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トップ>Hakumonちゅうおう【2011年秋季号】>【Open Campus】中央大学をもっと知りたい皆さんのためにオープンキャンパス模擬授業~政府の役割とは何か?

Hakumonちゅうおう一覧

【Open Campus】中央大学をもっと知りたい皆さんのためにオープンキャンパス模擬授業

イスラーム世界を読む

清水 芳見/中央大学総合政策学部教授

 『イスラームを知ろう』(岩波新書ジュニア)をはじめ、イスラーム教について数多くの著作を出版している清水先生。アラブ諸国以外の地域のイスラームに興味を持ったのは、後に一年間フィールドワークを行うことになる東南アジアのイスラーム王国、ブルネイを初めて訪ねたのがきっかけだったという。授業は、そうした話からはじまった。

自分の目で確かめることが重要

 フィールドワークを行ったのは、「自分の目で確かめること」にあったという自らの体験を通して、清水先生は現地に行って事実を確かめることの重要性をまず強調した。その例として、長い内戦の末、ことし7月に南スーダンが独立した北アフリカのスーダンについて、「スーダンは『黒人の国』という意味なのに、内戦はアラブ系と黒人系の対立という誤った報道がある。そういうこともあるので、(世界を読むには)現地に行って自分の目で事実を確認してほしい」と指摘した。

 そうしたうえで清水先生は、「イスラームがどういう宗教で、どうしてこんなに世界に広まったのか」について話を進め、イスラーム教が世界に広まった要因を5つあげた。

イスラーム教が世界に広まったのは?

 一つは、他宗教からの「改宗が簡単」であることだ。イスラーム教は二人以上のイスラーム教徒の前で、アラビア語で信仰告白をすれば改宗できる。

 二つ目は、「徹底した平等主義」だ。イスラーム教には厳密には聖職者がいない。したがって神の下では誰もが平等だ。例えば、モスクで礼拝を指導するイマームは、「別に偉いわけではなく、イスラームについて詳しい人が、知らない人に教えてあげるというような感覚」という。

 三つ目は、「分り易い契約思想」だ。1日5回の礼拝と、喜捨と断食で知られるイスラーム教は、神との契約という思想が非常に強い。

 清水先生は、「ブルネイでは断食を破ると、罰金を取られ、ラジオで名前を放送されます」という話を紹介。「現地の人が、(ラジオで名前を言われる)あれは恥ずかしいと言っていました」という話を披露すると、会場からは笑いが起こった。

 四つ目は、「戒律の寛容さ」。一見厳しいイメージのあるイスラーム教だが、実はそれほど厳しくないという。例えば、イスラーム教では、最後の審判の日に善行と悪行のどちらが多かったかで、天国か地獄行きかが決まる。これは万が一悪いことをしてしまっても、その後の行い次第で許される寛容な宗教であるということだ。

 イスラーム教の世界では棄教は死を意味するといわれているが、先生は「イランでは厳しいが、東南アジアの国ではイスラーム教から改宗したと平然という人がいた。国によってこうも違うのかと驚かされた」と自らの体験を語った。ここでも先生は、現地に行くことで、通説とは違う面が見えてくることがあると強調した。

 最後の五つ目は、アラブの「ジン」という妖怪だ。ジンは、アッラーが煙のない火から作った生物で、ジンという妖怪の存在も「イスラーム教の拡大に大きな役割を果たした」という。そこで先生は現地で集めたというジンの絵を見せてくれた。ジンの姿は様々な容姿をしていて、絵柄も漫画チックなものから、単なる棒人間にしか見えないものまでいろいろある。

偶像崇拝の禁止で絵画発展せず

 「ジンがどういう姿かクルアーン(コーラン)に記載されていないことが、イスラーム教が広まっていく過程で有利に働いたのです」と説明した清水先生は、これに関連して「偶像崇拝が禁止されているイスラム世界では、絵画がほとんど発展しなかった」とイスラーム文化にも言及して、授業を締めくくった。

(学生記者 堀滝登=文学部4年)

◆多摩キャンパス(文系学部対象)
 7月17日(日)・7月31日(日)・8月7日(日)
◆後楽園キャンパス(理工学部対象)
 7月24日(日)・8月6日(土)・8月7日(日)

[次回予定]
■多摩キャンパス(文系学部対象)
 11月3日(木・祝日)~11月6日(日)
 模擬授業は11月5日・6日のみ
■後楽園キャンパス(理工学部対象)
 11月4日(金)~11月6日(日)
 模擬授業は行いません。