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トップ>Hakumonちゅうおう【2011年秋季号】>【Open Campus】中央大学をもっと知りたい皆さんのためにオープンキャンパス模擬授業~政府の役割とは何か?

Hakumonちゅうおう一覧

【Open Campus】中央大学をもっと知りたい皆さんのためにオープンキャンパス模擬授業

「進化多様性生物学」―生物多様性の歴史を探る―

西田 治文/中央大学理工学部教授

 理工学部オープンキャンパス初日の7月24日、後楽園キャンパスには好天も手伝って数多くの高校生が訪れた。大学の講義に直接触れることができる模擬授業は、高校生には人気の催しで、生命科学科の西田先生の模擬授業の教室は、開始10分前には早くも満席で立ち見が出るほどの盛況ぶりで、とくに女子高校生の姿が目立った。

地球と生物の変遷を考える

西田治文教授

 西田先生はまず、「生物は時間、空間をへだてて変化してきている」と述べたうえで、「地球と生物の変遷を考える」ことのきっかけとして、今年1月に植物化石の研究のためチリの南極調査チームに参加した体験談を交えながら、授業をすすめた。

 地球と生物の変遷を考えるために西田先生が例にあげたのは、ナンキョクブナの分布。ナンキョクブナは現在、南米南部、タスマニア島、ニュージーランド、ニューカレドニアなどのオセアニア地域に隔離分布している。

 先生は「ナンキョクブナの実は鳥が食べず海水にも弱いので、海を隔てた移動はできない」と解説、「この分布の起源が長い間謎だったのです」と述べて、高校生らの関心を引いた。

 この謎は大陸移動説と化石の研究から解明できる。一連の研究でわかったのは、オーストラリアやニュージーランドと南米とが南極をはさんでかつてはつながっており、共通した生物がいたことだった。「南極と南米も9000万年前にはくっついていた。ところが7000万年前に南極と南米が離れはじめ、その後、南極が凍りついてナンキョクブナは南極では絶滅したんです」と西田先生は説明した。

南極で「ゴミ化石」を採取

 先生が、チリの南極調査チームに参加したのは、南極で「ゴミ化石」を探すのが目的だった。「ゴミ化石」というのは先生の造語で、たくさんの植物片が含まれている化石のことだ。南極でそれが見つかれば、かつて南極が温暖であったときの豊かな生物相がわかる。「ゴミ化石を調べることにより、当時の生態系を詳細に知ることができるのです」と先生は強調した。

 南極での調査は、天気が悪く、目的地までヘリで移動しても、1日中テントの中で過ごす日が何日も続くことがあった。苦労の末、木の幹や葉の化石を見つけることができたという。これは現地のメディアにも報道され、注目度の高いものになった。

生物多様性が安定した環境保証

 授業の後半で先生は、生きるためにはエネルギーが必要だという生物の特徴に触れたうえで、「生物を支える代謝のもととなる有機物の生産を保証するのは安定した環境と生態系なのです」と力説。ただ、近年の地球温暖化と自然破壊で、安定した環境が危機に瀕していることも指摘した。地球上の生命を維持しているもとは光合成なので、生態系が壊れると人類もただちに脅かされることになる。先生は「生物多様性が安定した環境を保証している」と述べ、生物多様性の重要さを強調した。

 最後に「生命科学の分野はまだ分からないことだらけです。皆さんが生命科学科に入られたらやりがいのある4年間を保証します」と、聴講した高校生に生命科学科をさりげなくアピールして、授業を締めくくった。生命科学科に魅力を感じたのか、講義終了後、女子高校生が直接、西田先生に質問する姿がみられ、それに先生は丁寧に答えていた。

(学生記者 田中佑樹=理工学部2年)

◆多摩キャンパス(文系学部対象)
 7月17日(日)・7月31日(日)・8月7日(日)
◆後楽園キャンパス(理工学部対象)
 7月24日(日)・8月6日(土)・8月7日(日)

[次回予定]
■多摩キャンパス(文系学部対象)
 11月3日(木・祝日)~11月6日(日)
 模擬授業は11月5日・6日のみ
■後楽園キャンパス(理工学部対象)
 11月4日(金)~11月6日(日)
 模擬授業は行いません。