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トップ>Hakumonちゅうおう【2011年早春号】>【学生記者 最後の<私>ニュース】出会った人すべてが財産

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学生記者 最後の<私>ニュース

出会った人すべてが財産

野村 茉莉亜/商学部(私立品川女子学院高校出身)

野村 茉莉亜

 大学1年生の春、私は悩んでいた。数ある部活やサークルなどの中で何に入ろうかと。たくさんのチラシを見ても、ピンと来るものがどうにもなかったのだ。

 そんなある日、運命的な出来事が起こった。私が生協の前で友人と待ち合わせをしようとしていた時、吸い寄せられるように一つの貼り紙の前で足を止めた。それが“学生記者募集”の貼り紙だった。それを見た瞬間思った、「おもしろそう」と。何かこの活動でしか味わえない経験が出来そうな予感がした。その時すでに、私の心は「学生記者になる」と決めていた。

 その年の夏、初めて取材をしたが、何をどう質問したら良いのかわからず、ついてきてくれた先輩に助けてもらってばかり。いざ原稿を書こうとしてもどう書いていいのか、すぐに手が止まった。どうにか何日もかけて書き上げ、その文章が活字となった時は言葉に言い表せないほど嬉しかった。

 その後、卒業を控えた4年生の女性を取材した時のこと。私が書いた原稿を読んで、「すごく“らしさ”がある文章」と言ってくれた。まだまだ自分の文章に自信が持てなかった私は、その言葉にとても励まされた。実は、彼女とはその後も交流が続いている。食事をしたり、悩みを相談したり。就職が決まった時も、自分のことのように喜んでくれた。今や私にとってお姉さんのような存在になっている。

 取材をするたび、私はその人たちから刺激とパワーをもらった。「こういう考え方もあるんだ」「こういう生き方もあるんだ」と驚くことばかりで、毎回新鮮な気持ちになった。また同時に、いかに自分の知らない世界が多いのかも思い知った。

 だけど、その人たちの経験や考えを文章にするのはとても難しいこと。間違いのないようにしなければならないことはもちろん、出来るだけ個性や魅力が伝わるように、と思うとなおさら。「私のつたない文章で大丈夫だろうか」と不安にかられたが、その不安を打ち消すように取材した人たちから返ってくるのは、「ありがとう」という感謝の言葉だった。「素敵に書いてくれてありがとう」「私のこれまでを文章にしてくれてありがとう」と。その言葉を聞くたび、「またがんばろう」と力が湧いた。

 思い起こせば、まだ夜も明けないうちから箱根駅伝の取材に行ったり、相撲部屋に二度も行ったり、普段は中々入れないTV局へOB取材に行ったり、色々な所へ足を運んだ。学生記者でしか味わえない経験がたくさん出来た。あの“学生記者募集”の貼り紙を見て感じた予感は現実となったのだ。あの時、あの貼り紙を見つけていなかったら、こんなに充実した思いで4年間を振り返ることはできなかっただろう。中央大学で過ごした4年間、一番の財産は何かと聞かれれば、それは“出会い”だと即答できる。社会人としての責任や厳しさ、そして何より“出会”の大切さを教えてくれた伊藤編集長、取材をした人々、友人、お世話になった先生、先輩・後輩、出会った人すべてが私にとって財産になっている。

 2010年6月、内定先での最終面接の際、社長から思いがけない「書いた記事を読んだよ」の言葉。緊張がほどけ、嬉しい気持ちが溢れた。思わず大きい声で「ありがとうございます!」と頭を下げた。気付いたら、自然と笑顔になっていた。これもまた、一つの“出会い”。この新しい“出会い”を大切に、今春から社会人として精進していきたい。

 この4年間で出会った人々、『Hakumonちゅうおう』を読んでくれた読者の皆様、そして私を支え、書く記事を楽しみにしていてくれた家族、そのすべての人たちにこの場をかりて感謝の言葉を贈ります。「ありがとう」。