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トップ>Hakumonちゅうおう【2010年冬季号】>【ニュースPlus】「革命キューバに生まれた私」 チェ・ゲバラの娘、アレイダさんと懇談会

Hakumonちゅうおう一覧

【ニュースPlus】

「革命キューバに生まれた私」
チェ・ゲバラの娘、アレイダさんと懇談会

 キューバ革命の伝説的な英雄チェ・ゲバラの娘、アレイダ・ゲバラさんによる講演・懇談会が10月21日、中央大学駿河台記念館で行なわれた。この講演・懇談会は、国際的農漁業界とりわけ精糖業でキューバ共和国のフィデル・カストロ元国家評議会議長と太いパイプをもつ久野修慈理事長・学員会会長の力添えで、またキューバ革命でのカストロ氏の盟友ホセ・フェルナンデス・コシーオ在日本キューバ国大使のご理解をいただき、来日中のアレイダさんにお願いし、実現できたものである。

学生記者も参加した懇談会

 当日は、アレイダさんに「革命キューバに生まれた私」と題して講演いただき、多くの学員の出席をみることができた。また学生記者7名が出席、アレイダさんの講演のあと活発な質疑応答を行ない、キューバに対する理解を深めた。

 キューバ共和国は、フィデル・カストロ率いる革命軍が武装解放闘争で、バティスタ政権を打倒して1959年に革命政権を樹立し、その後1961年に社会主義宣言した社会主義国。そのキューバ革命でカストロと並ぶ中心人物だったのがアレイダさんの父チェ・ゲバラだ。

 アレイダさんは、現在、世界各国で精力的に講演活動を行っているが、その動機について、「チェ・ゲバラの娘であるからではない」と説明。本当の理由は、「キューバの娘であり、キューバ国民に育てられたからです」と語った。

 父と同じ医師になったことについては、「人類に借りがあるから」で、キューバが多くの国の援助を受けてきたことや自身が沢山の愛情を受け、恵まれてきたことに対し、医療という形で恩返ししようと考えたからだという。いま、アレイダさんはキューバ国外での医療支援にも積極的に参加している。

 「キューバは自由を愛する国であり、教養を深めていく国です」とアレイダさん。キューバでは、医療費や教育費が無償で、国民は誰もが健康的な生活を営むことができるし、教育は誰に対しても開かれていることを強調した。

 キューバ人の国民性については、「余っているからあげるのではなく、困っている人がいたらあげるという連帯意識を強く持っています。そして、自分たちの問題は自分たちで解決すべきだと考えています」と語り、キューバ人が「尊厳を持って生きる、自由を愛する、教養を高めること」を信念にしていることを挙げた。

講演するアレイダ・ゲバラさん(左)

 講演会の後半は質疑応答に移った。最初の質問は、アレイダさんが父チェ・ゲバラから最も影響は受けたことは何ですか―。

 「沢山あり過ぎて語りつくせません。あえて挙げるなら、父は『人間が革命を行なうのだ。そのために人間は日々精神を養い、革命を日々よいものにしていく必要がある』と言っていました。革命は一度行なったら終わりなのではなく、毎日良いものにしていくことが重要なのです」

 続けてアレイダさんは、「父は愛が深い人でした。革命家にとって一番大切なことは愛することだと思います」と父チェ・ゲバラを思い起こしながら語った。

 次に、沖縄の米軍基地問題に関する質問には―。

 「以前、広島に行きました。その時に広島への原爆投下は仕方がなかったという日本人が言ったことに怒りを覚えました。罪のない一般市民を虐殺することはやってはいけないことです。だから広島、長崎の原爆投下は正当化できません。沖縄に行ったときも同じことを感じました」

 さらにアレイダさんは、「キューバには『団結した国民は決して負けることがない』という言葉があります。キューバはアメリカに対して屈服したことは一度もありません。キューバの強さは団結なのです」と熱く語った。

 アレイダさんは、その他の質問にも丁寧に答え、若い世代への教育に関して、「人間への愛。異文化の尊重、団結、尊敬を教えていかなければならない」と指摘。日本とキューバの交流については、「国民の文化、歴史のルーツについて知ることから交流したい。お互い言語は違うが音楽は共通。お互いにもっと知り、理解することが大切です」などと語り、講演・懇談会を終えた。

 アレイダさんは、優しい大らかな人であり、情熱家であった。アレイダさんが話はじめるとすぐに引き込まれた。スペイン語で話しているため、直接意味を理解することは出来ないが、話す言葉ひとつひとつに気持ちが込められており熱い想いが伝わってきた。

 革命家チェ・ゲバラは、熱い想いで世界を変えようとした。アレイダさんもまた父親と同じ想いを受け継いでいるようにみえた。

(学生記者 上田雄太=文学研究科修士1年)

アレイダ・ゲバラさん
小児科医師。1960年革命家チェ・ゲバラとその妻アレイダ・マルチとの間に誕生。7 歳で父チェを亡くしその後、父と同じ医師を志し医師となる。現在、医師として活躍するかたわら、キューバ親善大使を務め各国で講演。2008年初来日。著書『ラテンアメリカは世界を変える!』他