「『オペラ座の怪人』が大好きだったことがきっかけで、フランスに興味を持ちました」という樋口さんは、高校生の時からフランス留学を夢見ていた。高校時代に2週間滞在した時、言葉でとても苦労した経験から、大学では特に力を入れてフランス語の勉強に励み、3年生の夏から1年間、交換留学という形で夢を叶えた。
「フランスは憧れの国だったけど、実際に1年を過ごしてみると苦労もたくさんあった」という。ただ、留学で苦労を体験して以来、「よく感謝するようになりました」と気持ちの変化を語る。
フランスでは、大学に通いながら寮生活を経験した。「何かトラブルがあったらフランス語で伝えなければいけないため、甘えが無くなった」と自身の成長を実感し、「多国籍の友人ができた」と掛け替えのない時間を過ごすことができたことを素直に喜ぶ。
大学では、生徒が能動的に動いて創りあげていく授業スタイルや、フランス人の学習意欲に、多くの刺激を受けた。なかでも「原爆」というテーマでプレゼンをした経験は印象深く残っているという。
「質問が出たときは、自分のフランス語を理解してもらえたと実感できて嬉しかった」と振り返ると同時に、「『原爆のことを今の日本人はどう思っているのですか?』との質問は忘れられない」と話す。「戦争は繰り返してはいけない。原爆のことを私は詳しく知っているけど、よく知らない若い人もいると思う」と樋口さんは答えたという。
活発な議論の中、ブラジル人留学生が「事実を日本の若い人達が知ることが必要だよね」とアドバイスしてくれたことがとても印象的だったと振り返る。
フランスは移民が多く、多人種国家でもある。そのために「外国人というだけで冷たくされる」ことも体験した。「人種によって偏見や先入観があることを、身を持って実感した」と樋口さんは表情を曇らす。
「特定の民族を色々非難して言うけど、実際、友達になってみると、全然そんなことはないと分かる。聞いただけで決めつけるのはよくない。聞くだけでなく、きちんと自分の目で見ることが大事」と強い口調で語った。
就活のために留学に足踏みしがちな大学生の現状について樋口さんは、「自分と違う考えに触れて視野を広げること。そして寛容さは生きていく上で大事です。グローバル化と言うなら、日本人はもっと外へ出て行くことが大切」と世界へ目を向ける価値を強調した。
「将来はグローバルに活躍できるような人になりたい」と大学院への進学を志す樋口さんは、国際人への道を新たに歩みはじめた。
(三島)