生後6~7ヶ月の赤ちゃんは、大人の〝笑顔〞と〝怒り顔〞を見ているときの脳の反応が大きく異なっている―。山口真美・文学部教授の研究チームと自然科学研究機構・生理学研究所が共同研究で突き止めたもので、山口教授らが11月5日、後楽園キャンパスで記者会見を開き、明らかにした。
右から山口教授、柿木教授、仲渡研究員
山口教授と生理研の柿木隆介教授、仲渡江美研究員らは、生後6~7ヶ月の赤ちゃん12人を対象に、実験を行った。近赤外分光法(NIRS)という装置を用いて、赤ちゃんの頭部に外部から近赤外光を照射して、脳の皮質表面部分を流れる血液中のヘモグロビン量の相対的変化を調べた。
赤ちゃんに、野菜→笑顔→野菜→怒り顔の順に、写真を5~10秒間隔で反復して見せたところ、笑顔、怒り顔ともに、写真の顔を見ているときに血流量(脳反応)が大きく増加した。ただ、笑顔と怒り顔では、写真が消えたあとの血流量の変化が異なり、笑顔では血流量の増加状態が続いたのに対し、怒り顔では急速に血流量が低下して、もとに戻った。
また、笑顔を見せたときは左側頭部が、怒り顔を見せたときは、右側頭部が、それぞれより強く働いていることがわかった。左側頭部は言語能力などに関連、他方、右側頭部は周囲への注意と関連する活動を担っていることから、生後6カ月以降の赤ちゃんは、ポジティブ表情(笑顔)とネガティブ表情(怒り顔)で処理過程が異なることが明らかになった。
研究チームでは、「赤ちゃんは、それぞれの表情から読み取れる生物学的な意味を解釈し、情報に応じて脳内で別々に処理している可能性が判明した」としている。
赤ちゃんの脳内で、人の表情の違いに反応する神経基盤が明らかになったのは、世界で初めてで、山口教授らは、研究成果をアメリカの科学専門誌『NeuroImage』に掲載する。
山口教授らの研究チームは、これまでに近赤外分光法を用いて、赤ちゃんが生後5~8ヶ月で人の顔を認識できることを証明。今回はさらに進んで人の表情の認識についての研究成果をまとめた。
(編集室)