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トップ>Hakumonちゅうおう【2011年秋季号】>【シリーズ】『志』を高く!~炎(も)える中大生~「旅で、世界をつなげる」を夢にインターネット・ビジネスを起業  今年末、海外に進出へ

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【シリーズ】『志』を高く!~炎(も)える中大生~

「旅で、世界をつなげる」を夢にインターネット・ビジネスを起業
今年末、海外に進出へ

 「大手企業に就職して定年まで働き詰めることより、何か自分にしかできないことをやりたかった」―。こう語るのは商学部4年の石田言行さん(日本大学第三高校出身)。東京・渋谷のビルの一室にあるベンチャー「株式会社trippiece」の代表取締役CEOだ。会社は石田さんを含め4人とまだ小さい。でも今年末には海外に進出する計画で、いつか「旅で、世界をつなげる」と夢は大きい。

東京・渋谷にオフィス構える

石田言行さん

 東京・渋谷が石田さんの仕事場だ。メンバーは石田さんを含め4人のほかにインターン生で、石田さんは授業のある日を除けば、朝から深夜までここで仕事に没頭する。

 「trippiece」は「みんなで旅をつくる」をテーマに、オリジナル旅行を企画、共有し、実現するためのプラットフォームだ。ユーザーが「行きたい旅」「やってみたい体験」を企画し、TwitterやFacebookを通して発信。それに興味をもった人が集って企画を共有し、実現させる。同じ興味を持った世界中の人たちをつなぐ場を提供しているのが「trippiece」というわけだ。

「行きたい旅」を企画・共有・実現

 「trippiece」は、みんなで旅をつくり、みんなで行くためのwebサービスだ。たとえば、「trippiece」のあるユーザーが企画者となって「フィリピンでのボランティア企画」を立ち上げるとする。すると、その情報は「trippiece」のメインページに公開され、他ユーザーが閲覧可能となる。

 そこで企画者とユーザーは「torippiece」内で情報交換し、旅行内容をより濃密に詰める。この段階で仮に他ユーザーから意見や情報が活発にあげられない場合は、企画者と参加決定者の要望次第で「trippiece」メンバーが積極的に計画作成に関わることになる。

 「trippiece」のテーマは“みんなで旅をつくる”であり、その実現のために「trippiece」は全力を尽くす。また旅行計画の宣伝は、大量の費用を費やすことはせずに、ソーシャルメディアを通じて友人・知人に旅行計画を伝えていく。「見ず知らずの人が作った旅行ツアーよりも、“自分の知り合いが作った”旅行計画というほうがそれだけで宣伝になるんです」と石田さんはソーシャルメディアによる新たなビジネスの可能性を主張する。

高校3年生で起業を志す

 「株式会社trippiece」を設立したのは、2011年3月31日。「大学に入ったら起業する」と高校3年生のときに決めていた計画が、大学3年生の最後の日に実現した。

 石田さんが起業を考えるようになったのは、父と祖父の影響があったからだ。父、祖父ともに日本を代表するバドミントンの選手だったため、石田さんも12歳でバドミントンをはじめた。しかし、どうしても父親を抜くことができず、高校時代にバドミントンを続けるのを諦めた。バトミントンでの悔しさが「ビジネスの分野で、何とか父や祖父を超えたい」という思いを募らせた。起業を思い立ったのは、「普通に働いたのでは父を超せない」と考えたからだった。

 インターネットを使ったビジネスに興味をもった石田さんは、大学1年生の11月に、ビジネスを通じた途上国支援と社会問題の解決への貢献を目指したNPO法人「うのあんいっち」を友人3人と立ち上げた。「世界の子供たちが撮影した写真を社会に発信する」という友人のアイデアに、「面白そうだ」と飛びついた。

 石田さんの行動力はこれだけに止まらず、その後、旅行会社と連携してアジア諸国へのツアーを企画し、客を集めた。

自分が選んだ生き方を歩む

 「国が違えども、愛も友情も存在する」。これは石田さんが持ち続けてきている“世界観”で、いまはその思いは「trippiece」に生かされている。「例えばtrippieceでイギリスの美術館を巡る計画を立てると、参加するのはイギリスの芸術や文化に関心がある人が大半になります。すると、参加者の間では“○○国人”と国の違いは考えずに、どの人も“美術が好きな人”という認識が広がると思うんです」。

 石田さんが、国の違いを超えた人との交流を考えるに至ったのは、広島で被爆し、その後アメリカ人とのハーフの男性と結婚した祖母から、「人のことを見た目や人種で判断してはいけない」と聞かされていたからだった。

 世界を視野に入れている石田さんは、アジアへの進出を計画し、「trippiece」への出資先との交渉を進めている。企業を経営していくことへの不安はないか、尋ねると、こんな答えが返ってきた。

 「僕が一番恐れていることは自分の信念が折れることで、会社が倒産することではないんです。周りの友人達が大手企業に就職したがる気持ちは理解できるし、それはとても良い選択だと思う。だけど、僕にとってその生き方は面白いと思えないんです」

 石田さんの名前の「言行」は、「いあん」と読む。「人との会話を大切にし、努力して前進していく」という意味があるという。「僕は、死ぬその日だけ勝てればそれでいい。最後に後ろを向いて、行動し続けた自分に、そして支えてくれたみんなに『ありがとう』を言いたいんです」。こう語る石田さんの『志』への挑戦は、まだはじまったばかりだ。

(学生記者 鈴木あきほ=法学部2年)