「何かやらないと」―。橋口さんは、大学入学当初からそうした思いを抱いていた。「人前で話すことが苦手で、コンプレックスがあった」という。しかし、いまの橋口さんには、全くその面影はない。大学生活で挑戦を繰り返し、そのコンプレックスを克服していったからだ。
5回、インターンシップに参加した。「他の学生と違うことを行ってみたい」と考え、最初に行ったイトーヨーカドーでは、「はじめは働くことに抵抗があった」ものの、数字に表れた仕事の成果をみて、自主的に活動することの大切さに気づいた。「いかにお客様に商品を買っていただくか、と挑戦し工夫する過程に楽しみを見出した」という。
3年次には、経済学部のキャリアガイダンス運営委員の代表になった。代表にはすすんで立候補した。「今までリーダー経験がなかった」ためで、「積極的に飛び込むことの大切さを感じていた」ことも後押しした。
キャリアガイダンスの活動では、就職活動を経験した4年生から話を聞いて、「就職活動は、社会人になるために、やらなくてはならないものですが、ただそれだけ、としかみなさないのはもったいない」と考えた。4年生の体験談から「就活は、自分を成長させることができる貴重な機会だ」と気づき、橋口さんは、『就職活動とは何か?』というテーマを掲げてガイダンスすることを提案した。
その運営にあたっては、機械的に割り当てられた仕事をバラバラに進めていることに危機感を持ち、代表としてメンバーをまとめる工夫をした。運営委員は、それぞれ活動に参加した動機も目標も違うため、メンバーと対話を重ね、運営委員が成長できる場にしようと広報活動に力を入れた。それが実り、ガイダンス当日は目標にしていた250人を大幅に上回る400人以上が集まった。
4年次には、『高校生が夢や目標を持てる場を提供する』をコンセプトにした学生団体を立ち上げた。「自分が一番影響を受けたインターンシップ」の機会を高校生に与え、社会経験を積んでもらおうという活動だ。橋口さんが大学生活で考え、行動して学んだことを後輩たちに還元しようというわけだ。
「臆病で繊細」と自らをそう分析する橋口さんは、大学生活を振り返り「最低ラインからのスタートでした」と笑う。大学4年間のさまざまな活動を通し、「経験すれば、人それぞれの苦労もわかるようになり、相手の話にも共感できる」との教訓を得た橋口さんは、卒業後はインターンシップで積極性が大切なことを知ったイトーヨーカドーに就職、「頼られる存在になりたい」との目標を掲げ、新たな挑戦を続ける。
(渡辺)