Chuo Online

  • トップ
  • オピニオン
  • 研究
  • 教育
  • 人‐かお
  • RSS
  • ENGLISH

トップ>Hakumonちゅうおう【2011年早春号】>【群像 それぞれの春】ガーナで法と現実社会との乖離学ぶ 実務体験をもとに国際弁護士めざす

Hakumonちゅうおう一覧

群像 それぞれの春

ガーナで法と現実社会との乖離学ぶ 実務体験をもとに国際弁護士めざす

杉建 陽一朗さん/法学部(東京学芸大付属高校出身)

杉建 陽一朗

 「楽しい学生生活でした、周りに感謝しています」と杉建さんは、素直に中央大学での4年間を振り返る。入学当初から弁護士を目指していた杉建さんは、実務に関わりたいとの思いで、いったん司法試験の勉強から離れた。この間、やる気応援奨学金を使って海外に飛び出し、「法」の実務に触れたことで、本当の目標を持つことができた。

 それは、新たな気持ちで司法試験に臨むことであり、国際弁護士への挑戦だった。

 もともと弁護士に憧れていた杉建さんは、1年生から炎の塔にある法職多摩研究室と白鴻会に所属した。「勉強はいつでもできる環境にあったので、それなりに勉強していた」という。そして、1年生の夏休みの1ヶ月、米ミネソタ州のカールトン大学に語学研修のため短期留学した。これが、その後の転機につながった。

 「この時、アメリカに行く勇気がなかったら、その後、ガーナに行く勇気もなかったと思う」と振り返る。3年生の夏休みに、やる気応援奨学金の今度は一般部門で2ヶ月間、アフリカのガーナでNGO活動をしたのだ。「司法試験から離れて勉強してみたい。実務に関わりたい」というのが動機だった。

 杉建さんは、自らインターネットで調べ、イギリスに本部のあるプロジェクトアブロードという先進国の学生を途上国に派遣しているNGOに出会った。そして直接、NGOに電話をしてコンタクトを取り、法学部の三枝幸雄教授にも相談してガーナでNGO活動する計画を進めた。

 「ガーナでの活動は、子どもの人身売買の現状を、子どもを売った親や救助された子どもから話を聞いてまとめ、それを法整備に役立てるための立法事実の一つとしてガーナの厚生労働省に伝えるというものでした」

 ガーナでは人身売買を取り締まる法律があるにもかかわらず、警察官がそれを守らないほど、法と現実社会が乖離している実情を目の当たりにした。「日本では普段、法律の存在をあまり感じないが、ガーナで改めて法律の存在を知った」という。

 「海外に目を広げてみて、自分の考えの小ささに気付きました。社会にはいろいろな職業があって、司法試験に失敗しても生きていけないわけじゃないと思った」。自分の職業を自由に選べる視野の広さを持った杉建さんは、新たな気持ちで「もう一回、弁護士を目指そう」と考え、ロースクールへの進学を決め、勉強に励んだ。

 この春、杉建さんは中央大学法科大学院に進学する。司法試験の勉強に専念し、その後「アメリカの大学院にも行きたい」という。目指すのは国際弁護士だ。

 最後に後輩へは、「何かを通して、常に目標を見つけて成長して行って欲しい。今しかできないことにチャレンジして欲しい」との言葉を送ってくれた。

(佐武)