「ヒット商品を生むためのネーミングとキャッチフレーズ」。この身近なテーマに魅かれた高校生たちが、大教室を埋め尽くすように集まった。日頃、何気なく手にするひとつひとつの商品と言葉の関係はどのようなものなのだろうか? そんな強い関心が授業開始を待つ教室全体を覆っていた。
受講生もネーミングに参加
「ようこそ、暑いなか中央大学にいらっしゃいました」と笑顔で受講生を迎え、飯田先生の講義は始まった。先生の専攻は言語学で、日本語と英語の比較対象研究や日本語の数え方について研究している。また、1~4年生を対象に、商品のネーミングに関するゼミを開講している。
「皆さんは、何かものを買う時、商品の名前をどの程度考えていますか。まず、商品名は私たちの消費行動に影響を与えるのかについて検証したいと思います」。講義は、受講生に易しく話しかけるようにしながら、進んでいく。
そこで具体的な例にあげたのが、桃屋の『辛そうで辛くない少し辛いラー油』という商品名。先生は「皆さんが、桃屋の商品名をつける会議にでていると思ってください」と受講生に自ら考えることを促す。この商品は、具入りであることと、あまり辛くないという特徴があるという。それを端的に消費者に伝えるにはどうしたら良いのかを考える。
商品名が消費行動を誘う
まず単純に『具入りラー油』という商品名をつけたとする。このラー油は辛いものが苦手な人でも食べられるため、それを強調したいので、これだと物足りない。次に出たのが、『辛そうで辛くない具入りラー油』。「これも悪くはないですね。でもこれだと、辛いものが好きな人が買わなくなるかもしれません。少しは辛いのです」。
それで考え出されたのが、『辛そうで辛くない少し辛いラー油』で、それが商品名になった。先生は、ひとつの商品名が生まれる過程をこのように説明し、「この矛盾を含んだ長い名前は、思わず消費者にツッコミを入れ、興味を持たせ、商品棚に手を伸ばしたくなる戦略になっています」と解説した。
また、CM等のキャッチフレーズも消費行動に影響を与えると、先生は解説。ハリウッド俳優のジョーンズさんが宇宙人として出ていることで有名なBOSSレインボーマウンテンのCMで使われるキャッチフレーズ「このろくでもない素晴らしき世界」を例にあげた。
このCMは、コーヒーではなく、コーヒーを飲む世界観を提示しているのだという。「世界がくだらなく感じて疲れていても、このコーヒーを飲むことで、新しい世界に誘われることを想像させます」。
画像をふんだんに使って講義
この後、先生は特定の受験生などを狙った商品名や企業名を印象づけるコピーなどについて講義。画像をふんだんに使い、丁寧に語りかける先生の授業は、分かり易く、興味・関心をそそり、飽きることがなかった。
飯田先生のゼミでは、ヒット商品のCMプランナーやコピーライターを実際に招いて、研究している。受講した高校生たちは、この模擬授業を通して、大学入学が大いに楽しみになったに違いない。
(学生記者 堀滝登=文学部4年)