) 高木実有さん(法学部4年、岐阜県立大垣北高校出身)
ラグビー部 小松原美希さん(法学部3年、中大杉並高校出身)
スケート部(アイスホッケー) 川面このみさん(総合政策学部3年、都立井草高校出身)
アメリカンフットボール部 平井茜さん(法学部2年、中大附属高校出身)
◇司会 小栗尚希さん(学友会職員)

小栗 学友会職員の小栗です。応援団のチアリーディング部の監督もやっています。主人は陸上競技部の監督で、2人とも競技も経験していますが、『もしドラ』で注目のマネージャーの視点についてはあまり分かっていないので、今日はみなさんからいろいろ教わりたいと思います。はじめに、みなさんがマネージャーになったきっかけから聞かせてください。

《注:『もしドラ』「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(岩崎夏海著、ダイヤモンド社刊)=200万部を超す大ベストセラー。アニメに続いて、6月に映画公開予定。高校野球部の女子マネージャーが、偶然入手したドラッカーの『マネジメント・エッセンシャル版』を読んで、弱小チームを生まれ替えさせ、甲子園出場を決めるストーリー》

◇選手からマネージャーに

井上 私は高校のときは女子バレーボール部の選手をやっていました。スポーツはすごく好きで、大学でも何かしたいと思っていて。応援することも好きだったので、サイトで競泳がマネージャーを募集しているのを知って。それで2年生の4月に全日本選手権をテレビで見て、その1週間後に練習を見学に行ったときの選手の対応がすごく優しくて、「ああ、もうこれだ」と思って入部を決めました。

《注:マネージャーとは=「組織の成果に責任を持つ者」(『マネジメント・エッセンシャル版』より)》

小栗 高木さんは?

高木 私は高校まで陸上選手をやってきて、中大に入学が決まってからは、中大の陸上が強いのは分かっていたので、同好会に入ろうかなと思って、陸上関係の勧誘を待っていたんです。だけど、勧誘されなくて(笑)。で、1年生の白門祭のときに、陸上競技部が出店を出していて、「私も陸上やっていた」と話したら、「あ、そうなの。またやれば」と言われて、グラウンドに見学に行ったらすごく懐かしくなって、マネージャーとしてやろうと入部を決めました。だから陸上が先にあって、マネージャーになったという感じです。

小栗 川面さんは。

川面このみさん

川面 私は逆にマネージャーから入って、アイスホッケーに入ったんです。高校でも野球部のマネージャーをやっていたので。

小栗 まさに『もしドラ』じゃない。

川面 はい(笑)。『もしドラ』みたいな感じでやっていました。大学に入って、いろんな部活のマネージャーも見たんですけど、友だちに「ちょっとアイスホッケーを見に行こうよ」って誘われて。でも、その友だちは入らなかったんですけど。

小栗 ああ、友だちは入らなかったんだ(笑)。それで?

川面 それで、選手の対応がすごくよくて、最初は(笑)。本当に、いてくれるだけでいいからみたいな。で、入ったら違ったんです。

小栗 そうか(笑)。でも、マネージャーをもう2年続けていて、しかも、いまは、全日本学生氷上連盟の委員長なんだよね。

川面 はい、インカレも主催しています。今は入ってよかったなとは思います。

小栗 そうかそうか。小松原さんは、あの元気のいい集団になぜ関わろうと思ったんでしょうか。

平井茜さん

小松原 私は中学、高校とバスケットボールをやって、熱い6年間を過ごしたので、大学でもスポーツに関わって熱い4年間にしたいなと思っていたときに、一緒に入ったマネージャーの子と「ラグビー見に行ってみようよ」となったんです。そのときに「ラグビーって、こんなにいいんだよ」という4年生のマネージャーさんのキラキラ輝いている姿に完全に惹かれて、入りました。

小栗 なるほど。平井さんはなぜ、アメフトを。

平井 中学、高校は吹奏楽部をやっていて運動部の経験はないんですけど、中大附属にも『ラクーンズ』という名前のアメフト部があって、興味を持ち始めたら好きになって、大学はアメフト部に入るしかないと思うようになったんです。それでたまたま勧誘も受けて、見学に行ってみたら、雰囲気もすごく親しみやすくて「このチームでやっていきたいな」と思って入りました。

◇仕事は手分けして

小栗 いま、みなさんの部にはマネージャーは何人いるの?

井上 マネージャーは女子が4年に2人、3年に1人、新2年生が3人の計6人でやっています。その中で私のように学友会関連の仕事をするマネージャーと、日本水連の仕事をするマネージャーに分かれています。

川面 えっ、完全に別なんですか。

井上 何かあったときに学友会に行くのは私で、学連への試合のエントリーとかは、その子たちがやっています。それ以外は全て同じです。

《注:マネージャーの役割は=①部分の和よりも大きな全体、すなわち投入した資源の総和よりも大きなものを生み出す生産体を創造することである。それはオーケストラの指揮者に似ている②あらゆる決定と行動において、ただちに必要とされているものと遠い将来に必要とされるものを調和させていくことである(『マネジメント・エッセンシャル版』より)》

小栗 日々の練習では、マネージャーはどういうことをやっているの?

井上 ドリンクづくりとタイム取り。メイン練習の後はタイムをパソコンに入力して、それをコーチが印刷して選手が見ます。あとはサプリメントの管理。ほかにメディアガイドっていう冊子が水泳部にもあって、マネージャーが選手との共同作業でつくっています。

小栗 陸上部は?

高木実有さん

高木 陸上競技部はほかの部活に比べたら結構、することがない(笑)。学友会との連絡や試合の会議など事務関係は選手の主務がやってくれています。女子マネージャーの仕事は練習の準備にタイムの計測、マッサージとか、ドリンクをつくったりしています。マネージャーが専属でやっているのが、ホームページの編集と父母会との連絡です。あとメディアの取材が多くて、メディアとの連絡調整をマネージャーがやっています。

小栗 今は、マネージャーは何人? 

高木 陸上競技部は女子陸上部と男子の短距離ブロックと長距離ブロックに分かれています。女子陸上部はマネージャーが引退して誰もいなくなったので、いま募集中です(笑)。男子の短距離は女子マネージャーが4人、長距離ブロックは3人ですね。

小栗 川面さんは、同じ学年が3人?

川面 2人です。なので、役割分担もざっくりしかできない。内部の仕事と外部の仕事に分けて、GLCとかはもう1人がやって、渉外関係の日本学生氷上連盟への手続きとかは私がやっています。あとは練習が夜遅いので、2人で分担してなるべく行くようにしているんですけど。

小栗 夜遅いよね。

川面 そうですね。昨日は早くて夜の12時終わりでした。練習場所は西武新宿線の東伏見にあって、たまたま私は家が近いので自転車で行ってます。

小栗 でも夜12時に帰るのはちょっと怖いね。練習中にマネージャーは何しているの?

川面 水汲みとか、アイシングをたまに。ベンチにいるよりはフェンスがあるところにいます。(パック)が飛んでくると、危ないんで。それで試合のビデオを撮ったりして、あとは、選手のモチベーションを盛り上げるために応援しています。

小栗 小松原さんのところは何人?

小松原 ラグビー部は私と同い年が3人と、去年の夏過ぎに1年下の代が2人入ってくれました。普段の仕事は、ドリンクをつくって、練習の準備をします。試合中は、ドリンク補給のタイミングになったら、走っていってドリンクを渡す。練習が終わるとアイシングを30~50個つくって、選手の体に巻いたりしてあげます。

 試合では受付をマネージャーが担当します。試合中にグラウンドでドリンク補給するのは選手なんですけど、ベンチでドリンクをつくったり、アイシングを用意したりするのはマネージャーがやっています。グラウンド以外では、私が学友会担当で、あとラグビー協会に行って事務のお手伝いとかレフェリーの手配をする担当と連盟・スコアの担当に分かれてやっています。

◇練習の仕切りも

小栗 アメフトはマネージャーは何人いるの?

平井 マネージャーは新4年生が4人、新3年生が1人、私たちの代の新2年生が8人います。それで13人。他にトレーナーがいます。今は4人で、その人たちは選手の体調管理をします。

明るく笑顔で語り合う女子マネージャーたち

小栗 マネージャー以外に、トレーナーが4人。

平井 はい。マネージャーの仕事は、ドリンクや氷をつくったりして、結構あるんです。他に私は、練習中の各ポジションのビデオを撮っています。撮ったビデオを選手が見てミーティングをします。グラウンド外ではウェブをつくったり、イヤーブックを毎年発行したり、他に会計とか記録とか。練習の仕切りもしています。

小栗 えっ? 仕切りをマネージャーがやるの。練習メニューを組むのは別?

平井 メニューを組むのは選手たちですけど、「何分後にポジ別練習始めます」とか時間を知らせて、練習の仕切りをやるのはマネージャー。あと私はグッズ係で、グッズを試合会場やウェブで売っています。タオルやキャップ、ストラップとかを企画して、発注までやっていますね。

小栗 マネージャーをやっていて、『もしドラ』にあるように、「部活を良くしてやる」といったことは、ある?

平井 アメフト部は体制がしっかりしているので…。でもマネージャーの人数が多いのを生かして、さらにできることがあるんじゃないか、というのはありますね。例えば卒業した先輩ですが、試合のときに、相手のオフェンスのプレーを見て、それを記録して、どういう傾向で攻めてきているというのをコーチに知らせていました。コーチがそれで戦略を立てて、サインを決め、そのサインを先輩がディフェンスの選手に出していました。

小松原 そんなすごいことしていたんですね。

◇身近なイノベーション

司会の小栗尚希さん

平井 それで、私がその仕事を引き継いだんです。本当にゼロからのスタートなので、今は記録を取るところから始めて、春のオープン戦までに何とかしたいという感じですね。みんなの助けにはなるんじゃないかなと思って、やっています。

小栗 それこそ、イノベーション(innovation=新しい満足を生み出すこと)だね。

《注:『マネジメント・エッセンシャル版』より=成果とは何かを理解しなければならない。成果とは百発百中のことではない。百発百中は曲芸である。成果とは長期のものである。すなわち、まちがいや失敗をしない者を信用してはならないということである。それは見せかけ、無難なこと、下らないことしか手をつけない者である。成果とは打率である。弱みがないことを評価してはならない。そのようなことでは、意欲を失わせ、士気を損なう。人は優れているほど多くのまちがいをおかす。優れているほど新しいことを試みる》

井上 競泳は練習メニューとか、陸上トレーニングとか、仕切りは全部コーチと監督がやっています。タイムを取るのは基本はマネージャーで、監督とコーチが選手一人ひとりの泳ぎをよりしっかりと見られるように、私たちも計っています。選手のタイムをパソコンに打ち込むのも結構大変で、それをコーチがやっていたら寝る時間もなくなっちゃうから、マネージャーがやるというのが代々引き継がれてきています。

小栗 陸上はどうですか。

高木 陸上は、自分が選手をしていたから分かるんですけど、みんなレベルの高い選手たちなので、私がイノベーションを起こすとか、もうおこがましくて(笑)。でも、割れたコップをそのまま使ったりしているのをみて、みんなのやる気がアップするピカチュウのコップに替えたりとか(笑)。ホームページに「頑張ってください」と応援メッセージが来るので、それを印刷して選手に渡したり、ちょっとでも選手のモチベーションが上がることを見つけていくのが、私たちなりのイノベーションかな、と思いますね。

小栗 ブログがすごい面白いよね。

高木 あっ、ブログ面白いですか(笑)。ブログも今までは2カ月に1回くらいで、インカレや合宿とか、特筆すべきときしか書いていなかったんですけど、どんどん書いていこうと思っています。選手のお父さんやお母さんから、「いつもブログ見ています」とか言われるので、そこは一番頑張らなければいけないなと思っています。

小栗 みんないい笑顔していて、ブログは見ていて、すごく楽しい。スケート部はどうですか?

川面 スケート部にマネージャーが居ること自体がイノベーションで(笑)。

小栗 そうだよね~(笑)。

川面 いるだけでいいよ、という感じなので、イノベーションとかはないんです。日本学生氷上連盟の中にはフィギュアとスピードとアイスホッケーがあって、一番全盛なのがフィギュアで、それは絶対におかしいって(笑)。アイスホッケーだって面白いのにと思って、私は学連の仕事で、アイスホッケーの広報に力を入れ始めたんです。

 それと、連盟の仕事に多くの大学が参加するシステムになっていなかったので、マネージャーの輪をフルに活用して、いろんな大学の人にお願いして、仕事を割り振るようにしたんです。

《注:マネージャーの仕事は=①目標を設定する②組織する③動機づけとコミュニケーションを図る④評価測定する⑤人材を開発する(『マネジメント・エッセンシャル版』より)》

小栗 お疲れさま(笑)。ところでみなさんはマネージャーになって、「私、変わったな」ということはありますか?

◇備わった責任感

井上麻美さん

井上 中央大学と日本大学の伝統的な大会があるんですけど、大会はいつも母の日が近くて、試合が終わった後に、選手が1人ずつ、お母様、お父様に向かって感謝の気持ちを述べるんです。選手が泣きながら、「ありがとう」って、すごく素直に言っているのを聞いて、いいなと思って。そういうのを見て、感謝することの大切さを学びましたね。あと、自分に自信が持てるようになりましたね。それも選手のおかげなんですけど、「私は中大だぞ」みたいな(笑)。

小栗 高木さんはどうですか。

高木 すごく成長させてもらったなと思います。今までは「自分が、自分が」という感じで、目立ちたい、前に出なきゃ嫌だ(笑)、そんな感じが結構強かったんですけど、人を支えるのも大切な仕事だなって思うようになりました。最近は裏方の仕事を就職しても続けたいなって、公務員なんですけど、そう思うようになったのも自分の中では変わったところです。

 それと選手たちは、他人だからと知らん振りしないで、後輩たち向かってに真剣に怒るじゃないですか。「おまえ、それ人間として駄目だよ」「おまえ、それじゃ成長できないよ」って。そういうのを見て、礼儀とか上下関係とか、後輩の面倒をみることをすごく学びました。私、実家がお寺なんですけど、マネージャーを始めてから、寺の手伝いするときも、すごいテキパキ動けるようになって(笑)。

小栗 川面さんは。

小松原美希さん

川面 そうですね。感じるのは自分のいる環境のすごさで、仕事に対する責任感もすごい強くなってきて。本当に私ばかなんですけど…(笑)。選手は本当に真剣にホッケーやっていて、そういう環境をサポートできるというのもすごいなと思う。

 学連でも、インカレを運営する側になって、決勝戦に中央大学が出たときに、すごい歓声を聞いて、本当に感動したんです。その瞬間に、頑張らなきゃいけないんだと感じました。責任感が大学に入ってから、すごい増しましたね。

小栗 小松原さんは。

小松原 自分たちが2年目から一番上になって、マネージャーのことを聞く人がいなくなってから、責任持つようになったし、ラグビー部はどうしたらもっとよくなるんだろうと、周りに目を配れるようになったのが一番大きいかなと思いますね。

◇ミスをしない

小栗 平井さんはどうですか。この1年で変わった?

平井 本当、自分が何かやったらチームが勝てるわけじゃないんですけど、自分が何かミスしちゃったことで、チームのモチベーションが下がるのは駄目と教育されていて、一つ一つ責任を感じながら行動するようになったかなと思います。あと、周りを見て今何が自分にできるか、何をしたらよくなるかと、視野を広げて考えるように心がけるようになったかなと思います。

《注:マネージャーの資質とは=最近は、愛想よくすること、人を助けること、人づきあいをよくすることが、重視されている。そのようなことで十分なはずがない。(中略)始めから身につけていなければならない資質が1つだけある。才能ではない。真摯さである(『マネジメント・エッセンシャル版』より》

小栗 心がけていることは何? 

平井 ミスをしないことですね。選手一人ひとりが、チームが日本一になるためにやっているので、マネージャーも一人ひとり同じように責任持ってやっていく。

小松原 感謝の気持ちですかね。みんな、スポーツ推薦で大学に入ってきた全国レベルの人たちじゃないですか。そういう人たちに関われていることも感謝だし、2010年度は大学選手権にも連れていってもらったことも感謝しなければいけないと思っています。

小栗 川面さんは。

川面 そうですね、何かこんなまじめな座談会で言うのも何ですけど。

小栗 何でもいいと思うよ(笑)。

川面 あまりやり過ぎないことも必要なのかなと思っています。上級生になったので、あまりやり過ぎると下級生がやりにくいのかなと。選手の仕事は選手の仕事で分かれているので、それを崩すのもよくないのかなと。まあ、やり過ぎず頑張ろうかなって(笑)。

小栗 高木さんは、どうですか。

高木 最近、試合の日に体調崩して、休んで迷惑をかけたことがあったので、それからは自分の体調管理をしっかりしようと心がけるようにしています。あとはミスをしないことですね。みなさんと一緒でモチベーションを下げて、選手たちの邪魔になっていたら意味がないので。

小栗 井上さんは?

井上 水泳部は、史上初のインカレ11連覇をした本当に伝統ある部会なので、その名に恥じない行動を取ることをいつも心がけています。試合でもこのジャージーを着ていれば、誰が見ようと中大のマネージャーとなるから、中大水泳部のイメージを絶対に壊してはいけない。あと、選手は小さいころから水泳に人生をかけている人たちで、その人たちの思いに少しでも貢献できるようになれればいいなと思っています。

小栗 みなさん、本当に志が高くて、それがすごく伝わってきました。これからも頑張ってください。きょうはありがとうございました。

(座談会は2月7日に行いました)